16 《サクラ》
これでレオン視点は一旦終了です。
次からはまたミアの無双に戻ります。
馬車の窓から外を見て、はあとため息をつく。
今日は王に呼ばれ、王城に向かうため馬車を走らせていた。
僕が5歳になったからだ。
僕が勇者というのは王様は知っている。そこで、将来魔王討伐のため同じパーティーを組むであろう自分の娘と対面させようと僕を呼んだ。
ガリレイド国、王 ウラルトリス・ガリレイドの娘、サクラシア・ガリレイドは珍しい光魔法持ちだ。
人間は光魔法を使うことができない。光魔法を使うことができるのは天使だけだとされている。
しかし勇者と同じ時期に、光魔法を持つものが生まれる。その人は聖女として勇者パーティーに入るのが法律で決まっていた。
今回はその人が王の娘であった。
光魔法は回復としてパーティーに欠かせない。そして何よりパーティーには信頼が大切になってくる。そこで勇者と聖女は幼い頃からお互いをよく知っておく必要があった。
勇者パーティーは主に3人から4人で構成され、後1人か2人は近いうちに選ばれるそうだ。
正直気が重い。
ただでさえ王族に謁見するだけでも緊張で足がすくみそうなのに王女でもある聖女と仲良くしなければならないなんて。
前世も含めて女性からはよくモテたが、あまり良い記憶はない。普通に楽しく話すことができるのは幼馴染である都と桜子だけだ。
はあ、ともう一度短いため息をついた僕を見て、同行していた父が心配していた。
「大丈夫か? レオン。王族に会うのは今日が初めてだがあまり緊張はしすぎるな。君はまだ5歳だ。何かやらかさない限りは無礼で咎められることはないだろう。それにレオンはマナーがきちんとしている。心配しなくても胸をはりなさい」
……そういうことではないんだ……。
もちろん王族に会うのが怖いのもあるが、、これからちゃんとやっていけるか不安でしかない。
自分と葛藤しているとどうやらついたらしい。
目の前にはそびえ立つ壮大な雰囲気をまとった城が目に映った。
ここが今から向かうところ。
緊張が背を走る。
「お待ちしておりましたホムリック様、勇者様。どうぞこちらへ、国王と姫君がお待ちでございます」
うやうやしく頭を下げられ、静かに彼らの後ろをついていく。
そして1つの扉の前で止まった。
ここか……。
重々しく扉が開かれる。
しかしそこは僕が思っているような場所ではなかった。
てっきり謁見室かと思っていたが、白を基調としたサロンのような場所だった。
部屋の中心には一人がけ用のソファーが4つ並べられていて美しい白薔薇と白鳥をモチーフにした刺繍が細かく施されている。
……流石、王族の使用する部屋だ。凝りようが違う。
しかもその場所に呑み込まれていない、むしろ存在が際立っている人物が2人いた。
一人は立派な体格で、威厳に満ち溢れている三十そこそこに見える男性。
もう一人は百合を連想させられるような可愛らしい少女だ。
おそらく彼らが国王とその娘、聖女だろう。
父にならって深くお辞儀すると、国王は目を細めて父と一緒に退出していかれた。
何故退出したかはわからないが恐らく僕が緊張しないためだろうか。
しかしそれは逆効果だ。
聖女と二人になって何をすればいいんだ……?
彼女は巧妙に作られたフランス人形のような顔立ちをしていて、光を浴びてより一層光を増す金色の髪は整った顔をより引き立たせている。
「……こんにちは、サクラシア様。私はレオンハルト・コンフォードと申します。この度勇者に選ばれました」
「あ、こ、こちらこそよろしくお願いします……!」
ん? 何か違和感が……。
王女ってこんなもんなのか? この雰囲気は知っている。
人見知りを発動させている桜子と同じだ。
しかも名前が……桜子に似ている。
名前は親がつけるものではない。神様が生まれる前にステータスに書き足すそうだ。
関係ないかもしれないが……僕も玲央でレオンハルトだ。
もしかすると、あるかもしれない。
「サクラシア様は……『僕の言葉がわかるか?』」
みるみるサクラシアの目が見開かれる。
そう、僕は後半をわざと日本語で喋った。僕の頭の中では自然と翻訳されているが喋れないわけではない。
ただ、日本語を話すのが久しぶりすぎてうまく話せたかはわからないが。
「もしかして、玲央……?」
「うん、君は桜子だね」
「ああ……!! やっと会えたわ! バスに轢かれて死んだと思ったら生きてるし、わけわかんない世界に飛ばされてるんだもん。言葉は何言ってるかわからないし、聖女だーとか騒がれるし、言葉わかってきたら挙句の果てには自分が王女だーって知っちゃうしで。もう大変だったんだから!!」
「はは、桜子らしい。ただ、、僕は言葉が分かるんだ。なぜかは分からないけど……。何か関係しているのかもしれない」
「へー、便利ね! まあ今は全然分かるから心配ないんだけどねー」
そこでふと気づく。
「なあ、桜子。僕は一介の貴族で君は仮にも王女だ。この喋り方は不味くないか……?」
「?? 大丈夫大丈夫。だって玲央って勇者なんでしょ? 聖女は勇者の後衛。意外と勇者のほうが位が高かったりすんのよー」
「成程……。なら今度から桜子のことはサクラって呼ぶようにするよ。桜子だと違和感を生むからね」
お互いソファーに腰を下ろす。
「ねえ、私思ったんだけど私達が転生してるってことはもしかして都達もしてる可能性ってない?」
十分にありえる。
というかおそらくはしているだろう。僕は勇者で強大な力を持っていたりサクラが聖女で光魔法が使えたりと、何か他の人とは違った力を持っているはずだ。
「僕は……二人を探し出そうと思う。都や美凪は必ずこの世界にいるはずだ。魔王討伐も考えなければいけないけれど僕達はまだ5歳。十分に時間があると思う。それに僕は死ぬ前にどこにいても一緒だと、誓った。必ず見つけ出す。サクラはどうする?」
「そんなのもちろん、イエスに決まってるわよ!! 幼馴染舐めないでね!」
そんな会話は国王たちが戻ってくるまで続いた。
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