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154 語り、問うて、気づく。

2023/02/04に105話のアリエルの心の中の呟きを少し変えてみました。特に内容の変化はありません。

「先に皆に紹介したい人がいる」


玲央の挨拶が終わり、いきなり私に話を向けられる。

いやいやいや。そんな前振り大丈夫だって。もうこんなに目の前に人間がうじゃうゃいるのに集中できるわけ無いじゃん。ただでさえ心臓バクバクしてるのにそんなあからさまな前振りされたらもっと緊張するって。

いっそあの有名な「人がゴミのようだー!!」とか言って高笑いしてみようかな。……だめだ、逆効果だったみたい。


グダグダしていても仕方ないと、はあっと深く息を付き玲央よりも前へ出る。ただでさえこんなローブ集団謎でしかないのにいきなり勇者から紹介したい人がいるとか言われたら誰しも混乱するよ。せめて宵闇パワーが少しでもかかってほしい。


「こんにちは」


思った以上に緊張しちゃった声が出た。硬かったかな。第一印象大事って言うけど……。


「私達は、、Gギルドのパーティー、宵闇です」


その瞬間に一息おいて大きな歓声が広場一体を包み込んだ。

おおぅ。意外と、、大丈夫だったみたい?

だがしかし、私達がこんなローブを被っているせいで信用できない人も大勢いるようだ。そりゃそうだよ。でも耳を済ませているとあのローブだから宵闇だという人もいるようだ。いいようにも悪いようにも働いているローブ。

と、いきなり後ろからレーインが私の横にきて、ばさりと勢いよくフードをとった。


おいおいおい、何してんじゃ? ついに人間族への怒りを収めることができなかったのかとレーインを凝視しているとどうやらそうではないらしい。

レーインの姿を見た途端より歓声が上がったためそういえばレーインだけ顔を晒してるんだということを思い出す。


……美人だからね。いつも一緒にいるからちょっとだいぶ感覚麻痺っちゃってるけどこの子、とてつもなく美人だからね。いつもはあんなんだけど。


そして今、皆の注目がレーインに向かっているところで昨日まで頑張っていた魔術を展開する。

少しずつ私の中心から波紋が広がっていくように。ゆっくりと深くまで浸透していくように。目をつぶり精神の奥深くまで研ぎ澄ませた状態で数分行う。



──────できた。


先程までざわざわとしていた広場が少しずつ静けさを取り戻していく。皆自分の感じている感覚に違和感を抱いているのか、今度は別の意味でざわざわとしだした。成功である。



「私達宵闇が何故今ここで勇者パーティーと一緒にいるのか、何故各国の国王を呼び寄せてまで大きなことをしたのか」


おそらく今、世界各国の人間族と魔族の頭の中で私の声が響いているだろう。魔族にも響くようにしたのは説明が早いからだ。それにリアルタイムで知ることができる。ゲルさん達に説明する手間も省けるし。


「そして……私達は、、魔族だ」


そう私が言った瞬間に後ろでトウカ、レーイン、ヴィスタが一斉にフードを取る。レーインはまだしもヴィスタとトウカの風貌はあからさまであるため、信じられない人でも目を丸くしている。てかフード一斉に取るのっていつの間に打ち合わせしてたの? 私、知らなかったんだけど……。


一瞬しんっと耳に痛いくらいの静まりを見せ途端にどわっとうるさくなった。

大きな批判の声もある。疑問が浮かびすぎて周りの人達と話している姿も見える。ただ圧倒的に何故という言葉が多かった。


「魔族である私達が何故ここにいるのか」


私が話し始めた瞬間、また静かになる。一言一句聞き逃さないようにしていた。


「我ら魔族は人間族と同盟を結び、天使族を打つためだ」


静かに、でも心の奥底から響くように言う。

びっくりしすぎてか、私達の圧に耐えられなかったのかずっと国民たちは押し黙っていた。


「天使族の目論み、世界の核の破壊のために私達魔族は莫大な被害を受けている。何故何もしていない私達がこそこそと逃げ回るような生活をしなくてはいけないのか。何故無意味に殺されなければいけないのか。皆は疑問に思ったことはないだろうか。魔族は知能が低いはずなのに国を造って人間族と天使族で滅ぼすことができないのか、と」


心当たりのある人が多いらしい。


「人間族と天使族の間で私は混沌の魔人などと呼ばれているようだが、容姿が教えられたものと違っていることには気が付かなかったか? 今の私を、後ろの3人をみて何か思うことはないか」


はっと気づいた人たちがちらほら……。

そして混沌の魔人と言う言葉を聞いていくらかの人々が震え始めた。混沌の魔人パワー最強。


「魔族は赤目瘴気など誰がいった。お前たちの親か? 世間か? いや、天使族だ」


だが俺の弟はお前に、魔族に殺された!! という声を堺に、どんどんと私の、俺の、わしの親族が魔族のせいによって殺されたと騒ぎ始めた。


「静まれ」


私のどすの聞いた声に震え上がる。


「私に、魔族に殺された? じゃあお前たちは一体何人の魔族を殺しているんだ。千か? 万か? どっちにしろ被害はどちらも出ている。恨み辛みだけで判断すればどちらも被害は収まらない」




「先程も言ったとおりだが天使族は世界の核を破壊し、この世の全ての力を自分のものにしようとしている。そのために我ら魔族は殺され続け、天使族の総合値の糧へとなっているんだ。それにこのまま行けばお前たちは自分の国まで失うぞ」


深く息を吸う。


「目を覚ませ」





初めは小さな拍手だった。私達ではない。広場の何処かから響くそれはさざ波となって場に広がっていった。そして最終的には大きな歓声へと変わる。



成功……かな。

どっと疲れが襲ってくる。あまりの安堵にかくっと力が抜けてトウカに支えられたときだ。



「何事かと思ってきてみれば、、これは一体どういうことですか?」























バレた。

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