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153 〈苦衷〉バリス視点

悪夢が再び私を襲ってきた、と。あの時に見逃した私を見つけて再びとどめを刺しに来たのだと。


私が混沌の魔人に再び出会ったのは勇者パーティーの付き添い兼護衛で森の中へ入ったときだった。魔族が大量発生したという情報を聞き、ウラトリス陛下。が送り出した騎士団が帰ってこないのも初めは何かハプニングがあって少し遅れているだけだろうとも思っていた。それもあって陛下からの依頼を軽く受けてしまったのが間違いだったのか。



廃墟に到着し、あたりを少し散策していると、魔導師であるアルミナ・アナガリスがあっ、と声をもらした。私達がアルミナが向いている方をに視線を向けると、、4人のローブを羽織ったものの姿とその周りで横たえている騎士団。どこからどう見ても騎士団がそのもの達に敗北したのは確かだった。


そしてそのローブ姿の者たちから発せられるただならぬ圧に私達がすぐに戦闘態勢に入ったときだ。あろうことかアルミナが気安くローブ姿の者たちに話しかけて、その中心にいるものがフードを取った瞬間、絶望によく似た感情に心が支配されたのだ。


混沌の魔人


尋常じゃないほど震えていると自覚している私は、それを最後に記憶を失っている。あとから聞いた話、聖女が私を強制睡眠させたらしい。絶対に勇者パーティーだけでは勝てないことがわかっていたのに。しかも混沌の魔人の周りには同じような気配を持つ化け物が3匹もいたのに。不甲斐ないと思いつつも、あれ以上顔を合わせなくて良かったと思っている自分もいた。

そういえば勇者パーティーの3人は混沌の魔人に見逃されたのだろうか。だってあの4匹とまともに戦って無事に生きて帰れるはずがない。騎士団の者たちも全員生きていると聞いたときは耳を疑った。


そんな事件があってからおよそ一ヶ月。ガリレイド国の庶民や貴族といった、階級を問わずに殆どの者が広場に集められた。私達だけではない。各国の王もその広場に姿を現しているのを見ると、勇者が収集をかけたのも相まり魔族に関する重大な発表があるのではないかと噂が流れていた。


11時の鐘がなり、さっきまではうるさかった場が嘘のように静かになる。そして、、勇者が姿を現した。


「皆、集まってくれて感謝する。今日集まってもらった人たちの中にも気づいている人もいるだろう。今回は、、魔族、天使族のことについて話したいことがある」


私の幼い頃から知っている教え子の立派な姿を見て感極まる。が、次の言葉から私の理解が追いつかなくなっていった。


「先に皆に紹介したい人がいる」


そうレオンがいって後ろに下がると、今度はそれと入れ替えにして4人のローブ姿のものが出てきた。途端にブワッと寒気が襲ってき、冷や汗が止まらなくなった。だってアイツラは……。周りの者たちもいきなり現れた謎の集団に動揺を隠せていないようだ。


中心の人がフードを取る。


「こんにちは」


凛とした声が広場に響く。どこか有無を言わせない声色だった。


「私達は、、Gギルドのパーティー、宵闇です」


その瞬間少し間があき、わあぁぁぁ!!! という大きな歓声が広場を埋め尽くした。

なん……だって? 宵闇ってあの宵闇か? ギルド史上最速でレベルを上げ、ここ数ヶ月魔族が姿を現さないのはあのパーティーのお陰だと、冒険者なら知らないものはいないパーティーだ。おそらく勇者パーティーの次くらいには有名だろう。

そしてそう聞いても半信半疑だった者たちも、もう一人の金髪の美少女がフードを取ると途端に大きな歓声へと移り変わった。噂は本当だっただのどうだの興奮しきった状態で近くのものと喋っている。

あながちあの金髪の美少女だけがフードを取った姿を見せていたのだろう。あれほど美しければ皆の記憶にも鮮明に残るはずだ。


そんなことを考えているとふっと頭が軽くなった気がした。まるで靄が晴れるような、頭が妙にスッキリとするような、、。でもこんなに人がいる中で頭なんてスッキリするはずない。むしろ私は昔の事を嫌でも思い出すため人混みの中では気持ちが悪くなる方だ。

なんだろうかと不思議に思っていると、周りの者たちも同じような感覚に襲われているようだった。聞こえてくる声の中にそのような言葉が混じっている。私だけじゃ、、ない?

だとしたらどういうことだ。ここにいる全員とまではいかないが、ある一定数は私のような頭がスッキリとしたような感覚に襲われている。いや、決して不快な訳では無い。むしろ頭がスッキリしたぶん、久しぶりにちゃんと眠れたときのように冴えているんだ。


そこからの私は少しおかしかった。

親友や仲間を皆殺しにした混沌の魔人はもちろん憎いし、出来ることであれば今すぐにでも敵をとりたい。けれどもあの混沌の魔人が話している内容を聞いても、どうしようもない殺意や憎しみといったものは湧いてこない。あろうことか魔族の事情をきいて同情している自分もいる。


なんていうことだ。自分が自分でなくなったかのようで恐ろしい。きっと混沌の魔人が私達になにかしたのだろう。洗脳のような……、、そうでなければ説明がつかない。しかも様子を見ているとここにいる殆どの者たちが私と同じように魔族の見方が変わっているものも多いように感じる。これは……いけない。全て混沌の魔人の思惑通りになってしまう。しかもアルミナが宵闇パーティーに入っていただと?宵闇は、、魔族はもう前から準備を始めていたんだ。


そう危機を感じた私は、演説が終わるとすぐに王城へと向かった。

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