148 〈伝達〉トウカ視点
久々のトウカ視点
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久しぶりに自分で転移を使ったため、軽く目眩のようなものに襲われる。始めてくる場所だが座標さえわかっていれば転移魔法を発動することは可能だ。ただ莫大な魔力が必要となるため、人間には到底真似できない事であるが。
自分の担当はカーディス国。王城にはミアとレオが二人で残っているため、さっさと終わらせて帰りたいのが本心である。
俺がついた場所はどこかわからない廊下。座標を指定してきたためカーディス国の王城で間違いはないと思うのだが、、いかんせんどこの部屋かまで特定できるほど優れてはいない。
ひとまずカーディス国王を探す。が、その前に廊下を巡回していた騎士に見つかってしまった。
「Gsmem、bsiknay naidnem wjsinw!?」
正直何を言っているか分からん。俺は魔界で使われている言葉と人間族で共通に使われている語しかしらない。そういえばカーディス国は言語が……的な事をいっていたがこういうことだったのか。
こっちが話してた通じるかもわからないし、俺は容姿が明らかに人間ではないため、フードをとって大きな事になるのも面倒くさい。どうするか、、と考えているとふとあのことを思い出した。
懐に持っていたウラトリス王からの手紙を出す。すると目の前の騎士が目の色が変わったように慌て始めた。
「Bzixnwoam bsixkwm amnnnndixo nsi jaidm jsinxoowm」
相変わらず何を言っているかは分からないが、あれよあれよと話は進められていたらしく、予期していなかったがいつの間にか俺は王の前に立っていた。
「お主が……ガリレイド国からの使者であるか?」
言葉が通じることに安堵感を覚え、そうだと返事をする。
「至急ガリレイド国に集まって欲しい。各国の王全員に伝達している」
用事はすんだため、帰ろうとしたが何故か引き止められた。
「まて。何故私達がいきなりガリレイド国に行かなければ行けないのだ。それにそちらの国の勇者には少し前に私の愛娘が傷つけられたところだ。今もなお私の娘はショックのあまり寝込んでしまっている。それが治らない限り、心配で行くにいけん」
要するにこのカーディス国の王を動かしたければ王の娘をどうにかしなければ行けないということ。本当に面倒くさい。何故俺がそんなことしなければいけないのか。いつものようなミアの面倒を見るのとは違い、赤の他人に時間をさくほど俺は暇じゃない。なんなら無理やり脅してでも連れて行くようにするか。
パキパキと指を鳴らしていると、扉の向こうから俺達と同じ年頃の女が現れた。顔色はあまり良い方ではないが、人間族の中ではおそらく顔は整っている方であろう。この部屋に無断で入ってこれるということは……この女がカーディス国の王女か。
「レリアーナ!! 今日は部屋から出てきて大丈夫なのか?」
「はい、お父様。今日はなんだか少し調子が良くてお父様に挨拶をしようと思っていましたが、、先客がいらしていたようなのですね」
ニコニコと背景に花が飛んでいるのではないかと思われるような笑顔は、カーディス国王の言葉で一瞬にしてかき消された。
「彼はガリレイド国の使者らしいのだが……ガリレイド国にはあまり良い思いがないだろう。私が行くならばレリアーナも連れていきたいため、今回は見送りにさせてもらおうと考えているのだが、、」
は?? 別にレリアーナとかいう女をおいていけばいい話だろう。親ばかもいいところだ。腹が立ち、これ以上いても胸糞が悪くなるだけだと判断したため、すぐにでも帰ろうとする、がまたしても引き止められた。これで俺の堪忍袋は切れる寸前まで来ていた。
「お父様、そんな事を言ってはこの方が可哀相ですわ。せっかく来てくれましたのに……でも、、レオンハルト様にまた出会うと思うと、、」
だから別におまえは来なくてもいいだろう。意味が分からないが、この女がレオと何かあったということはわかった。あながちレオに告って失敗したとかだろう。
「別にあなたは来なくてもいい。私達が用事があるのはカーディス国王だけだ」
怒りを通り越して話が通じない目の間の二人に呆れた目線を送る。するとどうだろうか。さっきまでは青白い顔色をしていた女がぱっと頬を赤くした。
「…………お父様、私、行きますわ。それにあなた……ガリレイド国の使者なのよね? お名前は?」
面倒くさいものに捕まってしまったようだ。でもこれで大人しくこいつらは来るだろうか。
「トウカ」
「あら、変わったお名前ね。異国の方? どうしてフードを被っているの? とても、、きれいな顔をなされているのに」
……この女は顔にしか興味がないのか?しかもそろそろ俺も限界だ。なんと言おうと帰らせてもらう。
「お前の前ではフードを取る必要もないし、まだ名乗っただけ有り難く思え。これで俺の役目は終わった。早急に帰らせてもらう。カーディス国王、時間をかけるな。出来るだけ早くこい」
そう吐き捨て再び転移魔法を使った。
その後、俺の口調とただならぬ覇気で場が震え上がった事も、レリアーナという女がずっとほうとため息をついていたことも俺は知らない。
レリアーナ姫は決して面食いというわけではないけれど、トウカの醸し出す雰囲気が好きなようです。でもこんなの現実にいたら面倒くさい。




