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146 どこでも使える私の二つ名

「失礼します」


玲央が前に立ち、いかにも重そうなドアを大きくノックする。すると中から桜子の明るい声でどうぞ~と聞こえた。

そういえば今更だけど仮にも一国の王の周りに誰も警備がいないなってことはあるのだろうか。もうすでに桜子が人払いをしているのか。どっちみち話し声が聞こえるほど近くに人がいる気配はないし、なかったほうがこちらはありがたい。


「失礼します」


玲央に続き、ふかふかのカーペットに足を踏み入れた。

白を基調とした、ヨーロッパ風でいうサロンのような場所で、中に並べられた4つのソファーには白薔薇と白鳥が細かく刺繍されていた。そしてそこに座る桜子ともう一人。

いかにも王様のような風貌で四十路手前くらいだろうか。桜子ほどの大きな子供がいるとは思えなほど若く見える。まあゲルさんにはかなわないけど。

彼がウラトリス王だろう。


「座って座って。ここは公の場ではあんまり使われないところだから気をはらなくて大丈夫だし、もう人払いはすませてあるからいつでも初めても大丈夫」


Vサインをこちらに向ける桜子。やはり人がいなかったのは桜子の仕業だった。

進められるままに桜子の前の椅子に腰掛ける。


「まあ待て、サクラシア。私は彼女……でいいのだな。彼女と会うのは初めてだ。少し挨拶くらいさせてくれ。知っているだろうが私はサクラシアの父、ウラトリス・ガリレイドだ。ガリレイド国国王でもある。その私にわざわざ用がありサクラシアに頼んで私をこの場に連れてきたのだろう? そなたは何者だ?」


全身ローブ姿だとまあそうなる。よく私が女だと分かったものだ。それにウラトリス王、言い方や表情は優しそうだが、やはり一国の王。瞳の奥では常に私を探ろうと目を光らせている。これなら少し信頼できるかもしれない。


「初めまして、ですね、ウラトリス王。お時間を取っていただき感謝申し上げます。桜子が人払いをしてくれているので早速本題に移りましょう。ウラトリス王、あなたは魔族についてどうお考えですか?」


いきなりこんな質問されたら普通戸惑うだろう。それに国王だったらこんな訳わからない質問されたら即座に騎士に連行されていく。しかも私まだ名乗ってすらないしね。桜子が横でいてくれているおかげか、ウラトリス王が私を探るために答えを探しているのかは分からないが、真剣に考えてくれている様子である。


「魔族は、、私達人間の敵だ。もちろん天使族にとっても」


「何故?」


「魔族のせいで殺された私の国民も何人もいる。魔族のおかげで行動範囲が制限せざるを得ない状態に陥ったのもあるな」


「ありがとうございます」


まあそんなもんだろう。むしろ模範的な回答をいただきこちらも安心だ。では早速。

お礼とともに軽くお辞儀をし、そのすきに先程から考えていた魔法を展開する。


今回は闇堕ちを治したときの応用のような感じだ。あのときは6カ国に散らばっていた何匹かもわからない状態でやってたけど今回は目の前の一人。正直言うとこっちのほうが楽である。

神様たちが言っていたという闇魔法と光魔法の同時展開。今回は人間相手だから光魔法を割合的には多めでやってみた。解けたかどうかはだいたい感覚で分かるんだけど……あ、できた。

この時間わずか3秒。ウラトリス王にとってはえらく丁寧に礼をするやつだなくらいにしか思われていないはず。



「そなた、私に何をした?」


思われたなかった。え、わかっちゃう感じ? これは予想外でびっくり。ちょっと正直内心焦ってる。


「……特には……」


嘘ぶっ放したけど大丈夫だろうか。


「いや、決して不快な訳ではないんだ。なんだかこう……頭がスッキリしているというか。知らぬ間にかかっていた靄が取れたかのような……」


あ、たぶん成功してる。


「そうですか。では……」


もういいだろうと私のフードを取る。正直フード取っただけだと魔族だとは思われないと思うが、仮にもあの厨二病ネームで暴れているため結構知られているようだ。もしかしたらという可能性がある。


「改めましてこんにちは。ミアと申します」


何故いきなりフードを取ったのかわからない様子だった。


「私に見覚え……聞き覚えはありませんか? 白い肌、真っ黒の長い髪と瞳。私の歳」


数秒何か考えるような仕草をしたあと、みるみると目が開かれていく。やっぱり私って有名人。


「おまえはっ……!!」


「こっちでは混沌の魔人とか呼ばれてるみたいですね」


「何故魔族のお前がここにいる!? それにサクラシアや勇者殿の近くにいるのは……? もしやお前が洗脳でもかけサクラシア達に私に近づけさせるように仕向けたのか……!?」


どうやって説明しようかと悩んでいたが、私が口を開く前に桜子が喋りだした。


「お父様、そんなわけ無いでしょ。都……ミアは私とレオンの大事な友達。もちろんミナギ……アルミナとも。それに私が洗脳にかけられてたらすぐわかるよ。逆に洗脳をかけられてたのはお父様のほうね」


全部説明してくれたお陰で何も言うことがなくなった。

桜子、仕事は早いんだけど……、ここでどういうふうに話を持っていくべきだ? 有り難いような難しいような……。

まあなんとかなるか。

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