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143 ムカつきともやもやを抑える薬がほしい

帰ってきてすぐに私の部屋へ行く。

ミファエラに直接言えたものの、何か釈然としなかった。


玲央達は私達が天使界へ行くと同時にチェスターに人間界の王城へ送っていってもらっていた。そのため今はここにいない。この部屋にいるのは私とレーイン、トウカ、ヴィスタだけだ。皆どこか浮かない顔をしている。

皆の気持ちはたぶん私と同じだ。


「これで、、良かったのかな」


ぽつりとつぶやく。


「良かったと思うぞ。あれ以上言っていたら俺達の歯止めが効かなくなる。むしろあそこでよく耐えたな」


トウカに褒められた。

確かに私が喋っている後ろでトウカ、レーイン、ヴィスタはずっとうつむいていた。表情までは見えなかったがたぶん、何か言いたくても言えなかったのだろう。


「本当に、怒りで頭がどうにかなりそうだったわ。なんなの? あの"それがどうした"みたいな、自分は何も悪いことをしていないですっていう顔!! 最後の"言いたいことはそれだけか"で私の堪忍袋は破裂したわ。もう少し滞在時間が大きければ殴り込んでいたわね」


レーインが少し涙目になっているのはおそらく悔しいからだろう。


「でもミファエラと会ってわかったこともいくつかあった。あれは全ての天使の力を握っている。もちろん軍事的発言や政治的発言の権利もだけど、言葉通り天使族の"力"を。彼はうまく隠してたみたいだけどね。あの気持ち悪い光みたいなオーラあったでしょ。あれ、その力が抑えきれなくなって出てきたものだよ」


ん?? ちょっとよく分からない。

前にヴィスタが言っていたこと? 本当の力を出していない的な感じの。


「力を握っているってどういうこと?」


「そうだね……。たとえば、前に対峙したことがあるガルヴィンっていたでしょ?」


「うん。ありえないくらい弱かったやつ」


思い出してみても、あれはない。一人で派手にコケて尚且つ中ボスみたいなセリフを吐き捨てて盛大に負けてた。


「あのときのガルヴィンの戦闘能力を100とおく。でも本当のガルヴィンの力は1000あるんだ。この900はどこにあると思う?」


今の話の流れからすると……


「ミファエラ……?」


「そう。ミファエラがわざとガルヴィンの力を抑えさせていたんだ。けれど決してガルヴィンの力を自分のものにしているわけじゃない。わかりやすく言うなら……わざとガルヴィンの力を封印していると言ったらいいかな」


なるほど。何故弱いかという理屈はわかった。だからあんなにびっくりするくらい弱かったのか。だけど、


「どうしてそんなことをする必要があるの?」


自分の力にするわけでもないのにわざと弱くしている。そして弱いのならもちろん、私達に負けるなんて当たり前のことだ。だったらどうして……。


「簡単な話、僕達を油断させるためだよ。前にも言ったことがあると思うけど、あの力が天使族の力だと思って僕達はかかるわけじゃない? そうすると僕達は知らない間に天使族に油断して攻撃を仕掛けることになってしまう。ミファエラはきっと予測してたんだよ。僕達魔族が全面戦争で天使族に攻撃してくるのを。おそらくその時のための対策だろう」


敵ながら流石だと思ってしまった。

少し考えれば気づくことかもしれないが、現に私は気づくことが出来なかった。昔天使族と対峙したときもやっぱり人間より強いし厄介な相手だなと思っただけだったから。

これこそまさにミファエラの戦略なんだろうな。


「まあでも、それが気づけたからいいんじゃない? そこから考えていけばいいし。今回の天使界の訪問で学ぶことは多かったよ。それで良しとしよう! こうして反省ばっかりしているのも良くないし、これからは時間との勝負だ。まずはレオのところへ行って話を進めよう」


ヴィスタの言う通りだ。いじけていたって仕方ない。

あ、でもちょっと待って。天使族に宣戦布告したことゲルさんに言ってない……。いや、でもここまで来たんだからあとは勢いで行こう。ゲルさんなら反対しないはず!! そう信じよう。


それじゃあいこうかと部屋を出ようとすると突然、ヴィスタが思い立ったようにあっと声を上げた。


「そういえば僕、このときのために開発していたものがあるんだ。余分に沢山作っておいたからゲルディアス様やレオ達にも渡そう。これで今よりもっと快適になるはずだ」


そう言って渡されたものは私のよく見知っているものだった。


「こ、これは……!!」


「エルフ族の秘書でミアが解読した部分に載っていたやつだよ。使い方はね……」


ふむふむと改めて確認する。

こうして、私達は新たな武器を手に入れた!!



◆◆◆


────やはりあいつだったか。


天使族ではない何かの気配がしたため、急いでそこへ向かう。どこから入ってきたかは知らないが、天使界に来れたのだ。

警備を任せていた天使だけではおそらく追い返すことは出来ないだろうという予測は見事に当たった。


どうやら宣戦布告をしにきたらしい。


混沌の魔人。


噂通りの風貌だがやはり幼い。こいつが少し前、天使族・人間族の連合軍を皆殺しにしたなんて考えられない。しかも混沌の魔人が現れたのは約16年前だ。そう考えると当時は齢5つといったところか。

魔族はとんだ化け物を生んだのだと当時は考えた。

混沌の魔人の後ろにいたやつもおそらくまだ若いだろう。

私には見覚えのない者たちばかりだが、昔見たことのある魔族の各族長によく似ていた。

なかなか他の種族では無闇矢鱈と集まらないのが魔族だ……面白いと取るか面倒だと取るか。今宣戦布告されたこの状況では後者の方だろう。


たぶん混沌の魔人達は近いうちに襲ってくるはずだ。だがゲルディアスの姿が見えない、つまり全てをまとめる魔王の姿が見えなかったということはまだ計画は完璧ではないのだろう。普通はこんなリスクを背負うことをあいつが娘同然の混沌の魔人にさせるわけがない。

混沌の魔人がひとりで突っ走ったと考えるのが妥当か。


だがしかし、そう考えてもやはり対策は早いうちがいいだろう。


「人間族の軍の収集を促すように言っておくだけでもしておかなければ」




そうつぶやき、ミファエラは人間界へと飛び立った。


皆さんもミアが何もらったか予想してみてください。

私達にとって必需品のあれです。答えは次回!!

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