137 《魔王城》
再び目を開けると今度は神界とは真逆のような暗いところだった。
「ここが魔王城か?」
遠くまで続く広くて長い廊下。人の気配は一つもなく、少し不気味さが漂っていた。
「おそらく、魔王城だと思う。予想通りというべきか、少し予想とは違うというべきか……」
無意識に気配を殺すように喋ってしまう。
「誰だ」
ビクッと僕達の体が跳ね上がった。途端に恐ろしいほどの圧が後ろから僕たちを襲う。
「知らない気配がしてみたと思ったら、お前たちは人間か? どうやってここに入ってきた。しかもお前達…………はあ、勇者パーティーか。なんだ? 俺を殺しに来たのか? なら殺られる前に殺るだけだが」
ぶわっと先程とは比べ物にならないほどの殺気が襲いかかってきた。これは勝てない。そう本能で感じたときだった。
「もうゲルさん。慌てすぎ。それに前にも言ったじゃん。今回の勇者パーティーは私の知り合いだって」
腰まである黒髪を後ろの高い位置で一つにくくっている都が何処からともなく現れた。
「この前ぶり。意外と早かったね。て言うことは……もう決まった?」
決まったというのは僕達の覚悟の事だろうか。
「神様に、、合ってきた。数百年前の人間と天使が魔族にした仕打ちも、大昔の天使族が神界の核を破壊しようとしていた事も。全部、都が言っていたことは本当だった」
言葉を選びながら一言ずつ丁寧に伝える。そして最後に、僕達勇者パーティーは魔族側につくということを伝えた。
都は大満足のような雰囲気で、ゲルさんと呼ばれた魔族の男はとても信じられないというふうに僕たちを見ていた。
「…………ね!! ゲルさん! 私がいったとおりでしょ? 絶対にこっちに来るって。だって彼らは私の親友だもん」
満面の笑みで都がもう一人の魔族を見ていると、その男ははあぁ、と短いため息をついて口を開いた。
「まさかとは思ったが……本当の話だったとはな。お前はいつも規格外のことをする。……まあいい。でもまだ人間側すべてをこちらに引き入れたわけではないだろう。お前たちは……好きにするといい」
最後にそう僕達に言い残して男は消えてしまった。
「……さっきの、、ヒトは……?」
なんとなく男の正体の予想はついている。
「ゲルさん。現魔王ゲルディアス。こっちの世界で初めて会ったヒトで私の育て親でもあるの」
都はなんでもないようにそう言い放ち、僕達を自分の部屋へと案内しようとするが、知っていたとしてもなかなかに衝撃的だった。
「ま、都だからな。あんま深く考えないほうがいいぞ」
ミナギの言葉に頷き、素直に僕達は都の後をついていった。
◇◇◇
「いやー、びっくりびっくり。さっきまで話していたと思ったら急にゲルさんいなくなるんだもん。そんなに慌てる必要あるかって思ってたけど、そういえば玲央達とゲルさんって会ったことなかったなーって気づいて私も急いでそっちに向かったってわけで」
コポコポと嗅いだことはないが良い匂いが部屋に充満している。都が僕達の分のお茶を入れてくれているのだ。
さっきの現魔王ゲルディアスの行動についての説明だったようだ。
「でもよく魔界に来れたね。しかも魔王城の中。てっきり美凪がウィスターかチェスターを呼ぶと思ってたけど……」
ウィスター、チェスターとや都が使っている二本の大剣の名前のようだ。僕たちがティナちゃんのお父さんと対峙するときにミナギが呼んだ狐がそれのようだと知ったときは驚いた。
「さっきも行ったけど、、僕達は神界に行ったんだ。そこで神様とあってね。色々と教えてもらって、最後に魔界まで送ってもらった」
「金髪碧眼の美少女だった?」
うんと頷くと、そうだろうなと都がつぶやく。
「やっぱりあの人が一番神様の中で暇人説濃厚。彼女はアルタ様って言ってね、一応天使界創造神で私達を連れてきた張本人なのよ。喋り方もあんな感じだし、、まあ見た通り?」
なんとなく同意するがこうしてみてみると都と神様の距離は近いように見えた。経験の差か、はたまた性格の差か。
「じゃ、本題に移るぞー。で、都はこのあとどんな計画で進めようとしてんの? ゲルディアス様の様子を見た感じ、何かそっちで話は進めてんだろ?」
なかなか本題に進まないことに痺れをきらしたのか、ミナギが強制的に話の矛先をそちらへ持っていく。
「あっ!! この話始める前にトウカ達も呼んでいい? 一緒にいたほうが手っ取り早いし色んな意見が出て面白いと思うから」
いいよと頷いたものの何かもやもやしたものが胸の中に残った。わかってはいた事だ。ただこの4人のメンバーが僕達には普通で、それしかありえなかったから……。
ちょっと待ってねと言い、パタパタと部屋を出ていった。
そして数分後、都と一緒に部屋へと入ってきたのは、いつしか見たことのある3人の魔族だった。
言い訳をしてもいいですか?
レオン視点、めっちゃ書きにくいです。




