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124 《告白》

ティナちゃんが魔族だった。


魔族が現れてそこへ行くと、今までに見たことがなく、噂でしか聞いたことのなかった人型の魔人がいた。それでもやらなければいけないと腹をくくって挑みに行ったところティナちゃんが飛び出してきたところまでは大丈夫だった。そこからティナちゃんがお父さんと叫んだところからよくわからなくなってしまった。


お父さん? 

だってティナちゃんは人間で、普通のどこにでもいそうな女の子で。たまたまミナギと知り合いだって、お父さんがいなくなってしまって。

でもあの人型の魔人をティナちゃんはお父さんだといった。それにミナギはぎょっとはしたもののティナちゃんを抱きとめ、すぐにどうしたらいいかを考え何やら白と黒の狐のようなものを呼んでいた。

ミナギの様子からあの魔族がティナちゃんのお父さんだったとは知らなかったものの、ティナちゃんがあの魔族をお父さんと呼んだことには驚いていなかった。つまりミナギはティナちゃんが魔族がだと知っていて接していたわけだ。


宿屋についてからもずっと考えている。サクラも神妙な面持ちでミナギの帰りを待っていた。

ミナギは何故ティナちゃんが魔族だと知っていたのか。それも気になるが、一番引っかかっていることは魔族についてだ。


魔族とはなんだ?

わからない。

禍々しい瘴気をまとって赤い目を爛々と輝かせている姿しか僕の知識にはない。それが魔族のあり方なんだと思っていた。話し合うことすらできない、獣のような種族。

でもティナちゃんはどうだ?

人間と同じように話すことも、考えることもできる。それにあれだけ知能があって父親があの姿だとは考えにくい。でもそもそも、魔族の皆が皆あの姿だと魔族という一つの種族としてまとまっているわけない。

最低でも知能があるやつは一定数いるわけだ。


ガチャと扉が開いてミナギが帰ってきた。


「……おかえり。ティナちゃんは?」


「無事引き渡してきたよ。明日には父親に会えるだろう」


沈黙が訪れる。

痛すぎるほどの沈黙を破ったのはサクラだった。


「ミナギ。あなたは何を知っているの? ティナちゃんは魔族だったの?」


ひとまず座ろう、ということで僕とサクラ、ミナギは円になるように椅子に座る。


「そうだな、、。ティナは魔族だ」


「ミナギは魔族と接したことがあるってこと?」


「……話すよ。俺が話せる範囲全部。やっぱり隠し事は俺には向いてねえわ」


何かを決心したような面持ちで僕たちを見据える。


「俺が魔族とかかわりを持ち始めたのはパーティーに入る二年前くらいだったかな。二人は宵闇って聞いたことあるか?」


「うん。多分知らない人はいないと思うよ。僕たち勇者パーティーと同じくらい有名だからね。パーティー結成数日で一気にAランクまで上がり、数々の難関と言われた依頼を難なくこなしていくパーティー。おまけに誰ひとりとして頭から爪先まであるローブをぬがないから誰も素顔を見たことがないらしいね。あ、でも一人は絶世の美女だったとか違うとかっていう噂は残ってるかな」


「よく知ってんな。で、そのパーティーの一人が俺なんだわ」


「「…………は!?!?」」


いきなり爆弾発言だ。あの宵闇の一人がミナギ?


「誰ひとりととしてフードを取らないっていうのは取れないからだ。宵闇は俺以外全員魔族だ」


人間じゃない? 魔族が人間界のギルドでパーティーを結成して活動していた? 


「ちょっとどういうことよ。魔族は真っ黒の瘴気と赤い目でしょう? 噂の美女は金髪黒目って言ってたわ。それに宵闇は誰も瘴気なんてまとってないでしょう」


金髪黒目情報は僕も知らなかった。でも確かに直接はあったことがないから分からないけど瘴気をまとっていたら違う意味で有名になるだろう。


「当たり前だ。そもそも魔族は誰も瘴気なんてまとってねえよ。それに目の色は魔族は全員黒だ。あの姿は闇堕ちした姿なんだよ」


「闇堕ち」


「意図的に作られた姿だ。天使族によってな」


ミナギの話がだんだんわからなくなってきた。天使族が魔族をあの姿にさせている? どうして? 

……僕たち人間にそういう印象を与えさせるためか?


「天使族は二人が思っているほど絶対的正義ではないぞ。どちらかというと俺は魔族が被害者だと思う」


でも!! とサクラが対抗する。


「約10年前のあの日、魔族によって3万人という人間と天使の命が奪われたわ!! 魔族によって」


「あれは魔族の国に奇襲をかけようとしていたらしいな。それをいち早く気がついたが一人が食い止めたらしいけど」


「……それでも失われた命は変らないわ」


腑に落ちない様子でサクラがうつむく。


「アナガリス教会は、爺さんは魔族について疑問に思っていたことがいくつかあるみたいで、色々と調べていた。そのせいもあって俺は幼い時からあまり魔族が絶対的悪だとは思ってなかったんだけどな。魔族と出会って、話をしてみて、それでレオン達と再会してこの世界の情勢を見て。人間族・天使族と魔族で争うとなったらやっぱり俺は魔族につくと思う。レオン達がどう言おうがその意志は変わらない」


俺が言えるすべてのことはこれだけだと言ってベッドに潜り込んでしまった。多分まだ話してもずっと平行線になるのが見えていたからだろう。僕も少し考える時間がほしい。サクラも心のなかで色々と葛藤しているようだ。


こうして長かったようで短かった一日が終わりを告げた。


魔族は全員目が黒設定です。過去でおかしなところがあればお手数ですが教えてくださると助かります(_ _)

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