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119 《フレスタイト国》

村を出て数週間。僕達は次の目的地、フレスタイト国へ向かって移動していた。ミナギも少しは心に引っかかっていたものが取れたのかして、表情が明るくなった。幼馴染として、親友として純粋に嬉しい。


フレスタイト国に来たのは魔族の件と、ミアの事もあった。6つの国の中で僕たちが行ってない国がここ、フレスタイト国だけだ。他の5つの国は民家も含めて出来るだけ探したがそれらしき人はいなかった。僕たちが出会った頃を思い出して見ると案外見たら分かるものだからすぐに気づくと思うんだけど。

最後の国でいなかったら探す方法も変えてみようかと思っている。正直こんなに苦戦するとは思っていなかった。サクラとミナギが異様な速さで見つかったこともあったし。



「フレスタイト国ってなんかあったっけ」


「そうだなあ。強いて言えば武器かな。ガリレイド国の軍事に使われる武器なんかはここから輸入していることが多いよ」


「あれ? でもそれだったらガリレイド国が軍事力的には一番ってことにはならないんじゃね?」


「いや、ガリレイド国は天使族の支援とかも受けてるし、騎士団の育成が尋常じゃないからね。他の国には絶対に負けないような軍事力を誇ってる。そうしないと6国全ての中心ってわけにはいかないから」


だんだん話が難しくなってきたようで、言い出しっぺのサクラがあくびし始めた。本当は貴族である僕達はあくびはもちろん、歩き方でさえも怒られるから一度庶民を経験していると本当に窮屈で仕方ない。

ただ僕もサクラも高位貴族にあたるわけだから幼い頃からの特訓のおかげで歩き方は意識しなくてもとても綺麗だ。頭に本を5冊くらい乗っけてもびくともしない。

そういえば前にミナギからツッこまれたっけ。


「こう見ると平和なんだけどねー」


サクラの言うとおり町並みを見ていると本当に平和そのものだ。生活水準は日本ほど高くはないけれど、最近は前世で言うスラム街みたいなものなどもなくなってきているし、最低限の人権は保証されるようになってきている。

前に泊まっていた村は静かだったけど、僕が行く町々はほとんどがどこも賑わっていていい意味で騒がしい。ただ少し森の中へ入ったりすると魔族が出現する。

最近は減ってきていると思ったのに、結局撲滅は出来ないのか。


「ねえねえ。今日はちょっといい宿に泊まろうよ。お風呂入りたいし最近ちょっと疲れた」


まあここ数週間ほとんど歩きっぱなしだし目的地につくことだけを目標にしてきたから今日くらいはいいだろう。

まだお昼を少し過ぎたところだから宿はすぐに見つかるだろう。今は特別寒くもないため宿が取れないということは滅多にない。

それに僕達はあまり顔を出していないからか勇者パーティーだとはあまり疑われない。ミナギも一瞬でわかる黒のローブを外して紺色のローブを羽織っている。長年愛用しているのかよく洗われた形跡があった。あと無駄に高い隠密効果かけられている。正直僕もサクラも視線を頂くことが多いから分けてほしいくらいだ。


フレスタイト国のこのあたりではどうやら明日がなにかのお祭りらしく、準備のためということもあり多くの屋台が出ていた。やっぱり前世みたいな焼きそばやたこ焼きなんかの定番はないものの、チーズを揚げておからみたいなもので巻いているやつとか、柔らかい生地に肉汁がじゅわっと口の中で広がるようなお肉をふんだんに使ったホットドックモドキなんかがあり、こちらもこちらですごく楽しい。

仕事でいくらか自分たちのお金はあるし、たまにはこういうのもいいだろうと皆で好きなものをそれぞれ買って近くにある噴水の側で食べることにした。






やっぱりというべきなミナギはお肉や揚げ物、どんぶりといったガッツリ系が多く、サクラはクレープ、パンケーキ、ワッフルといった甘々コースだ。しかも極めつけにはふたりとも明らかに3人分の量はある。ふたりとも転生してから大食いキャラにキャラチェンジしたのかな。


「うわっ。サクラのそれなんだよ!! 甘すぎて死にそう」


「うるさいわね。ミナギのも大概よ。主食として出てくるものほとんど全部揃ってるじゃない。家庭科で習わなかったの? 五大栄養素が大切なのよ」


「お前のほうが言えたもんじゃねえだろ。よく言うぜ」


「ほらほら、ふたりとも、覚める前に食べちゃおう」


……最近僕がどんどんお母さん化してきている気がする。

そしてよくこの二人は喧嘩している。


けれども食べ始めるとそちらに気が行ったみたいでもう喧嘩なんてどうでも良くなっているようだった。……自由はいいことだよ。


腹ごしらえも終わったし、そろそろ宿に移動しようとする。何個か泊まれそうなところとサクラの条件を満たすところを探してみると結構あった。グーグル先生みたいに地図アプリはないけどなんとかなるだろ。



明日あるはずのお祭り気分を味わいながらぷらぷらと街を歩く。



「ねえ、あそこにいる子、迷子じゃない?」


急にサクラが止まって一箇所を指差した。

するとそこには明るい茶色の6歳くらいの小さな女の子だった。声をかけてみようと思ったとき女の子がこちらに気づき、衝撃の事実が僕たちの耳に入る。



「ミナギお兄ちゃん!!」












「「…………!?!?!?」」

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