表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

111/179

111 別れ、そして旅立ち

後半ミナギ視点。

大きな歓声と拍手でその空間は埋め尽くされていた。


魔族大量拉致事件から約一年、私達は美凪の旅立ちを見送っていた。


簡単に説明すると、今日から2ヶ月前、、くらいかな。グレイスさんからお呼び出しがあって、正式に美凪が勇者パーティーのメンバーに選ばれたとの報告があった。書類には2日後に登城しろと命令があり、美凪は渋々行ってきたあと、そのままパーティーに入る準備をしにいくため私達とは当分別れだと告げてきた。

はじめはいやいや一緒に旅をしてきた仲間でもやはり情は芽生えるもので。トウカやレーイン、ヴィスタの別れの言葉は突き放すような言い草だったが寂しいことが読み取れた。どうやら美凪も気づいていたようだ。


で、三日前くらいにグレイスさんから勇者パーティーの旅立ちのパレードがあるから良ければ行ってくれというお達しがあり、皆で来ているわけだ。


「凄い人気だね。この国の勇者って人は」


「勇者だけじゃないだろう。ま、聖女も勇者も数百年ぶりの登場だ。そりゃ市民たちも喜びたくなるのだろうよ」


「じゃあ何故勇者でも聖女でもないミナギが入っているのかしら。あの人、どこに行ってもそんな扱いになるの? それはそれで可哀想だわ。もう少し優しくしてあげればよかったかしら」


「別に大丈夫だろう。俺らが優しくすればするほどあいつはあれだけついてきていない。それに少なからず勇者パーティーには一人か二人、勇者と聖女以外にも入るのがしきたりらしいし、ミナギのことだ。うまくやっているだろうよ」


「それもそうね」


とまあ隣で好き勝手に言い合っている3人。私なら王女と侯爵子息と3人きりだったら何が何でも逃げ出したくなるわ。ミナギの健闘を祈ろう。


「そういえばさ。勇者パーティーって魔王討伐のためのパーティーだよね。僕たちがこんなところで微笑ましく勇者パーティーを見送ってて大丈夫なの?」



あ。

そういえばそうだった。いずれ敵対するかもしれない人たちだった。えー、美凪もそこに入ってるのかー。もし私達がどこかであったら美凪はどちらにつくのだろうか。もちろんこちらとしては魔族側に来てほしいものだけれど。

……その時はその時で考えるか。


「魔王討伐パーティーって言うことはゲルさんを狙ってるってことだよね。……うーん、でも相手の総合値とかスキルとか見てもゲルさん倒せるとは思えないんだよねー。何ならあの二人相手だったら美凪一人で充分な気もする」


確かに人間にしては高いしそりゃ周りから見たら充分勇者として、聖女としては強いんだろうけど。ただこれで向かってくるんだったら舐めてるとしか言いようがない。


「あ、ミナギが手を振ってきたわよ」


明らかに満面の笑みでこちらに手を振ってきている美凪。あいつは事の重大さに気づいているのだろうか。仕方ない。私は優しいからね振り返してあげよう。






勇者パーティーが姿を城へ隠すと、お祭り騒ぎだったパレードも徐々に落ち着いてきてまばらに帰る人も増えてきた。私達もそろそろ人間界を後にするか、と移動を始める。

こうして私達と美凪の旅は幕を閉じたのだった。





♢♢♢



城に呼ばれてからはあっという間だった。

爺さんは少し前からもう話をつけていたみたいであれよあれよという間に準備が整えられ今では勇者パーティーとしてパレードに参加している。


後は何があったかなー。あ、あれだあれ。やっぱり俺の予想通り勇者と聖女は玲央と桜子で間違いなかった。ふたりとも都のことを心配していたが……あの様子だとまだ都のことを話すのは早いだろう。それに今は昔みたいな4人だけの世界ではない。何なら俺たちでは手も足も出ない奴らが3人も都にベッタリだ。俺だって最初はあたりがだいぶきつかったら勇者や聖女になると難しいだろうなー。しかもあの考え方だったら余計。


っと。余計なことを考えていたら笑顔で手をふるのを忘れそうになる。

何でも俺は自分の知らない間に国一番の大魔導士とかに認定されているらしい。レーインとかヴィスタとかを知ってる分なんかなあ……って感じだ。都と比べればもう幼子のようなステータスなのに……。ああ、思い出しただけで悲しくなってきた。


そういえば爺さんが都達にパレードがあるっていうことを伝えたっていうのは聞いたんだが……あいつら、いるのか?

来てくれていたら少し嬉しいなという淡い期待をいだき、人混みの中目を凝らしてみると……怖いくらい目立ってないフード集団が目に入った。は? 何でもあいつらあんなに隠密効果発動させてんの? 普通あんな気色悪い(色んな意味で)フード集団がいたら誰でも怖がるぞ? あ、でもあんなに隠密スキルかけてるから行けるのか。


……もうなんでもいいや。とりあえず手だけ振っておこう。

手を振るとちゃんと皆振りかえしてくれる。俺の一年は無駄じゃなかったんだとちょっと涙が出そうになったのはここだけの話だ。

美凪が城に行ったときの玲央視点は84話をご参照ください。

フード集団の隠密効果はフードに元々ついてたものです。ミア達は気づいていません。


どうでもいい話ですが私個人的には美凪が一番好きです。ちょっと不憫な感じが書いてて楽しい(^^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ