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妖怪の世界へ潜入任務(仮題)  作者: 紅茶(牛乳味)
5/7

5話

ええ......」

 『優等生組』と書かれた教室。もうなんていうか、見た目が豪華。教室の扉って二か所設置してあるのが普通だと思うんだけれどここは違う。まるで城の門のように二つの扉が隣り合って置いてある。

 そもそもここの教室は校舎の中の端の方に位置している。と言っても狭いわけではなく、むしろ逆。一階の三分の一はここの教室が占めているだろうと推測できるほど大きい。扉の色は黒を基調にしていて、ところどころに金色の模様が描かれている。

『何をしておる、はよう入らんか』

 わーお、と感嘆を呟きながら教室の豪華さに見入っているとタイトが話しかけてくる。色々と言いたいことはあるところだけれど。タイトも急かしてくることだし、さっさと教室に入っちゃおうか。 

 そもそも、なんで俺がこんなところにいるのかというと、用事があるから来たというわけではなくここが俺の振り分けられた教室だからだ。

 理事長のマヒロさんと話をした後にクラス分けの掲示を見に行った。その中でひときわ目を引くクラスがあったのだが、それがまさにここ優等生組。他のクラスは数字で分けているのにここだけなぜか違う。

 どんな妖怪が入っているんだろうと名前を見ていたところ、『二月照光』、まさに俺の名前が書いてあったのだ。

 そんな経緯があってここにいるのだけれど。優等生組ということは優秀な妖怪が集まっているのだろう。そしてこの異界で言う優秀な妖怪ということは勉学の意味ではないはず。宝石の色が紫色に近く脅威度が高い妖怪、すなわち『ヤバい』妖怪だ。

「ま、そうは言ってもしょうがないよな」

 とりあえずは受け入れて過ごしてみよう。それが最適解だと思うし。

「それじゃあ失礼しますよっと」

 適当に呟きながら教室への扉を開こうとすると、

「あーー!!」

「!?」

 いきなり叫び声が背後から聞こえてくる。なんだなんだ?

 振り向くと小柄な男子がいた。身長は低く体も細い。黒い髪を逆立てていて、片手には棍棒、もう片方の手には何やら封筒を持っている。

「お前、優等生組なのか!?」

 俺を指さしながらずかずかと距離を詰めてくる。近づいてみれば、男子の目つきが吊り上がっていたりしていることから怒っている様子。あ、あんまり刺激しない方が良さそう?

「一応、ここのクラスだよ」

 とりあえず、嘘は吐かないで正直に答える。すると男の子は表情を一変させて目をキラキラと輝かせる。

「すっげーな! 俺も優等生組に入りたかったぜ!」

 くう~! などと呻きながらその場でジタバタする少年。えっと、俺はどうすればいいんだ?

「豪華な教室に有名な先生方! 同じ妖術の授業を受けても優等生組で受けるのと他で受けるのには天と地ほどの差があるんだよな! もちろん学校の立場はあるから、他の組でも希望者は優等生組の授業を受けられる。ただ楽な道を進んでもいい、というかほとんどの妖怪は楽な道を選ぶ。そんな中優等生組は最初から英才教育が前提なんだ! なんていうかさ、まるで才能があるものには強くなる義務があるって言ってるみたいだよなー!」

「う、うん。そうだね」

 まさにマシンガントーク。相槌を打つのにも精一杯な状況だけれど、そんな中からでも情報は手に入る。

「......あの人に鍛えられているのかも」

 ふっと頭に思い浮かぶのは仕事相手。いつも忙しいようで、俺への仕事の説明もとにかく早口。聞き返したりするとめちゃくちゃ機嫌が悪くなるので一発で聞き取れるようになった。まさかこんなところでスキルが活躍するなんて、何が起こるかわからないものだ。

 と、思考が逸れてしまった。本題に戻らないと。

 恐らくだけれど、俺がこの優等生組に入れられたのは宝石の色を早く紫色にするためだろう。宝石の色を変える『ヤバさ』は脅威度でもある。つまり、俺が危険な妖術を覚えたり、妖術の練度を上げたりすることによってどんどん宝石の色が変わっていく。そして彼の話からすると、優等生組というのは妖術の授業一つとっても英才教育がなされているらしい。俺の任務のためにはまさにうってつけの場所ということだ。

「それで、君は何をしに来たの?」

 話を頭の中でまとめながら話を遮って目の前の妖怪に尋ねる。このままだと優等生組の話を夜まで続けそうだし。

「もちろん、こっちの教室で授業を受けさせてもらうための申請書を出しに来たんだ!」

 答えながら片手に持っている書類を見せてくる。封筒には『申請書』と書かれていて、隅の方には『豪鬼炎也』と添えてある。この子の名前かな? 

 これがさっきの話に出てきた、他の組でも頼めば優等生組の授業が受けられるという奴か。随分勉強熱心な妖怪だ。

「それじゃあ教室に行こうぜ! ほら、お前も優等生組......なんだ...よ......な?」

 話しながら段々語気が弱くなり、遂には黙ってしまう炎也。その視線は俺の首元に固定されている。どうしたんだろう?

「あのー」

「......認めない」

「え?」

「認めなああああい!!」

 突然その場で棍棒を振り回しだす炎也。なになになに!?

 棍棒に当たらないように距離を取りながらどうどうとたしなめる。でも、そんな俺の行動は一切意味がないようで炎也が暴れ続けている。

「お前なんかが優等生組なわけがない!」

 随分ひどいいいようだ。ただ、その言葉を聞いて炎也が怒りだした理由をなんとなく悟った。

 登校しているときに霞に誘惑されたとき彼女は『宝石の色は白。買いかぶりすぎました』みたいな発言をしていた。ここで暴れ出した炎也も俺の首元、宝石をみてから暴れ出した。この二つから考えられることというのは簡単で、白色の宝石は一番低い位なのだろう。そんな俺が優等生組に入れたのが、優等生組に憧れている炎也の怒りのスイッチを入れたのだろう。

 流石に騒ぎすぎたようで、他の教室から教師や生徒が顔を出してくる。ま、まずい。変に目立ってしまうと人間とバレるリスクが上がってしまう。何とか矛を収めてもらえないだろうか?

「決めた! お前、今から俺と勝負しろ! 場所は中庭だ! いいな!? よし、すぐに来いよ!」

 ぶっ飛ばしてやるぜええええー! と叫びながら廊下を駆けていく炎也。相変わらずおろおろしながらも俺は状況を少しずつ飲み込んでいく。

「なんだなんだ?」「なんか面白いことになってるな」「優等生組の実力が見れるのか」「中庭で闘うみたいだぜ」「よし、早く行こうぜ!」

 そんな周りの喧騒を聞きながら、ゆっくりと状況を理解する。

「これ、まずくない?」

 俺の呟きは喧騒にかき消されるのであった。


凄いところに入ろうとしているみたいだ。

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