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1話 魔王を倒しました

「ブレス来るぞ!」

蒼く輝く鎧を着た男が前を見据えたまま

後ろの仲間達に言う。


「ビックシールド!」

白銀の全身鎧を着た男がザンッと大盾を地面に突き刺すと盾から光が溢れ、

縦横5メートル程の光の盾が出来る。


巨大な男の口から灼熱の炎が吐き出される。

その炎を光の盾が塞ぎ上や横に流れていく。


炎を吐き終わる直前に革鎧を着た細めの体の男が走り出し、ジャンプすると

巨大な男の目の辺りに短剣を投げ片目に刺さる。


その瞬間シールドの後ろに居る黒紫のローブを着た女が杖を巨大な男に

向けて「メガサンダー!」と唱えると目に刺さってる短剣に巨大な雷

が落ちる。

巨大な男はたまらず膝をつき苦しそうに唸る(うなる)

純白のローブを着た女が「セイクリッドホーリーリング」と唱え、既に前へ走り出した

青い鎧の男に白い光が着弾し全身が白く光る。


4人の男女が一斉に叫ぶ

「「「「マコト!」」」」


上空に飛んで光る剣を振り上げ巨大な男に力の限り振り抜く。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~!」


巨大な男に一筋の光が走る。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!」

巨大な男はチリになって消えていく。


この瞬間、人間と魔族の長い闘いが終わった。


蒼い鎧の男は後ろに振り向き、笑顔で

「終わったな、おつかれさん。」


4人の男女は精魂尽きたのか倒れていたり片膝付いていたが

みんな笑顔で答えた。

「「「「「おつかれさま、ありがとう、マコト。」」」」」


すると徐々に空間が白くなっていく。


完全に白くなったら仲間たちの気配がなくなった。


マコトと言われてた男はなんとなくこの状況を察し静かにたたずんでいる。


「魔王を倒したよ、ティメラ。」

そう言うと、神々しい光を背にひとりの女性が現れる。

ゆっくり目を開けると、マコトに微笑む。


しかし徐々に目が潤んでくると、ブワッと涙を流してマコトの足にしがみつく。

「あ″り″がどう″ーーーーー!えぐえぐ。。。」


さっきまでの神々しい雰囲気はどこへやら、わんわん泣き出した。

マコトは足元で泣いてる自称女神を見て困った顔をしている。

「はいはい、泣き止んで。魔王倒したけどこれでいいんだよな?」

と言うと

「ありがとう~、あの魔王のせいで神様に怒られるし、かと言って私が

直接手を出せないから困ってたのーーーー!

これでやっとゆっくりモゴモゴ。。。。。」


「おい、こら!なんだって?」

マコトがジト目で睨むと自称女神は横を向きフーフーと口笛を吹いた。


「こーーーのーーー落ちこぼれ女神はぁ。」


「あーーー、それ言った!落ちこぼれじゃ無いもん、ちょっと魔王対策苦手

なだけだもん!」


「まぁ、いいや。とにかくこれで元の世界に帰れるんだよな?」


「えぇ、ちゃんと返すわよ。でも時間までは元に巻き戻せないから

5年過ぎちゃってるけど。」


「あぁ、5年位ならなんとか取り戻せるだろう。でも流石に大学はもう

除籍だろうなぁ。」


「ごめんなさい」


「いいよ、この世界はつらかったけど楽しかったしな。ただあの仲間と別れるのは

やっぱり残念だな。」

マコトがそう言うと、女神とは違う更に巨大な存在が徐々に現れ始める。


「げっ。」

女神が冷や汗たらり。


「マコトと言ったな、このばかの頼みを聞いてくれて感謝する。」

腹の底から響く声を聞き跪く(ひざまずく)マコト。


「よい。それでわしからそなたに褒美を与えよう。」

そう言うとマコトの体が少し光る。

「そなたにとって有用なスキルを与えた、元の世界についたらステータス画面で見るといい。」

そう言うと消えていった。


「凄いね、アルフェイス様から直接褒美を頂けるなんて。」


「え?向こうでもこの能力使えるの?」


「そだよー、そのままだよ。でも元の世界ではマコトの能力は

危険だから十分気を付けて使ってね。

とりあえずこれでおしまい。後は自由に生きてね。

魔王を倒してくれて本当にありがとう。

じゃぁね。」

手をひらひらとするとスーッと消えていき白い空間も徐々に元の魔王の部屋に

変わっていった。


周りを見ると一緒に戦った仲間4人がこちらに向いていた。

「みんなも女神に会ったの?」


「う、うん。お礼言われた。」

歯切れの悪い返事が来たが、直接会って緊張したのかなと思った。


「さて、じゃぁ城へ帰ろうか。」


「うん」

「あぁ。」


5人は王や国民が待ってる城へ帰っていった


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ぼふっ


キングサイズより更に大きいベッドに横になるマコト。

「はぁ、やっと全部終わった。」

上を向き手を挙げて手のひらを見る。

マメだらけの手、元の世界でも剣道をやっていたけど趣味程度で

マメは少しある位だった。


それが5年前突然この世界に呼ばれ、あの女神に魔王を泣いて頼んできて倒してくれと

言われた時は無理だと、出来るわけないと拒否した。

それでもあのバカ女神は勇者としての基本スキルとおまけにクラフトスキル、錬金術なんかをくれたけど、最初の頃は生きるだけでも大変だった。

冒険者ギルドに入り、いろんな人と出会い、別れ、死を覚悟した時もあった。

勇者として覚醒してからは人々から助けを求められる事も多くなった。

助けられなかった命はたくさんあった。

石を投げられることも何回もある。

勝手に呼ばれたのに何で憎まれなきゃいけないのかと、本気で神や人々を

恨んだこともあった。

でも仲間たちに支えられまた前を向いて進めるようになった。


そしてようやく魔王を倒せた。


これでもうこの世界は大丈夫。

後はパーティー仲間のクリス、サーシャたち王族に任せればいい。

明日には元の世界に帰る、家族のみんなは元気だろうか?

死んだと思われてるんだろうな、ちゃんと受け入れてくれるのだろうか?

明日が待ち遠しいけど怖くもある。

そう、色々と考えているとドアをノックする音がして、ベッドから体を起こし

どうぞと返事をした。

探索スキルで誰かはわかっている。


ゆっくりドアが開くとそこには白いドレスを着た金髪碧眼の女性が立っていた。

パーティーメンバーのサーシャだ。

彼女はこのイシスティア王国の王位継承権第2位のサーシャ・ルイーズ・ハーレイ。

聖女と呼ばれ回復、浄化に特化した人種の女性、いや・・・まだ19歳なので女の子と言うべきか。


私はベッドから立ち上がり片膝をついて礼をする。

「姫どうかされましたか?」

「マコト、畏まらないで(かしこまらないで)ないで。私達は仲間よ、今まで通りサーシャって呼んでください。」

マコトは顔を上げニコッと微笑み

「姫さまなんだから、一応やらないとな。」

「もう、マコトは意地悪です。」

頬を膨らませてぷいと横を向く。


マコトは立ち上がりサーシャをソファーに案内して座らせる。

「で、どうしたんだ?送別会まではまだまだあるぞ。」

「なに?用がなくちゃ来ちゃいけないの?」

と、ジッと見てくる。

聖女と言われ国民から絶大な人気を誇るだけあって、物凄い美少女だ。

「そんな事ないよ、今王族は色々忙しいだろ。クリスなんて目の下にクマが出来てたぞ。」

「お兄様は次期王なのだからいいのです。私はマコト様の妻になるので王族離脱

するから良いのです。」

「また、そんなこと言ってる。俺は明日にこの世界から元の世界に戻るんだぞ。

いいかげんそんな冗談はやめておけ。」

「冗談じゃないですもん!私はマコト様と結婚するんですもん!」

「子供か。」

頬をめい一杯膨らませてプイッと横を向くサーシャ。

「はぁ、とりあえずちょっと外の空気でも吸ってくるか。」

「私も一緒に参ります。」

るんるんと軽い足取りでマコトの前を歩くサーシャ。

外面(そとづら)はまさに聖女そのものなのに、ほんと俺たちの前だと途端にわがまま子供になる

お姫さまだな~。』


中庭に着くと1人の女性がお茶を飲んでいた。

「よぉ~、マリアじゃないか。」

パーティーメンバーのエルフ種のマリア、地水火風雷闇の6属性を使いこなす魔法使いの頂点と言っていいほどの使い手だ。

「あら、二人してデートかしら。」

「デートちゃうわ!」

「で、でででででーと」

一人顔を真っ赤にしてクルクル回ってる聖女さんは放っておいて、

「サーシャがうるさいから部屋から出てきた。ついでに外の空気も吸いたかった

からな。」

「そうなの」と微笑むマリアの前の椅子に座ると近くに立っていたメイドが

紅茶を持ってきた。

ありがとうと言うと一口飲み、のどを潤すマコト。


「明日本当に帰るの?」

「あぁ、元の世界に戻る事を心の糧に頑張ってきたんだからな。」

「そう、寂しくなるわね。」

後ろでクルクル回ってた聖女がやっと正気に戻って俺たちの隣に来て椅子に座った。

メイドがすかさず紅茶を出して、サーシャも一息つく。


「マコト、女神様に会ったんでしょ?なんて言われた?」

「ん?ん~、ありがとうって位かな。」

本当は足元にしがみ付いてわんわん泣いてたなんて言えないよな。

あと、アルフェイス神さまから何かスキル頂いたけど向こうに帰ってから確認しろって言われたから何かわからないから今は言わないでおこう。

「サーシャ達はどうなんだ?」

「え?わ、わ、私もそんな感じだったわ。」

少し焦っているけどなんかを言われたのかな?

まぁ、ここはあまり深く突っ込まないでおこう。


「私もそんな感じよ。」

とマリアは意味深な微笑みを浮かべた。


「そう言えば、ニックはどうした?」

「さぁ、街で飲んでるんじゃない?」

「あいつは相変わらずだな。」

ニックとは俺たちパーティーメンバーの一人で人種。斥候、情報収集を得意とする

奴だ。酒が好きでいつも酒臭い。

でも斥候、情報収集能力はピカイチでみんなから絶大な信頼を得ている。

「さて、そろそろ送別パーティーの準備しないとな、また礼服着るのかぁ。」

肩をがっくりと落としていると、二人から


「「がんばれ、勇者様。」」


と、背中を思いっきり叩かれた。

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