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他国の情勢

「エマ、よかったまだここに居たんだ。」


おしるこ屋さんの椅子に座って、幸せそうにおしるこを啜っているエマを見つける。

歴史館から急ぎ足でおしるこ屋さんに来たお陰で、間に合ったようだ。


「どうしたの?コウ。

 そんなに急いで?」


エマは横に重ねられたお椀の山に、空になったお椀を重ねてからこちらを見た。

さすがに食べ過ぎだと思ったが、今はそれに触れずにおく。


「エマはコトミ様の事を知ってる?」


「コトミ様?もちろん知ってよ。

 22番目の聖女様でしょ?」


「なんか変わった聖女様だったって聞いたんだけど...」


エマはヨルトに視線を送ると、その視線を私へと戻した。


「う〜ん、そうだね。

 少し変わった聖女様だったみたいだよ。

 同行者の誰とも結婚せずに、魔王封印後は1人で世界中を駆け巡って聖女について調べまくってたって記録が残ってたんだ。

 最終的には山奥に篭っちゃったらしいけど。」


「そのコトミ様が聖女の何について調べてたかわかる?」


「それが山奥に篭った時に全部持って引き篭もっちゃったみたいなんだよね。

 で、その山奥の小屋に結界張っちゃって誰も入れないの。

 だから何を調べてたかわからないままになっちゃったんだ。」


エマは残念そうに眉を下げた。

エマもコトミが調べていた事に、関心があったのかも知れない。


「同じ聖女のコウなら、その結界を解けるんじゃないか?」


私の後ろで黙っていたヨルトがエマにそう言った。


「これまでも他の聖女様が結界を解きに行ったんだけど、誰も解けなかったんだよね。

 でもコウならもしかするかも。」


エマの目が輝き、私を見る。

エマが私に何を期待しているかはわからないが、私としてもコトミの調べていた事は気になる。


「場所はわかるの?

 結界が解けるかはわからないけど、その小屋に行ってみたい。」


「ヴァルシオ王国の国境近くにあるみたいだよ。

 ここネムの国の次に行くんじゃないかな?

 アルに話して、寄ってみるのもいいんじゃない?」


思ったよりも近くにあるようで良かった。

だが、ヨルトは何かを考えるように顎に手を当てると口を開いた。


「ドワーフの国ヴァルシオか。

 最近、良くない話を聞く。」


「良くない話?」


ヨルトはああと言って頷くと、言葉を続けた。


「一年前に前の国王が亡くなって今の国王になったんだが、その時から既に今の国王と前国王の弟で揉めていたらしい。

 王位継承の順で前国王の息子である今の国王が王になったんだが、前国王の弟は納得していなかったらしくてな。

 最近、王宮内で争いが生じたようだ。

 その後の情報が入って来ない為、どうなったかわからないんだがヴァルシオがあまりいい状況ではないのは確かだろう。

 アルフォエルが頭首様と話しているのも、恐らくその事だろうな。」


確かにあまり良くない話だ。

他国の情勢にはあまり首を突っ込まない方が良さそうだが、そうも言っていられないだろう。


「う〜ん、でもヴァルシオも協定国だからね。

 同行者も居るだろうし、避けて行く訳にもいかないよね。」


エマも同じような事を思っていたようで、そう言って困った表情を浮かべた。


「ヴァルシオに入れるかもわからんし、まあ行ってみるしかないだろうな。」


「そうだね、アルの意見も聞いてみないとだし。」


ヨルトの言葉にエマも同意する。

この世界の地理なども詳しくない私は、2人の意見に頷く事しか出来なかった。






「よし行くか。」


馬に跨り私達を見渡しそう言ったアルに私は頷く。

聖女降臨式の翌日、私達はネムの国の都を出発する事になった。


あの後アルを含めた4人で話し合い、次の目的地は予定通りヴァルシオに決まった。

アルも頭首からヴァルシオの状況を聞いたようだが、やはり詳しい事はわからなかったらしい。

結局のところ、自分達で行って確かめるしかない。

そう結論が出た為、私達はヴァルシオへ向かう事となった。


都を出発する私達を頭首やその家臣達が見送る。

ネムの国ではベーマールのようなパレードは行わないようだ。

だが聖獣であるアミーを連れた私達が、勇者一行だとわかると都の人々は手を振り声を掛けて送り出してくれた。

騎士の格好でアミーに跨る私に、ヨルトは少し驚いたようだが何も言わずにいつもの無表情に戻る。


懐かしい食べ物が沢山あったネムの都。

また是非来たいと思う。





「ドワーフか、初めて会うな。」


私はこの世界に来て、人族しか会った事がない。

想像上のドワーフしか知らない私は、少しだけ胸を躍らせそう言った。


「ドワーフやエルフは人口が少ない上に、あまり他国へは行かないからな。」


「エルフも居るんだ!」


余程ワクワクした表情をしてしまっていたのだろう。

アルもエマもそんな私を見て笑っている。


「他国へは行かないが、他種族を受け付けない訳ではない。

 冒険者などはヴァルシオに行っている者も多い。」


「楽しみだな。」


友好的らしいドワーフに安心する。

この世界では種族の間に確執などはないようだ。

ヴァルシオの国内情勢は気になるが、私達はヴァルシオを目指して急いだ。

誤字報告ありがとうございました!

非常に助かります。

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