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聖女の部屋招待

あの聖女付き騎士予定だった騎士との勝負から、周りの目が変わった様に感じる。

負けたあの騎士が自ら言いふらしているとも考え難いので、恐らく誰かに見られていたのだろう。

となれば尚の事、負けずに済んで良かったと思う。

私自身はと言うと、自分の能力を理解出来た訳でもない。

身体が勝手に動く様なあの感覚。

恐怖が消えた訳では無い。

だが、それによって救われたのだ。

悪い物では無いと思う様にした。


「コウ、どうしたの?難しい顔をして。」


聖女に顔を覗き込まれる。


「いえ...何でもないです。

 聖女様は修行に戻られて下さい。」


私がそう言うと、聖女はローブの男の元へ戻って行き修行を再開した。

相変わらず何をやっているのかわからない修行。

成長しているのか疑問だが、毎日続けられていた。

あまりやる気が有るようには見えないが、彼女なりに努力をしているのだろうか?

...ならば自分も騎士として成長するべきではないか。

元の世界へ戻れないのであれば、この世界で生きて行く努力をしなくてはならない。

騎士としての能力、か。

私はまた、彼女の修行を見ながら今後の事をぼんやりと考えた。





「コウ、私の部屋に来てよ!」


修行が終わり城へ戻ると聖女に呼ばれた。


「聖女様の部屋に...ですか?」


聖女は何やら嬉しそうに私の手を引いた。


「今日の修行は終わったし、この後は自由だし。

 私の部屋でお茶でもしようよ。」


聖女である彼女の言葉を無下にする事も出来ない。

私は聖女に手を引かれるまま、彼女の部屋へと入った。


「あっ、そうだ。私、汗まみれだ。

 ちょっとお風呂行ってくる。」


「でしたら私は部屋へ戻ってますよ。

 お戻りの頃にもう一度伺います。」


部屋の主人が不在の時にそにまま居座るのも無粋だろう。

私は聖女の部屋を出ようとする。

しかし、聖女はそれを引き止めた。


「急いで戻って来るから、このまま待ってて。」


そう言われてしまうと、部屋に戻り辛くなってしまう。

私が苦笑しながらはいと答えると、聖女は部屋を出て行った。



聖女の部屋に1人ポツンと取り残される。

手持ち無沙汰になった私は少し部屋の中を見て回った。

少し位なら許されるだろう。


聖女の部屋は私の部屋と違って、可愛らしい内装をしていた。

ベッドやソファーも淡いピンク色をしていて可愛らしい。

そして何やら不思議な香りがする。

お香だろうか?

いい匂いかと言われれば、なんとも言えない。

聖女の好きな香りだとしたら、少し変わっているように思える。

テーブルの上を見てみると、携帯電話と化粧ポーチが置いてあった。

彼女はアイテムボックスの存在を知らないのだろうか?

あんな無防備に置いてある携帯電話をみるとそう思えた。

そういえば、聖女にもあちらの世界から荷物が一緒に召喚されていた。

聖女の荷物は学生らしいカバンだった。

おそらく教科書などは入っていないだろう。

だいぶ軽そうに見えた。

化粧ポーチを見て、毎朝化粧を頑張っているんだろうなぁ...なんて思ってしまう。

そんな事を思っていると聖女は部屋に戻ってきた。


「お待たせ〜」


本当に急いで来たのだろう。

聖女が部屋を出てから大した時間は経っていない。


「今、紅茶を用意するね。」


そう言いティーポットに伸ばす聖女の手を制止し私がと伝えた。

聖女は大人しくソファーに座り、代わりに私が紅茶を用意する。

カップに注ぐと辺りにいい香りが広がった。お香の匂いが若干ジャマだが。


「聖女様、どうぞ。」


聖女の前に紅茶を置く。


「コウも座って。」


聖女に向かいの椅子を促され、大人しく席に着いた。

紅茶を飲みながら、聖女はちらちらと何度も私に視線を向ける。


「どうかされましたか?」


私が問いかけると、聖女はカップをテーブルに戻した。


「コウ...なんかカンジない?」


何かとは何か。

聖女にしかカンジない何かがあるのだろうか。

でもだったら私に聞いてなどこないだろう。


「何か、とは?」


真っすぐに聖女を見つめ返すと、聖女は頬を赤らめる。


「身体が...熱かったりとか。」


何故身体が熱くなるのだろうか?


「聖女様、熱いのですか?少し窓をあけましょうか?」


「イヤ、違くて...。

 おかしいな...あのお香、男に効くって聞いたのに...。」


後半はボソボソと声が小さくなり、聞き取れなかった。

何やら考える込んでいる。

私が居ては邪魔じゃないだろうか。


「聖女様、お疲れなのではないですか?

 私は部屋に戻りますので、ゆっくりお休み下さい。」


考える事は他人が居ると邪魔だろう。

私は気を使って部屋から出る事にした。


「待って!違うの...あの...」


そう言って俯く聖女の顔は赤い。

熱でもあるのだろうか?


「聖女様、体調が優れないのでしたらベッドに横になって下さい。

 今、医者を呼んで参りますので。」


私は聖女を抱き寄せると、ベッドへと導いた。

聖女をベッドに寝かせると、なぜか潤ませた熱のこもった瞳に見上げてられる。


「コウ...」


聖女は何を思ったのか、自らの服のボタンを外した。

聖女の肌があらわになる。

すると私の手を掴み、強引に引くと私に抱きついた。


「コウ...あなたが好き。

 聞いたわ。私の騎士でいる為に戦ってくれた事。」


耳元でそううっとりと囁かれた。

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