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想像していた聖女との旅

「コウは、昔の聖女の本を事前に読んでて正解だったな。

 こんな調子で治癒魔法を乱発してたら、聖女だって事が早々にバレて、今頃どこかに連れて行かれてるぞ。」


アルの言葉に押し黙ってしまう。

実際、盗賊に襲われたことがある為、何も言い返せなかった。

もしかしたらノーラも小百合が聖女である事が知られないように、聖魔法を使わないよう言ってたのかも知れない。

小百合はそれをそのまま本に記載したのだろう。


「それにコウは、聖女の中でも魔力量は多いと思うよ。

 四大魔法、全部使えるんでしょ?

 聖女だからって全部に適性がある訳じゃないんだけどね。」


アルに続いて言われたエマの言葉に驚いた。

聖女が全て、自分と同じように魔力が高いと思っていた。

小百合も四大魔法は全て使えた様なので、それが当然の認識でいたのだがどうやらそれは間違いらしい。


「そうなんだ。

 魔法は昔の聖女の本から、独学だったから知らなかった。」


そう言った私にエマは、はぁとため息を吐く。


「それも普通じゃないし。

 魔法の独学なんて、そもそも難しいんだよ?

 普通は魔道士から教わらないと、使える様にならないの。」


そんな事を言われても仕方がない。

教えてくれる人など居なかったのだから。

その難しいと言われる事をやってのけたんだ、その時の自分はよほど生きることに必死だったという事だろう。


「コウ、もしかしてこの前デルヘンに行った時もそのアイテムボックスとやらを使っていたのか?」


何やら思い出した様にアルに言われて、私は頷いた。


「使ってたよ、食料とかはアイテムボックスに入れて行ったし。」


私の言葉に今度はアルがため息を吐く。

何故私と話す人はため息が多いのだろうか。


「食事を用意された時、何処から取って来たのかと思ったらそういう事か。」


野宿した時に皆がした、何か言いたげな表情を思い出す。

あれはそういう意味の表情だったのか。


「じゃあ、今回も食料は準備済みって事?

 仕組みがわからないから何とも言えないんだけど、食料ってそんなに保つの?」


「アイテムボックスの中は時間経過が無いから、大丈夫だよ。

 それに今回は潜り込む訳じゃないから、町や村で宿を取るんでしょ?

 なら、あまり食料は必要ないと思うし。」


食料は多少は用意したが、そこまで必要ないだろう。

それに足りなくなったら、町や村で買えば済む話だ。


「そうだな。

 さて、準備も整ったし行くか。

 馬車だと往復、一週間は掛かると思っていたが馬ならそんなに掛からないだろう。

 さっさと聖剣を授かってくるとしよう。」


アルが馬に跨ったのを見て、私もエマもそれに倣う。

また馬での旅が始まるのかと思うと、少し気が重いがこれは慣れるしかない。

魔王の封印への旅も馬で行く事になるだろう。

何だか日本での電車や車での旅行が懐かしく思えた。







「なんか、想像していた聖女様との旅と違う。」


夕刻になり宿を探す為に立ち寄った町で、エマはそう言った。

魔物と戦いながら一日中、馬の上で過ごした為ひどく疲れている様に見える。

今回は魔物避けの結界は使っていない。

魔物が強くなるのに合わせて、アルもエマも強くならなくてはいけない。

その鍛錬も兼ねた今回の旅では、魔物避けは不要なものだった。


「普通、聖女様ってあんなに戦わないから。

 勇者や僕らに守られて、傷ついた僕らを治癒魔法で癒してくれるのが聖女様だから。

 なんでコウはあんなに最前線で戦えちゃう訳?

 今も全然体力が有り余ってるみたいだし。」


確かにこの中で一番へばっているのはエマだった。

私は身体強化も掛けているし、何より騎士として鍛錬を行なってきた。

きっと華奢なエマよりも体力はある。


「騎士として鍛錬してたしね。

 新人騎士だったし、そりゃ最前線に出るよ。」


エマは私の言葉に不満そうな顔をした。


「まあ、エマの言いたい事はわかるな。

 剣を携えた聖女なんて前代未聞だろうし。」


そう言ったアルも苦笑を浮かべている。

確かに聖女らしくない事に自覚はある。

だがそれは仕方ないと思う、なにせ生活環境がこれまでの聖女達とは違うのだから。


「戦えるなら戦った方がいいでしょ?

 それにアルと一緒に戦う為に騎士になったんだから。」


私の言葉にアルが嬉しそうに微笑む。

だがそれはすぐに意地の悪いものへと変わった。


「コウが規格外なのはもう慣れるしかないからな。

 ただ、あまり張り切り過ぎるなよ?

 俺とエマの鍛錬にならないからな。」


「...努力します。」


「それとエマはもっと体力をつけろ。

 一日でそのへばり様だと、今後の魔王封印に行く時はもっと大変だぞ。」


「はぁい。」


エマは気の無い返事をした。

余程疲れていたようで、馬に乗ってるのがやっとといった感じだ。


私達は早急に宿を探すと、早々に休んだ。

明日も今日と同じように、魔物と戦いながらの移動になる。

体力回復はこれからの旅でも重要になる。

休めるうちに、十分に休んでおこう。

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