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聖女の衣装

荷物を置くとすぐに執務室へ向かった。

コンコンコンとノックすると、アルの声が聞こえる。

扉を開き中へ入るとアルは気怠そうに机に片肘を付いていた。


「疲れてる所を悪いな。

 帰って来たのがギリギリだった為、聖女降臨式が明日になってしまった。

 申し訳ない。」


「いえ、無理を言ってサクの救出に行ったのは私なので。」


「無事に連れて来れて良かったな。

 サクには今、客室で休んでもらっている。

 聖女偽称罪をこの国でどうするかは、父上と話してみないと何とも言えないが悪いようにはしない。」


この国でもサクは罪に問われてしまうかも知れない。

でも私にはアルの悪いようにはしないという言葉を信じる事しか出来なかった。

まさかデルヘンのように処刑になるようなことはないだろう。

アルは聖女について理解のある方だ。

この世界の勝手で連れて来られたサクに酷い事はしないと思う。

それに偽称罪についても、サクは召喚され本当に自分が聖女だと思っていた。

誰かを騙す目的ではなかった事をアルも理解している。


「お任せします。」


アルは私の言葉に頷き、本題に入った。


「明日の聖女降臨式だが、衣装はこちらで用意する。

 コウはそれを着て、謁見の間で国王と会う事になる。

 俺がエスコートをするから、何も心配は要らないがこの国の重鎮達が参加するからな。

 一応それを頭に入れておいてくれ。」


そこまで話すと部屋の扉がノックされた。

アルが返事をすると慌てた様子の侍女が入って来た。


「アルフォエル様!大変です!

 ...ああ、聖女様、ここにいらしたんですね。

 ちょうどよかった。」


「何があった?」


私が居てちょうどよかったと言うことは、明日の聖女降臨式の件だろうか?

侍女の慌て振りからすると、余程も事があったのだろう。


「あの...聖女様の衣装なんですが...ご用意出来ていないんです。」


「何!?」


侍女の言葉にアルが立ち上がる。

勢い良く立ち上がったせいで、椅子が後ろに大きな音を立てて倒れた。


「どう言う事だ!?

 その衣装は既にあっただろう!?」


「あの...それが...」


侍女は私の方をチラリと見ると、言い辛そうにしている。

だがそのままでは話が進まない。

侍女は申し訳無さそうに話を続けた。


「これまでの聖女様はその...小柄な方が多かったものですから...」


アルは目を瞬かせた。

ああそうか。

要は私がデカいから衣装が入らないと言う事か。

ここに来てまさか自分の長身が引っかかるとは思ってもみなかった。

聖女の衣装は本来、既に出来上がっているはずの物だった。


「あの、新調するのも間に合いませんし、サイズ直しも小さくするのは出来るんですが大きくするのはちょっと...」


アルの視線が私に刺さる。

...言いたい事ははっきりと言えばいい。

確かにと納得してるんでしょ?顔にはそう書いてある。

これまで聖女は私よりも小さな女性が多かったのだろう。

少し手直しをすれば大体着れるようになったのだ。


「だが聖女降臨式は明日だ。

 明日までに何とかしなくては。」


アルの言葉に私はふと思い出した。


「そういえば...私、持ってるかも知れません。」


「えっ?」


侍女の期待が込められた視線が向けられた。


「白っぽい衣装で大丈夫ですか?

 それなら私の持ってる衣装で何とかなるかも知れません。」


小百合のタンスに入っていた生地で作った女神の衣装を思い出す。

忙しくて暫くアイテムボックスに入れたままだったが、あれなら聖女の衣装として着れるのではないかと思った。


「ほっ、本当ですか!?

 良かった〜」


侍女が安心したようにヘロヘロとその場に座った。

よほど困っていたのだろう、自分のせいでここまで困らせていたのかと思うと逆に申し訳ない。


「では衣装は何とかなりそうか?」


「そうですね、ただ靴は無いのでお願いしたいのですが。」


私の言葉に侍女がシュビっと立ち上がる。


「靴は大丈夫です、ご準備出来ます!

 今からサイズさえ合わせれば、そのサイズの靴を用意しますので。

 聖女様、明日は着付けお手伝いをさせて頂きますのでお部屋に伺いますね。」


靴はどうにかなるようで安心した。

というか着付けを手伝うって、恥ずかしいから辞めて欲しいのだが。


「いや、あの自分で着れますので大丈夫です。」


「何を仰いますか。

 コルセットは自分では無理ですよ。

 明日、伺いますので。」


侍女はそれだけを言うと、アルに頭を下げて執務室を出て行く。

どうやらサイズを見る為、靴を持ってくるつもりらしい。

アルは女性の服はわからないと、我関せずだった。

コルセットとはあの締め付けるヤツの事だろうか。

昔観た映画で、アレの締め付けのせいで気を失った女性がいた気がする。

そんな物を明日、身に付けるのかと思うと恐怖でしかなかった。

何足も靴を持って再登場した侍女に、あれこれ靴を履かされながら何とか明日のコルセットを避ける方法を模索する。

だが何も打開策は浮かばなかった。

明日は諦めて、コルセットに締め付けられるしかないと言うことだろうか。

気が重い。

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