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この世界で生きて行く

最終話です

魔王は封印ではなく討伐された。

その事に、世界各国では喜びに沸き立った。

皆が勇者であるアルを英雄と呼び、同行者達を褒め称えた。

そして聖女である私を称賛した。


数週間に及ぶ祝いの後に、アルはベーマールの王太子となり私はアルの正式な婚約者となった。

体調が心配だったユリシアも、回復し私達を祝福してくれた。

ユリシアがデルヘンの悪霊に憑かれた者のようにならずに済んで、本当に良かったと思う。


ナイミルはやっと聖剣から解放されたので、天に召されるのかと思ったが私の中にある半分の魂と一つになったらしい。

レクスチェールの元に行かなくていいのかと尋ねた私に、ナイミルは不謹慎にもこう言った。


『3000年もの時を待ってくれたのだ。

 コウの寿命くらい待っていてくれる。』


と。

わたしが死ぬまでナイミルとレクスチェールが会えないのかと思うと、変なプレッシャーを感じるが私はまだ死ぬつもりはない。

2人には申し訳ないが、再会はまだ、待って欲しい所である。



それとアミーに憑依していた琴美は天に召された。

自然の理から外れ過ぎるのは良くないと言っていたが、ずっと研究していた黒い影正体もわかりそれも解決した。

正直、未練が消えたのが大きな原因だと思う。

それと琴美は私が一番最初の勇者だと知って、輪廻に憧れていたようだった。

自分も生まれ変わったら、そんな思いがあったのかも知れない。

同行者達全員で琴美の最後を見送ったが、案外呆気ないものだった。

悲しくはあるが、琴美が死んだのはもうずいぶん昔の話だ。

皆、なんとなくこんな日が来るのを覚悟していたのだろう。

琴美も、安らかな表情で天へと昇っていった。

琴美には生まれ変わっても幸せになって欲しい、そう思う。




空白になっていたデルヘンの国王は、協定国の話し合いで決められる事となった。

誰が国王になるか様々な意見が出されたようだが今回の魔王討伐の同行者から、選ぼうという話に落ち着いた。

しかし勇者のアルはベーマールの王太子だし、ヨルトも次期頭首だ。

エマにも次の総大司教という話も出ている。

ザイドとイリーゼには人族の国の王は無理だと断られ、残った人物は一人しか居なかった。

そう、ガロがデルヘンの国王に決まったのだ。

第二王子のガロはリセイアの国王にならなくていいらしい。

ガロも自分が国王になる日が来るとは思わなかったようで、とても焦っていた。

だが隣はベーマールだ。

困った時は力になるとアルに言われ、なんとか落ち着いたらしい。

ガロがデルヘン国王という事にも驚きだが、更に婚約者まで決まったと聞いた時は本当に驚いた。

しかもその相手も驚きだ。

ガロの婚約者はサクなのだ。


私を再召喚する為にベーマールにやって来たガロはサクと出会った。

そしてお互い、一目で恋に落ちたらしい。

王子に憧れていたサクがまさか本当の王子と恋に落ちるとは、世の中何が起こるかわからない。

まあ王子である期間は残り僅かだが、夢が叶ったのは喜ばしい事だろう。

...エリルの事はサクに内緒にしていた方がいいように思う。


しかしガロはデルヘン国王になる。

という事は、サクもデルヘンに行く事になるという事だ。

デルヘンにいい思い出のないサクに大丈夫かと聞いたら、サクは大丈夫だと笑って答えた。

処刑されようとして泣いていたサクはもう居ない。

強くなれとは言ったが、サクは本当に強くなった。

サクはこの世界でちゃんと自分の居場所を見つけた。

そんなサクならきっと幸せになれるだろう。

というか、ガロがちゃんと幸せにしないと私が許さない。



エマは今回の魔王討伐について、聖女の記録を書くと言っていた。

毎回ヴェルアリーグ教からの同行者が、聖女の記録を書いているらしくエマもそれに倣うそうだ。

しかしエマが書くとなると不安が生じる。

私の事を面白おかしく書くのではないかと心配だ。

書き終わった頃にでも、内容を確認しに行った方がいいかも知れない。




「そう言えばコウ。」


平和な世界になってから同行者達は皆、それぞれ自分の帰るべき場所に戻った。

私は今、アルと一緒にベーマールの城に居る。


「どうしたの?」


因みに今、私は騎士の格好をしていない。

ちゃんと女性物のドレスを着ている。

流石に王太子の婚約者が騎士の服のままでは、格好がつかない。

騎士の服は、隠れて着る事にしようと思っている。


「コウの本当の名前はキリュウ サクなのだろ?

 サク...と呼んだ方がいいか?」


そうアルに言われて、キョトンとしてしまった。

そういえば再召喚の時に、私の名前は知られたのだった。

しかしこっちの世界では、コウと呼ばれる事に慣れてしまっている。

というより、こっちの世界で生きて来たのはコウなのだ。


「コウのままでいいよ。」


笑顔でそう言うと、アルも笑顔を返した。


魔王は討伐され、もう復活する事はないだろう。

平和になったこの世界で、私はアルと共に生きて行く。

コウとして聖女として私はこれからもこの世界で生きて行く。




〜end〜

最後まで読んで頂きありがとうございました。

初めて書いた小説を完結させる事が出来て一安心です。

ブクマ、評価して下さった方々ありがとうございました。

とても励みになりました。

ここまで沢山の方の目に触れるとは思っていなかったので、とても嬉しく思います。


本編はこれで完結となります。

今後、その後の話を番外編として数話書きたいと思っています。

興味とお時間のある方は是非そちらも見て頂けたら嬉しいです。

更新がいつになるかは未定ですが、短い読み切りのような話になる予定です。


最後に本編完結に伴い、ブクマ解除される方も多いかと思います。

もしよろしければ最後に評価して頂けると嬉しく思います。


また新しい作品でお会いできる事を楽しみにしています。

本当にありがとうございました。

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