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眠る昔の聖女

『アミーがいつの間にか私より大きくなっちゃった。

 前は抱っこしてあげてたのに、もう出来ないや。

 なんか寂しいな...。』


アミーの成長と一緒に、アミーと小百合の仲のいい様子が日記から読み取れる。


「アミーは小百合さんが大好きだったんだね。」


私はそう言うとアミーに笑いかけた。

ノーラが居なくなって落ち込んでいた小百合が元気になった様で安心した。

その後の日記にも小百合とアミーがいつも一緒にいた様子が書かれていた。

日記の残りのページも少なくなって来た。

日記の中の小百合はもうおばあさんになっていた。


『自分の日記が読まれるのかと思うと、少し恥ずかしいですね。

 でもこれは読まれる前提で書いた日記です。

 この日記が読めたあなたは、未来の聖女でしょうか?

 私の日記が少しでもあなたの役に立てば、そう思いながら日記を書いていました。

 きっと私はもう長くは生きられない。

 アミーは今も元気にしていますか?

 きっとここに来ることが出来たあなたは、アミーに導かれたんでしょうね。

 あの子は賢い子です。

 きっとあなたのお役に立てたでしょう。

 最後に、私の書いた魔法の本は見ましたか?

 まだでしたら本棚に入ってますから、見てみてくださいね。

 そちらの本に詳細は書いてありますが、この小屋には魔法が掛けられています。

 状態保存、それから家の周りにも魔物除け、人払い、幻影の魔法。

 なのでここは人に見つからずにずっとこのままなのです。

 しかし困った事に、私が死んでしまってもこの家の周りでは土に帰ることも出来ないのです。

 暗く冷たい土の中でずっといるのは悲しいのです。

 ですが私はノーラやアミーとの思い出のこの家を離れたくありません。

 この家は未来の聖女であるあなたが使ってくれて構いません。

 ですが、私がこの家で眠る事も許して欲しいのです。

 未来の聖女よ、お願いしますね。』


日記の最後にはそう書かれていた。

小百合さんは亡くなってしまっていたのだ。

昨日まで誰かが住んでいた様なこの小屋は、何年間無人のままだったのだろう。

辺りを見渡してみると、本当に生活感のあるこの小屋の中は食料もそのままだった。

小百合さんはこの家で眠ると言っていたがどこにいるのだろうか。

キョロキョロを辺りを探してみても見つからない。

そんな私の様子をみたアミーが台所の隅に置いてある木箱をカリカリと引っ掻いた。


「ここに何かあるの?」


私はじゃがいもや玉ねぎが入った木箱を避ける。

そこの床には、人が一人通れる位の小さな扉があった。

その扉を持ち上げる様にして開ける。

するとそこには下へと伸びる階段が続いていた。

魔法の力によるものだろうか。

壁からぼんやりとした光が放たれ、中は少し明るい。

私はその階段を一歩一歩慎重に降りていった。

3階分位降りただろうか。

長い長い階段はマンションの外階段の様な作りになっていた。

最後まで降りきった所で目の前に現れたのは、またしても扉だった。

その扉のドアノブに手を掛け回すと、カチャリと音がして扉はスムーズに開いた。

中に入ると眩しい位の明かりに、思わず目を細める。

壁だけではなく天井からも光は降り注ぎ、そこはまるで晴れた日の外の様だった。

中に足を踏み入れ歩いて行くと、カツーンカツーンと足音が響いた。

中は広くバスケットコート2枚分はある、体育館の様だ。

奥にはガラスを隔てた一室があり、その中には小百合さんが眠っていた。

黒かったであろう髪は真っ白に染まってしまっている。

小百合さんの遺体を見ても、怖いとは思わなかった。

本当にただ眠っているだけ。

そんな風に見えた。

暗く冷たい所は嫌だと言っていた小百合さんらしい、これだけ明るい所なら小百合が悲しむことはないだろう。


「小百合さん、ありがとうございます。

 使わせていただきますね。」


私は偉大なる先駆者にお礼を言うと頭を下げた。

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