表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/141

昔の聖女の日記

私は小百合に同情しながら、日記の続きを読む事にした。

日記にはノーラニットが元冒険者で、今はここで狩人をしながら生活している事や彼が魔法を使えた事なども書いてあった。

そして小百合が魔法を教わった事も。


『何か聖女は魔法使えるらしくて教えて貰ったから、別な本に書いておくね〜。

 ...気が向いたら。』


と日記に書かれていたので、どこかに魔法の本があるのかも知れない。

小百合は毎日この日記を書いていたようだ。

日常の些細な事も日記に書いてある。


『今日は動物の捌き方を教わった。

 げーー気持ち悪いって思ったけど、ここで生きていく為には必要不可欠なんだよね。

 そんな訳で、教わった捌き方もレシピ本に書いておくよ!

 ...気が向いたら。』


こちらも小百合の気が向いたらレシピ本があるようだ。

後で探してみよう。


『ねぇ!ほんと!

 信じられない事が起きた!

 ノーラニットに告白された!

 どうしよう、すごく嬉しい!

 返事?もちろんOKしたよ!

 なんかノーラニットっていつも厳しいし、特に魔法を教わる時は。

 私になんか興味が無いって思っていたのに、ほんと信じられないよ。

 夢なら覚めないでほしい...。』


何ページも日記を読み進めると、小百合の乙女らしい日記を見つけた。

その前から小百合はノーラニットの事が気になっていたらしく、日記にはそれらしき事が所々に書いてあった。

私はなんだか恋愛小説を読んでいるような気分だったので、ノーラニットからの告白には私も嬉しくなった。

それからの小百合の日記にはノーラニットの事がノーラと略されて書いてあった。

きっと仲の良さからそう呼ぶ様になったのだろう。

それ以降の小百合の日記は主に惚気てばかりだった。

幸せが滲み出ている文面を私は微笑ましく思った。

そして羨ましいと。

残念ながら私には彼氏が出来た事がない。

モテない訳ではない。

ただ好意を寄せ手くれるのがほぼ女の子だっただけだ。

なんだか自分の恋愛経歴に虚しくなってきた。

自分もいつか小百合の様に好きな人が出来れば、そう願いつつページを捲って行った。


『ノーラが冒険者として旅に出た。

 なんで!?

 ノーラは冒険者を引退したって言ってたのに。

 ノーラはそれが使命だからって言ってたけど、わからないよ。

 この世界に来てずっと一緒だったノーラがいないなんて寂し過ぎるよ...。

 ノーラ、早く帰って来て...。』


小百合はその日記の後、毎日書き続けていた日記を書かなくなった。

日記もページが開いている。

白紙のページを1枚捲ると、そこには半年後の日付と日記の続きが書かれていた。


『どうしよう...。

 なんで??

 ノーラが帰って来ない。

 すぐに帰って来るって言ってたのに。

 もう半年だよ!?

 ノーラ...半年はすぐじゃ無いよ。

 ノーラに会いたい...。』


小百合の悲痛な胸の内が綴られている。

胸がギュッと締め付けられる。

小百合の涙の跡だろうか。

そのページの文字が滲んでいた。

それからまた、白紙を1枚挟んだ次の日記の日付は3年後だった。


『ノーラが帰って来ない。

 きっともう帰って来ないんだと思う。

 どんな事情なのかはわからない。

 でも私はノーラを信じてる。

 ノーラはきっと私を裏切らない。

 ノーラ、あなたのいないこの小屋は寂し過ぎるよ。』


3年もの間、小百合はたった一人でノーラを待っていた。

でもノーラはまだ帰って来ていない。

小百合は3年の月日を経て、その答えを見つけてしまったらしい。

小百合の日記はそれからは毎日ではなく、たまに書く位の物となった。


『今日、森で狩りをしていたらケガをしたサーベルタイガーの赤ちゃんを見つけた。

 自然界でのケガは命に直結してしまう。

 ケガをしたこの子はきっと捨てられたんだ。

 私は連れて帰って手当てをした。

 ミルクを上げると、ペロペロと小さな舌で飲んでいる。

 かわいい!

 そうだ、名前を付けてあげようかな?

 う〜〜ん。

 日本にいた時の親友の名前をつけよう!

 愛由美(あゆみ)

 あっでも万が一でもバレたら怒られそうだから、アミーにしよう!

 アミー、よろしくね!』


「お前の名前はアミーって言うんだね。」


私がサーベルタイガーに向かって話すと、サーベルタイガーは目を細めた。

久々に名前を呼ばれて嬉しかったのかも知れない。

日記を読み進めて行ったが、今度はそれが成長日記の様に変わっていった。


『アミーが初めて、自分で獲物を獲ったの!

 捕まえたのが子ウサギだったから捕まえられたのかも知れないけど、凄い成長だと思わない!?

 あっ、でも子ウサギはダメって教えないと。

 なんの動物でも、狩るなら大人にしないと。

 子供ばかりを捕まえてたら、いつか居なくなっちゃうもんね。

 ノーラもそう言ってたし。

 アミー、今度はちゃんと大人のウサギを狙うんだぞ!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ