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森の中の小屋

森の中にある小さな小屋。

少しだけひらけた所にあるそれは日の光を受けて、その存在を強くしていた。

サーベルタイガーは小屋の前までゆっくり歩くと、そのまま足を止める。

きっとここがサーベルタイガーの目的地だったのだろう。

私はサーベルタイガーから降りると扉の前に立った。

ここには誰が住んで居るのだろうか。

私は戸惑い目をサーベルタイガーに向ける。

しかしサーベルタイガーは大丈夫だといった感じの視線を向けるだけで、動こうとしない。

私は意を決して扉を叩いた。


コンコンコン。


小屋の中の気配を探ってみるも、誰も出て来ない。


コンコンコン。


「どなたかいらっしゃいますか?」


私はそう言ってもう一度ノックしたが、やはり人が出て来る事は無かった。

困った様な視線をもう一度サーベルタイガーに向けると、サーベルタイガーは私の背中を鼻で押した。


「入っていいの?」


そう言った私の背中をサーベルタイガーは再び押す。

私はドアノブに手を掛けると、静かに回した。



窓から入る日の光で中は明るかった。


「おじゃまします...。」


私は小声でそういうと、中へ一歩足を進めた。

キッチンにダイニングテーブル。

ベッドやタンス、クローゼットも玄関から一歩入ったそこから見える。

奥の扉の先はお風呂やトイレだろうか?

外から見て、小さな小屋だとは思ったがどうやらワンルームらしい。

部屋は区切られておらず、全てが一室にあった。

しかし生活に必要な物は全て揃っているであろう、この小屋の中はどこか温かみがあった。


「どなたかいらっしゃいますか?」


先程と同じ事を言いながら、小屋の中をゆっくりと見て回る。

すると私の後から入って来たサーベルタイガーが、ベッド脇のサイドテーブルへ向かって行った。

私がそれに続き、サイドテーブルを見ると一冊の本の様な物が置いてあるのに気付いた。


「読めってこと?」


私はサーベルタイガーに促されるままにその本を手に取り、ページを開いた。

すると私は目を見開く。

そこに書いてあったのは日本語だった。



『これを読んでるって事は日本人かな?

 私の名前は 風早(かぜはや) 小百合(さゆり)、この世界へは聖女として召喚されたようです。』


「昔の聖女様?」


どうやらこれは、私よりも前に召喚された聖女の日記らしい。


『正直、聖女が何なのかよく分からないし特に聖女として何かした訳でもないけどね。

 私を召喚したのはこの国の魔法使い?魔道士?よく分からないけどそういう人達らしいんだよね。

 何か本当に聖女を呼べるか、力試しをしていたみたい。

 巻き込まれるこっちは迷惑だから、ほんと辞めてほしかったわ。

 しかも実際召喚したら、何か悲鳴上げて逃げるし、私放置だし。

 無責任にも程があるよね!

 で、どうしようか森の中を彷徨っていた私を見つけたのが、ノーラニットだったの。

 こんな所でどうしたんだ?って聞かれたからよく分からない内にこんな世界に連れて来られて、しかも置き去りにされたって言ってやったわ。

 あんたの世界ではこれが常識なのかっても言ってやった。

 そしたら彼、すまなかったって謝って来たの。

 良かったら自分の所に来ないかっても言われたわ。

 正直、初めて会った男に着いて行くのも気が引けたけど、ここで一人で居てもしょうがないって思ってついて行く事にしたの。

 そして着いたのがこの小屋だったって訳。』


...力試しの召喚で置き去りにとは、昔の聖女も大変な目に合ったようだ。

そう考えると私の方がまだマシだったのだろうか。

いやでも召喚後すぐに殺されかけたし、何とも言えない。

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