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初めての野宿

サーベルタイガーの背中に乗せてもらっての移動は大分早かった。

それはもう馬車などとは比べものにならないだろう程に。

日が沈み、辺りが真っ暗になった頃にサーベルタイガーはその歩みを止める。


「今日はここで休もうか。」


森の中、木々が生い茂り月の光さえ僅かにしか届いていない。

しかしその暗い中を移動していた為、目は慣れて近くなら見える位ではあった。

サーベルタイガーから降りる。

意外と足も腰も痛まなかったのは気を遣ってゆっくり進んでくれたのと、見た目よりも柔らかかったサーベルタイガーの毛のおかげだろう。

焚き火をするでもなく、その場に座って休む事にする。

私はアイテムボックスから食料を取り出した。


「お前は何を食べるんだろう?」


私が再びアイテムボックスを漁るのをみて、サーベルタイガーは私の側をそっと離れた。

暗闇の中でたった一人取り残された事に淋しさを感じたが、きっとあの子にも考えがあるのだろう。

それにあの子は私の言っている事を理解している様に思えた。

心細さはあるがお腹も減ったし食事を済ませる事にする。

包み紙を開くと私はサンドイッチのような物を食べ始めた。


城に居た時の食事は、私には量が多すぎた。

男だと思われていたからだろうが、女の私にはとても食べ切ることは出来なかった。

しかし残してしまう事によって、男である事を疑われては困る。

私は主食として出されているパンに少量のサラダと肉若くは魚などを挟んだ簡易版サンドイッチを作り、紙に包んではアイテムボックスにしまう日々を過ごしていた。

流石にスープなどは仕舞うのに不便だった為、比較的仕舞い安いサンドイッチを作ったのだ。

それを食べる日が来るとは思っていなかったが、今はそれを美味しく頂いている。

何が役に立つはわからないものだな、と思いつつ食事を進めた。

アイテムボックスには時間の経過が無いようだ。

当然のようにアイテムボックスに食料を仕舞っていたが、時間経過があったらと思うとゾッとする。

その場合、私のアイテムボックスの中は大変な事になっていたであろう。

今後はもっと、事前に確認しなくてはと反省した。


私が食事を終えた頃にサーベルタイガーは私の元に戻って来た。

その口にはウサギとそれと同じ位の大きさの鳥を咥えて居る。

どうやら自分で食料を調達をして来たようだ。

サーベルタイガーは私の隣の座るとバリボリと音を立てながらそれらを食べていく。

生きる為に必要な事だとわかっていても、先程まで生きていたであろうその姿のままの物が食べられているのはなんと言うか...グロい。

私は先に食事が終わっててよかったと思いながら、サーベルタイガーの食事シーンから目を逸らした。


互いにお腹が膨れると、後は寝るだけだった。

こんな外でしかも夜に風呂や水浴びなどが出来る筈もなく、私は少し肌寒さを感じサーベルタイガーへ寄り添い座った。

サーベルタイガーはそんな私を包むように丸くなる。

全身が毛皮で覆われ更にサーベルタイガーの体温が伝わってきて暖かい。

私はサーベルタイガーへ寄り掛かると目を閉じた。




日の光が閉ざしている瞼に降り注がれるのと同時に、耳には鳥のさえずりが聞こえる。

私はゆっくり目を開けると、自分が置かれている状況を思い出した。

もうここは日本でもないし、城のベッドでもない。

私がモゾリと動くと私が起きた事に気づいたのだろう、サーベルタイガーは静かに身体を伸ばした。

先に起きていただろうに、私が目を覚ますまでそのままにしててくれたこの子は本当に優しいと思う。

私はグッと拳を上に突き出すように伸びをすると、おはようと声を掛けた。

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