ハトは大いに頼りになる。
目の前に広がる光景は目指していた大きな街ではなく、柵に囲まれた小さな村。
(まあ、仕方ねえか。今は贅沢なんて言ってられねえ。とりあえず、村に入ってこの世界の情報を得よう)
目の前の柵を越え村に入ろうと思い、柵に手をかけると、
「いでっ!!」
突然、柵に触れた手に鋭い痛みが走る。
(なんだ!? 静電気か? 木で静電気なんて走んのかよ!?)
ゴーン、ゴーン
村のどこからか鐘を打つ音がする。
「南東の方向、結界に反応あり!! 兵士達はすぐに集まれ!!」
村のどこからかそんな叫び声が聞こえる。
(何事だ? 南東ってどっちだ?
っていうかこの世界でも方角っていう概念があるんだな。ん? 結界?)
陽太はまさかと思い、先ほど触れた柵をよく見てみる。
そこには、何か文字が書かれた短冊のような紙が一定の間隔を空けて貼ってあった。
バタバタバタ!!
複数の足音を立てて、かなり汚れてほぼ茶色だがうっすらと銀色の部分が見える鎧を着て陽太の背丈くらいの槍をそれぞれの手に持った男達が村の中心の方から現れ、こちらへ近づいてくる。
「何者だ貴様!!」
男達の1人が集団の前に出て、陽太に向かって叫ぶ。
「怪しいものではないんです!!」
陽太は慌てて両手を頭の高さまで上げて答える。
「そんな嘘信じる訳ないだろ!!」
そう声が上がったかと思えば男達は全員持っていた槍の先を陽太に向けた。
(やばいって!! 早速ゲームオーバーなんですけど!?)
だんだんと男達は近づいてくる。絶体絶命、ここであえなく異世界生活終了かと陽太が諦めているとその時、今まで陽太の頭の上で全く動かなかったホワンが突如として飛び立ち、男たちの頭上を飛び回り始めた。
「うおっ!?」
「なんだなんだ!?」
「クソ、こいつ!!」
突然飛び回り始めた謎の生物に男達は混乱する。
「今のうちに!! 逃げる!!」
陽太は森へと駆け戻った。