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異世界転移のお供には、スポドリに(笑)ハトに。ウインドカッター!?  作者: 西山景山
第1章 異世界転移のお供には、スポドリに(笑)ハトに。ウインドカッター!?
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うそ、だろ。


 村の警備兵たちから命からがら逃げてきた陽介が森の中でも(ひら)けた場所に来て目に入ったのは二人の男が向かい合って睨み合っている光景だった。といっても片方は小学生くらいなのだが。

 陽太がその殺伐とした空間に足を踏み入れるとすぐさま四つの目がこちらを向いた。その後、暫く沈黙の時が流れる。

 その沈黙を破ったのは、


「えーっと。俺の名前は佐々木陽介だ。君たちは?」

 

 とりあえず初めは自己紹介、というテンプレを使用した陽太だった。


「僕は、クロ、おっと、クロ、そう、クロードだ。クロード。よろしくササキ」


 次に声を発したのは会社から帰ってきたまんまの黒スーツを着ている陽太よりも、真っ黒な格好をしている男。

 顔はフードで隠れていて声や体格からかろうじて二十歳くらいの男性だと推測される。

 そんな若い男は自分の名前なのにまるでついさっきまで忘れていたかのような感じで名乗った。

 その不自然な仕草に疑いの目を向ける者が一人。


「明らかに偽名だろ。今考えましたって顔に書いてるぞ」


 さっきまでクロード(?)と口論をしていた少年だ。


「いやフードのせいで顔見えなくないか?」

「おっさんは黙ってろ!!」

「す、すみません」


 場違いなツッコミをして二回りは年下の少年に怒鳴られるおっさん。


「まあまあ落ち着いてくれよ。偽名なんかじゃない。最近はあまり他者と話す機会が無かったから名前を名乗るという行為が久しぶりでね。少し言葉に詰まっただけだよ」

「どーだか」


 それでも信じようとはしない少年をクロードは見て聞く。


「ところで、君の名は?」

「あんたに言う義理はないね」


「じゃあ俺に」

「だからおっさんは黙ってろ!!」

「はぃ」


 元いた世界では小学生くらいの年の少年に二度も怒鳴られるおっさん。


「まあまあ落ち着きたまえ」


「てめえが原因だろ!!」


 また険悪な雰囲気になりそうだったので、話を変えようと陽太は気になっていたことを聞く。


「ところで、一体何があったんだ?」


「何があったというわけでも無いんだ。ただここが危ないから早く立ち去ったほうがいいと言っているだけなんだよ」


「こんな何もない辺境の森にいる黒ずくめの怪しい奴の方がよっぽど危険だ!!」


「まあ確かに」


「あんたもだよ!!」


「はい」


「まあまあ落ち着きたまえ」


「お前は落ち着きすぎだ!!」



 ......閑話休題。



「で、おっさん。あんたは、何モンなんだ?」


「あ、えーっと、俺は」


 陽太は考える。

 さて、なんと答えるべきか。果たして素直に異世界から来ましたと言って信じてもらえるものなのか。いや無理だろう。ならば、ここは無難に。


「実は俺、今までの記憶がなくて」


 記憶喪失設定。


「名前は覚えてるのに?」


 さっき名乗っていたことを陽介は失念していた。慌てて取り繕う。


「な、名前だけ覚えてたんだよ」


 ジー。


 さっそく疑いの目を向けられる陽太。


「そ、それより!! 二人について聞かせてもらっても?」


 わざとらしくごまかした。


「僕はただの通りすがりの魔法使いさ」


 なんか仮面のバイク乗りにも同じようなことを言ってた奴がいたな、と陽介は思った。


「こんな辺境の地に何の用で来てたんだよ」


 不機嫌そうに聞くのは少年。


「特に用があったというわけではないいんだけどね。ただフラフラと飛んでいたらここに来た。ただそれだけだよ」


 そのクロードの言葉に気になることがあった陽介はすぐさま問う。


「飛んできた? もしかして飛行魔法が使えるのか?」


「まあ、そんなとこだね」


「フラフラと飛んできた、ね、ここはそんな感じでお手軽に来るような場所じゃないと思うけどな」


「ほんの偶然さ。もしかしたら運命かもしれない。こうして君たちに出会えたのも」


「そんな運命ごめんだね」


「あのー、ちょっといいか?」


 再び気になったことを質問しようと話に入る陽介。


「なんだい?」


「そのさっきから辺境だなんだとか言ってるけどここってそんなド田舎って感じなのか?」


「ドイナカ?(なんだそれは。田舎か田舎のことなのか? ドとはなんだドとは!?)」


 何やら頭を抱えて悩み出したクロードを他所に少年が答える。


「なんだよドイナカって」


 どうやらド田舎という言葉は通じないらしい。意味がわからないだけであそこまで過剰な反応をするクロードもおかしいのだが。


「あー、 えっとすんごい田舎ってことだ。あ、田舎が分からない感じか?」


「分かる」


 即答する不機嫌な少年。


「うんうん分かるよ分かる。いやー、ド田舎なんて聞いたことなかったなー、ははは」


 奇妙なクロード。


「そんな変な言葉知ってるみたいだけどあんたどこの国のやつだ? ビグラドのやつじゃねえだろ」


 少年は陽介にそんなことを聞く。普通にそんなことを聞いてくるあたり、記憶喪失は信用されていないようだ。


「ビグラド? もしかして、ここはその国の領地なのか?」


「はあ。そんなんも知らねえのかよ」


「ご、ごめんなさい」


「(ここはビグラドなのか。確かクルド王ってのが治めてたっけな。)」


 なんか呟いてるクロード。


「まあいいや。あんたらとりあえず村に来い。話はそっからだ。クソッ、もう村には戻らねえと思ったのによ」


「なんだい? 家出でもしてきたのかい?」


「家出じゃねえ!! 旅立ちだ!!」


「旅立ちって。また特殊な言い回しだな」


「旅立ちかー、いいねぇ。」


 反抗期真っ盛りの少年を温かい目で見る男2人。その時、


 バサッ!!


「「!?」」


 陽介がやってきた方からホワンがやってきた。どうやら村の警備兵からは逃れられたようだ。陽太の肩にとまろうと近づいてきたホワン。だったのだが。


「お? ホワ「漆黒の手」ン?」


 次の瞬間、ホワンは呑まれた。地面から現れた謎の黒い手のようなものに呑まれた。


「は? は? は?」


「大丈夫でしたか!? 陽介」


 本当に心配そうに声をかけるクロード。


「何、今、何が起きたんだ。なんで、ホワンが、え」


 だが陽介の耳には届かない。



















 


 








『"オトモ"、"白い鳩"の消失を確認』










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