黒ずくめの男
「何者だお前!!」
森の中、何かに向かって叫ぶ少年の名は、ソラト・ヤーレン。アリド村村長カイヌ・ヤーレンの一人息子である。ソラトが睨む先にいたのは、全身黒ずくめの男。
「決して怪しい者ではないんだ。ただここにいると危ないと言ってるだけなんだよ。今すぐここから離れた方がいい」
そう忠告する男。だがその忠告はソラトには届かない。
「どっからどう見ても怪しいだろ!! なんでそんな全身真っ黒な格好をしてるんだよ!?」
「これは……。えっと、そう。今の流行なんだよ。僕の故郷ではかなり流行ってるんだよ。全身真っ黒コーデ」
明らかに今思いついたであろうことを言う男を信用できるはずもなく。
「そんなわけないだろ!! この大陸のどこに真っ黒コーデが流行ってる国や村があるんだよ!?」
ソラトがさらに言及したその時、
ガサガサ!!
「「!?」」
突然草むらをかき分けて何かが近づいてくる音がした。
「はあ、はあ、はあ。疲れたーー!! ん?」
そこから出てきたのは真っ黒なスーツを着た男、佐々木陽太であった。
「ほら、流行ってるだろ?」
陽太を指差し、黒ずくめの男は言った。