さいはての地に蝶を夢む
かくも寂しき東の果てに
などて君は赴きて
君を育てし父母の
ただ誓いてし恋人の
待つ幾年を知りもせで
熱き血潮を捧げたる
吾が心はあくがれて
彼の銀の水底の
貝の黙に君を泣く
彼の荒野の半日花の
蝶の夢幻に君を知る
ある筈もなき青筋鳳蝶
背に乗せたる勾玉の
移らふことなき貌に
宿せし日々のいたはしさ
届く影のその横に
女の一人もあらんをば
泥のひとつもなかりせば
ああなどて君は赴きて
応う言葉を知りもせで
熱き血潮を捧げたる
まだみあはらぬ君を待ちて
老いたる吾が身も忘れきて
たうに失くした両の目は
さいはての地に蝶を夢む