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4 俺の名を呼ぶ声

 壁際に立ち改札口を通り抜ける女の子達を必死に確認していると、「あ~!! 慶一くんだ」と言う甘ったるいような声で俺の名前を呼ぶ女の子達が現れた。


「え~っと、誰?」


「それマジで言ってんの? 超ヒドくな~い?」


 いかにもバカっぽい言葉使いと派手なメイク。


 鼻にツンと来る強い香水の匂いで、俺は記憶の片隅にあった出来事を思い出した。


「あっ 聖が言ってた子か」


「えっ 聖くんが奈美の事何て言ってたの?」


「いや、別に......ってか、今人探してて忙しいんだよね」


「え~!! 慶一くん冷たい。連絡先教えてって言っても教えてくれないし。

 奈美、連絡先教えてもらえなかったの初めてだったから、超ショックだったんだけど」


【くっそ、うるせぇな。お前らがいたら彼女見つけにくいんだよ】


 舌打ちをして思い切り不機嫌な顔を見せた時、頭の中で【すず、すず】と彼女を呼ぶ声が聞こえ、キョロキョロと辺りを見回すと改札口を通り抜けるあの女の子を見つけた。


 しかしその傍には、あの彼氏らしき男の姿も。


 彼女が一人じゃなくても話しかけるつもりでいたのに、一瞬の躊躇いが俺の足を強張らせる。


 その間も興味のない事を話しかけて、やたらと俺の体に触れてくる女の子達。


 視線の先にはずっと会いたかった彼女がいるのに、どうして俺は何も出来ないのだろう。


 段々と遠ざかっていく彼女の後姿。


「ちょっと! どこ見てるの? 慶一くん」


 バカ女が俺の視線を遮った瞬間、俺はあの女の子の元へと行こうとした。


 しかし、俺の腕を掴んで「まだ話終わってなぁ~い」拗ねたような表情を見せるバカ女。


「ちょっ 離してくんね? 急ぐんだよ。馴れ馴れしくすんな!」


 女の子たちを怒鳴りつけ、俺は彼女が向かったホームに続く階段を駆け上がった。


 しかし階段を上りきったと同時に閉まる電車のドア。


 ドア付近に立っていた彼女を見つけ駆け寄ると、キョロキョロと辺りを見回し俺に気付いた彼女が驚いたような表情をしながらドアに手をついた。


「すず!」


 思わず彼女の名前を叫ぶ俺を置いて、動き出す電車。


 スローモーションの映像を見ているように、ゆっくりと離れていく二人の距離。


 見詰め合った視線は距離に邪魔されて、彼女はまた俺の視界からいなくなった。


「ちくしょぅ!」


 直ぐに彼女を追うことが出来なかった自分への苛立ちをホームの柱にぶつけ、それと同時に何故『すず』と言う夢の中の女の子の名前を叫んだのか自分でも分からず戸惑った。


【あの子の名前が『すず』かどうかも分からないのに、俺は何をやってんだ】


 でも、きっと彼女も何かを感じてる。


 説明出来ない感情を抱えているのは、きっと俺だけじゃない。


 俺を見つめた彼女の瞳がそう言ってる気がしたんだ。





 次の日の朝、俺はいつもより1時間早く起きて、彼女を待つ為に駅に向かった。


 でも、今日俺が彼女を待つのはいつもの駅じゃない。


 彼女の学校がある最寄り駅だ。


【この駅で待てば、きっと彼女に会える】


 しかしそう思った俺の考えは覆され、また今日も彼女に会うことは出来なかった。


【どうすれば彼女に会えるんだ。何で彼女は現れないんだ】


 1時間目の授業ギリギリで教室に滑り込み「お前、この時間まで彼女待ってたのかよ」呆れ顔で問いかけてくる聖に「彼女の高校がある駅で待ってた」俺は、溜息混じりにそう答えた。


「でも、会えなかったんだ?」


「でも俺は探すよ。昨日はもう少しの所で会えそうだったんだ。だから俺は諦めない」


「お前のその強い気持ちは何処から来んの?」


「何処からだろうな」


【そんなの俺が知りてぇよ】


 心の中でそう呟いた時、【けい】俺の名前を呼ぶ女性の優しい声が聞こえた。





 そして彼女を見つけられないまま訪れた金曜日の朝。


 この3日間、俺は朝も放課後もあの駅で彼女が現れるのを待っていた。


 しかし彼女の姿を見つけることは出来ず、今日も駄目なのかも知れないと思いながら改札口付近の壁にもたれ掛かっている。


【今から急いでも学校間に合わねぇな】


 腕時計で時間を確認し、もたれ掛かった体を起こした時、俺はホームの階段を一人下りてくる彼女の姿を見つけた。


【すず】


 頭の中の声に背中を押されるように、彼女の下へ近づく。


 彼女はキョロキョロと辺りを見回し、俺に気が付くと驚いた表情を見せながらゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。


 やっと彼女に会えたのに、それなのに何て声を掛けていいのか分からない。


 見詰め合ったまま近づいていく互いの距離。


 彼女の前で歩みを止めると「どうしてココにあなたがいるの?」そう問いかけられた。


 だから俺は答えたんだ。


「もう一度、君に会いたかったから」



少しでも面白い、続いが気になると思ってくれた方は


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その他に「私はまだ恋を知らない」という連載小説も書いています。

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