表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

29 エッチな彼女

本日は、最終回までUPします。

「俺、なんで怒られてんの? 何かしたか?」


 状況が飲み込めずアタフタとする幼馴染に俺は「気にしなくても大丈夫だよ」そう声を掛けた。


「なんで鈴音の機嫌悪いんだ?」


「さぁ 俺にも分かんないんだけどね」


「鈴音 我がままばっかり言ってると、すぐにフラれんぞ」


 彼が頭をポリポリと掻きながら呟くと、すずは幼馴染の顔をジッと見詰め問いかけた。


「それって慶を認めたって事......だよね?」


「そんな事言ってねぇだろ」


「だってフラレないように我がまま言うなって事は、そうじゃないの?」


「ちげぇよ。......お前がまた食べれなくなるの心配しただけだろ」


 彼は取り繕うようにそう告げると、手にしていたケーキの箱を突き出した。


「これなら食べれんじゃねぇの」


「あっ BONのケーキだ!」


「好きだろ?」


「うん、大好き! でも......ママに頼んじゃったよ」


 当たり前のように、すずの好きなモノを買ってくる幼馴染。


 俺の知らない彼女の事を、彼はたくさん知っている。


 一緒に過ごした時間が違い過ぎるのだから、仕方ないって分かってる。


 だけど俺は、それが悔しかった。


「マジで? おばさんに悪い事したかなぁ」


 困ったように零す幼馴染からケーキの箱を受け取ると「両方食べるから平気」すずはそう言って微笑んだ。


「それは食い過ぎだろ」


 幼馴染の言葉を聞き流し「慶も食べるよね?」傍で疎外感を感じていた俺に問いかけてくるすず。


「え?」


「慶も食べるでしょ? ケーキ嫌い?」


「あぁ、食べる。好き」


「......どうしたの? 慶、変だよ?」


「大丈夫。何でもないよ。......大丈夫!」


 俺は自分に言い聞かせるようにそう答え、作り笑顔で彼女の方を見た。すると......


「やっぱり、変だよ」


 すずは俺をジッと見詰め「どうしたの?」心配そうに優しい声で問いかけてくる。


「また気分悪くなった?」


「そんな事ないよ。お前に心配されてどうすんだよ」


 息を漏らせて笑うと「お前らの世界作んな!」幼馴染が呆れた顔で文句を口にした。


「雄ちゃんいたんだっけ?」


「お前ねぇ、そんな事言う奴にはケーキやんねぇぞ」


 意地悪く笑うすずの頭をコツンと叩くと「お皿とフォーク持ってくるね」すずはケーキをテーブルの上に置いて部屋を出ていった。


 幼馴染と二人きり。


 気まずい空気の中黙って床に腰を下ろす俺に「今度こそ、ちゃんとあいつの事守れんだろうな」突然そう問いかけてくる幼馴染。


「あぁ 約束する」


「今度約束を破ったら、絶対にお前を許さないからな」


 真っ直ぐに見つめてくる眼差しに俺は「分かってる」と返事をし「お前はそれでいいのか?」と聞き返した。


「どう言う意味だ?」


「すずの事、すげぇ大事に思ってるみたいだから。

 その......なんて言うか」


 言葉を濁すと察しのついた幼馴染はぽつりと呟く。


「あいつは妹みたいなものだから。今は......だけどな」


「やっぱり『今は』なんだ」


「何か聞いてんのか?」


「子供の頃、プロポーズされたって事くらい?」


「なんであいつはそんな話してんだよ」


 バツが悪そうにしかめっ面の幼馴染は「お前に分かるか? 一世一代の決心してプロポーズしたのに、夢に出てくる男の子と結婚するから無理って言われたあの時の俺の気持ちが」溜息を漏らしてそう呟いた。


「こいつ何言ってんだ? って思ったよ。

 だけど何年経っても変わらないあいつ気持ちをずっと傍で見てきたんだ。

 もう認めるしか、見守るしかなかったんだよ」


「なのに現れた男が俺みたいなチャラチャラした奴だったと......」


「そうだよ。ふざけんなって思うだろ」


「思うなよ。確かに見た目はチャラチャラして見えるかもしんねぇけど、そんないい加減じゃねぇぞ。

 俺だって、ずっとすずを探してたんだから」


「お前ら変だな。あいつに説明されたけど全然意味わかんねぇよ。

 前世ってなんだよ。俺にはそんな記憶ねぇぞ」


 まぁ、それが普通だろうな。


 俺達だって未だに、不思議な感覚に戸惑うんだから。


 分かれって言う方が無理なのかもしれない。


「俺はこれからだって兄として、あいつを見守っていく。

 それだけは言っとくからな」


 俺には幼馴染の言葉が宣戦布告のように聞こえた。


【絶対にこいつにだけは負けねぇ】


 心の中で拳を握りながら「お前の心配はもういらねぇよ」そう言って笑ってやった。


「って言うか、お前って呼ぶなって昨日言っただろ。

 俺はお前より2歳も年上なんだよ」


「お前だってお前って言うなよ」


「俺は年上だからいいんだよ」


「よくねぇだろうが」


 そんな言い合いをしていると「どうでもいい事でケンカしないでよ」ドアを開き部屋に入ってきたすずが呆れた顔で俺達を叱った。


「仲がいいのか、悪いのかわかんない。

 雄ちゃん座って。ケーキ一緒に食べよ」


 お皿とフォーク、そしてジュースを乗せたお盆をテーブルに置きながら彼女が告げると「自分で食べるために持ってきた訳じゃないからいい。二人で食え」そう言ってあいつは部屋を出て行った。


「雄ちゃんと何話してたの?」


「別に話す事なんてねぇよ」


「そう?」


 すずは隣に座ると「雄ちゃん帰ったよ。続き......する?」と俺に問いかけてくる。


「今日はしない。あいつが来てよかったよ。

 俺、後悔するとこだったわ」


「後悔、するの?」


 彼女の表情が明らかに曇った。


「すずが大事だから、今日はダメ」


「今日は?」


「そう、今日は。だってアレ持ってない」


「......アレ?」


「すずを大事にするって事は、そういうことも含めてだろ?

 好きだからこそ、ちゃんとしなきゃ」


「慶」


 甘えた声で俺の名前を呟く彼女そっと包み込むと「次はしようね」すずはそう言ってギュッと俺を抱きしめた。


「すずのエッチ!」


「いいの。慶にだけだから、いいの」


 他の誰も知らない、エッチな彼女。


 俺だけの可愛い小悪魔は、俺の腕の中でキスをせがん目を伏せた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ