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侯爵令嬢ですが、家を継ぐので婚約破棄しないといけないのに殿下が同意してくれません

番外編・侯爵令嬢ですが、家を継ぐから婚約破棄しないといけないのに殿下が同意してくれません

作者: 朱居とんぼ

『侯爵令嬢ですが、家を継ぐので婚約破棄したいのに殿下が同意してくれません』


https://ncode.syosetu.com/n1303fp/


の番外編です。

完結後も、本編の感想、ブックマークと評価をありがとうございました。



 レミリアは悩んでいた。今度婿入りしてくる元王弟様の処遇についてだ。


「例えば。食事の際の席順です。通常、当主が上座につくものですけど、殿下は王籍から出られたとはいえ、元王族で。いくらなんでも私の下座に座らせるわけにはいきませんよね?」


 王侯貴族の結婚は、家と家との契約だ。

 事前に両家で嫁の権利、婿の権利などを取り決め、書面にしなくてはならない。


 新調するリネンやカトラリーにつける元殿下の紋はどうするか、ラヴィルが使うことになる主寝室の内装、他にも式を挙げる聖堂の格式はどうしたらいいか、招待客の数は王族に準ずるのか、それとも侯爵家の格式でやってしまっていいいのか。いろいろ考えることがありすぎて頭が破裂しそうだ。


 何しろ前代未聞の男性王族の降嫁、いや、降婿。しかも王籍離脱済み。

 今後、こういった王子が出た場合、カストロフ家の対応が前例となり、皆が倣うことになってしまう。後世の人たちに笑われないよう、ここはきちんとしたいところだ。


 レミリアはせっせと王宮の担当者の元へ通い、リヒャルト陛下に許可をもらった王室書庫で埃まみれになって参考になりそうな前例を探す。


 ストレスで胃が痛み、寝不足で顔に消えないクマができてきた。

 見かねたレオが、皆を代表して進言する。


「お嬢、一人で調べるのはよくないっすよ。結婚って二人でするものでしょう? なら、準備だって二人ですべきでしょう」

「そうだよな、こう、二人でいちゃいちゃしながら式の衣装とか決めたり、下見に行ったり」

「殿下を蚊帳の外にしたら、また拗ねますよ、あの方は」


 言われてみればそうだ。

 彼は完璧主義者だし、事前にいろいろ用意するタイプだ。きっと希望はあるだろう。引継ぎなどがあって忙しそうだと遠慮していたが、当人がどういった待遇を望んでいるか、しっかり聞いておいた方がいい。

 レミリアはさっそく面会許可を申請した。


「殿下はどう思われます?」


 相談を受けて、ラヴィルは遠い目になった。


(いや、他に悩むところはあるだろう……)


 愛する人とやっと結ばれることになった令嬢なら。

 初々しく頬を染めながら、幸せいっぱいな結婚式のことやその後の甘い生活のこと、いずれは生まれる二人の子どもたちのこと。それらを恥ずかしげに、だが嬉しそうに、夢見る瞳で語ってくれるものではないか?


 それが無理でも百歩譲って、当日の二人の衣装はどうするか、お揃いのデザインにしようか、聖堂の飾りつけは、と、もう少しロマンチックな話題だってあるだろう。


 なのに。王都へ戻ってなかなか会えなかった彼女が、やっと自分から会いたいと言ってくれたのに。第一声がこれかとうめきたくなる。慎重に人払いをして、彼女の好きなお茶なども用意して、かなり期待して待っていたと言うのに、これでは自分が可哀そうだ。


「……頭が痛いのはこちらだ」

「あ、殿下もそう思われますか。やってみると大変ですね、結婚って。代替わり業務より神経を使います」


 相変わらずの真剣なすれ違い発言に、ラヴィルはさらに頭を抱えたくなる。

 が、ここでおとなしく受け身の体勢でいては進展がない。


 ラヴィルは立ち上がると、ぐるりとテーブルを回って、レミリアの隣に腰を下ろした。


「で、殿下?」

「こら、逃げるな。結婚すればこれが俺たちの普通の距離になるんだぞ」


 彼女の腰に腕を回し、逃げられないようにしてから続ける。


「こういうことは現地で実際に生活してみないとわからない。次々ふぐあいが出てくるのが実際というものだ。事前にすべて決めることなど無理だろう」


 だから、と言いながら、ラヴィルはレミリアに顔を近づける。


「式はまだだが、生活環境を整えるためにお前のところへ行ってもいいか? 都にあるカストロフ家の邸には出入りしていたが、領地の本邸のほうは行ったことがない。二人で暮らしてみよう、実際の部屋も使って、夫婦のように」


 と、頬にキスをすると、レミリアが真っ赤になって固まった。


(まったく。今の俺たちに必要なのは、これだろう)


 互いの距離をもっともっと縮めること。

 こういった触れ合いに慣れること。

 式での誓いの口づけで、頭が真っ白になった花嫁がその後の儀式続行不能になっては困る。


 まあ、それはそれで可愛いのだが。

 まだまだ恋人同士の距離に慣れない婚約者殿が愛しくて。だがもっと慣れてもらう必要もあって。


 大義名分を手に入れたラヴィルは堂々と、レミリアに恋人同士の悪戯をしかけ始めた。


 空気になって部屋の隅に控えていたバルトロが、メイドたちも促し、そっと廊下へ出たのは言うまでもない。一応、部屋の扉を閉めなかったのは、結婚前はほどほどに、でないと嫌われますよ、との、恋する殿下への警告、理性喚起勧告だった。


うっかり短編でページを作ってしまいましたので、続きも投稿できるよう、新しい番外編ページを作成しました。重複してしまいますが、下記ページにまとめましたのでよろしくお願いいたします。

(こちらはややこしいのでそのうち削除いたします。ご了承ください)


https://ncode.syosetu.com/n4812fr/

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