先生へ、
先生へ
先生こんにちは お元気ですが?
つたない文章ですが最後まで読んでいただけると幸いです
突然ですが先生、貴方は私の小学校生活最後の担任でした
6年生の三学期、みんな卒業モードでピリピリしていました
にも拘らず、遅刻魔の私は相も変わらずたるんだ生活を送っていました
さすがにこのままではまずいと思った私は、朝早く登校することを心掛けました
しかしどうでしょう
毎日朝寝坊していた私がいきなり早起きするには無理があって、せっかく朝早く学校についたのに、一時間目に居眠りをしてしまいました
ですがその時貴方は其の事に気づいていませんでした
ところが3時間目、一時間目にあったはずの社会科の授業がまさかの2回目。
わたしは社会の教科書を忘れた上に、みんなが1週間前から作っていた発表資料を
遅刻による授業欠席で一切手を付けていませんでした
困った私はこのままやり過ごそうかと迷った挙句、渋々貴方に資料の台紙を貰うことにしました
すると貴方は私に一時間目はいったい何をしていたのかと問いました
わたしは素直に「寝ていました」と、そういいました
クラスは笑いにつつまれましたが、貴方はそうではありませんでした
貴方は怖い顔で、「学校にきているからにはちゃんと授業を受けなさい」と言いました
全くその通りで。
その時のわたしはおとなしく謝りました
でも先生、私が学校に行くのが嫌になったのは貴方のせいなんですよ?
なんなら学校に毎日行っているだけで褒められてもいいレベルだと思っています。
先生、私は幼いころから学校が嫌いでした
勉強がめんどくさかったからとか、そういう訳じゃありません
私は過去にいじめられていました
小学2年生の時です
その時もまたあなたが担任でした
わたしは授業中、隣の席の男子に暴力を振るわれ続けました
体が痣だらけになりました
教科書を朗読する貴方を見ると、一瞬、目が合いました
けれど貴方はすぐに視線の先を変え、いわゆる、「見て見ぬふり」というものをしました
自分の気持ちをうまく言葉にすることができず、強く拒否をすることもできず、
ただ弱い自分を見せまいとヘラヘラしてやり過ごすことしかできない私は貴方に、
ささやかながらも精いっぱいのSOSを出しました
貴方は其の男子を説得してみると、そう言ってくれました
あの時はうれしかったんですよ?
しかしその男子の暴力は席替えの時までずっと続きました
私はその年で絶望を覚えました
さて、あなたが私の担任を受け持ったのはそれだけではありませんでしたね
私が5年生の時も担任は貴方でした
その年はクラスの男女比のせいで一つだけ男子3人に対して女子1人という班ができてしまいました
私は自分が座りたかった席をほかの子に譲り、男女比3:1の班になりました
私と同じ班になった男子たちはいつも一緒にいる仲良しグループで、
1人じゃイキがれないくせに3人揃うとイキり倒す、タチの悪いグループでした
最初は4人で普通に会話をすることができました
けれど時間がたつにつれて、盛り上がる話題は誰かの悪口から私の悪口へと変わっていきました
常に、話しかけられてはイジられ、悪口を言われ、授業もまともに聞くことができませんでした
私は多大な疎外感や劣等感を感じるようになりました
授業参観の日、保護者が見に来る日くらいはおとなしく静かにしていてくれるだろう
そう思い、私は少し安心していました
けれどそんなことは全く無く、私への精神的攻撃はいつもよりエスカレートしていました
わたしたちの席は一番後ろで保護者に一番近い席でした
きっと誰かが助けてくれるだろう、
先生でも保護者でも誰でもいいから助けて欲しい
そう思ってずっと待っていましたが結局、
その時間は誰も助けてくれませんでした
奴らはあんなに騒いでいたのに
授業が終わると私は涙目で教室を飛び出し、一人トイレで誰にも気取られぬよう静かに泣いていました
これもすべて私が泣くまいとへらへらした顔を作ってしまうのが悪いんだと、
助ける価値なんて一ミリもない私が悪いんだと、
自分を責め続けました
さて、話は変わりますが6年生の私には恋人がいました
その方が誰かと話しているのを見るだけで、私のそばにいないだけで
胸が締め付けられて、気が狂いそうで、私は自傷行為に走りました
算数の少人数の時間、私はその方と同じクラス、隣の席になりました
その方はクラスが違ったので、授業中に会えることが何より喜ばしいことでした
当時はお付き合いをさせていただいたこともあり、自分以外の人間と話をされている事が、いつもの何倍も苦しくなりました
本当は私のことを好きじゃなかったのかも、離れて行ってしまったらどうしよう
そんなことを考えていると、憎悪に似た感情を抱き、涙があふれて何かを切り刻まずにいられませんでした
学校で血を流すと大事になるので、私は金色の刃のカッターで
自分の分厚い教科書を切りつけました
その時はそれで気を紛らわすことに成功しました
けれど、次の算数の時間、書き込みの問題でそのクラスの先生が1人1人の教科書を見て回りました
まぁ見事にばれました
結局その時は私にとって精神安定剤の役割をしていたカッターを取り上げられただけで何のお咎めもありませんでした
しかし私の悪い予想は的中
その話は担任であるあなたに伝わりました
そして貴方はわざわざ私を呼び出して怖い顔でこう言いました
何か困っているなら相談しろ
ふざけてるとしか思えませんでした
今まで何もしてくれなかった無能で最低な教師に何を相談しろというのでしょう
それにその問題は貴方が出しゃばったところで何も解決するものじゃなかった
余計な口出しするんじゃねぇよ
湧いて出たのは怒りと涙だけでした
しかし、怒りと混乱で自分の頭を整理できずにいた私は、
ただ従順に「はい」「大丈夫です」と言う事しかできませんでした
先生、私は偽善的な貴方が大嫌いです
私は、私の短い人生を辛く、酷いものにした貴方が大嫌いです
この世の何よりも。
カッターを返して貰った時、私は心に誓いました
貴方に復讐をすると。
卒業式後に撮ったクラスの集合写真が出来上がったと聞き、
私は指定の日時内に小学校へ向かいました
集合写真を受け取った私は貴方のもとへ行き、この手紙を渡しました
そして私はまだ肌寒い季節の中、左腕の袖をまくり、
あの時、貴方が奪ったカッターを貴方に見せました
カチカチと金色の刃を出し、
錆びた刃を左手首に深く刺し、
そして勢い良く引きました
どうでしょう
あなたの目の前に鮮やかな血飛沫が広がったはずです
聞こえたでしょう?
私の小さな「 ざ ま ぁ み ろ 」
あぁ、貴方の驚きと恐怖に満ちた顔が目に浮かびます
先生、私は、
今回のこの復讐が、
貴方の前で弱っていった私が、
貴方のせいで消えた一つの命が、
貴方の瞼に焼き付いて、
貴方が一生抱える、消えることのないトラウマになることを望んでいます
私の最期の願い、もちろん聞いてくださりますよね?
ここまで読んでいただきありがとうございました
それでは、
お元気で。
実話をもとにしたフィクションです