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お龗(おかみ)なんて怖くない  作者: 八兼信彦
3/19

#0 東京なんてこわくない(3)

 *


 新宿BYGSビルの屋上には、レスラーみたいな大男と、白いワンピースの少女が居た。


「浮かない顔」


 小さなミュシャが気持ちの籠っていない声をエリスに投げる。

 エリスは、立ち尽くしたまま腹をさすっている。言葉を返そうとはしない。

 小学生くらいの清楚な女の子と、タンクトップの中年男性のペアは、誘拐を思わせる。

 つい先刻まで停電していた区役所を、ここからは見通すことができた。


「ちゃんと呑めたんでしょ? なんでそんなに浮かない顔してんの」


 見上げることしかできない少女だが、態度は不遜だった。


「――――」


 腹をさすりながら見つめ返すエリスに、ミュシャは顔を歪ませる。


「あんたのコトバが、わたしにわかるわけないでしょ? もっと身振りとか、手話とかやりようがあんでしょーが?」


 するとエリスは困ったように、頭を傾げた。


「期待してないわよ。どうせあんたには、『運ぶ』以上の脳なんてないんだから。それで――問題なく歩けるのよね?」


 ミュシャがそういうと、エリスはこくりと頷いた。

 それからミュシャをひょいと肩に担ぐ。

 ミュシャは、エリスの頭に腕を回すと、


「どうしてあんたみたいな木偶の坊が、アースキーパーなのかしら。神さまは演出過剰よ」


 といった。

 無口なエリスに苛立って、つい饒舌になってしまうミュシャ。

 エリスはそのまま跳躍して、屋上から飛び降りた。

 煌々と輝く絨毯の、その網目である闇のなかへ、ふたりは消えていった。

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