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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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心配

 『前回のあらすじ』

 紫音真紀(しおんまき)の不調を感じ、一度店へ戻る途中、海岸付近に大きな一隻の海賊船が停泊している事に気付く。

 船長のパイソン=キクは貴紀の一撃狙いを読み堂々と言い当て、確信を突き、はぐらかしを事前に食い止める頭がキレる事を見せ付ける。

 お互いの目的を達成する条件で一時的な協力関係を築き、後は新人に任せようと呼び出したのは──心情ベビドの孫娘、心情ゆかり。少し話すも、仲間を呼ぶと言う名目で逃げ出した。



 心情さんから離れ、店へと逃げ出し密林へ入る。何が最強の02(ゼロツー)スレイヤー(殺す者)だ!!

 ッ……目から止まらず溢れ出す涙で視界が悪かったのか、それとも足下に気付かない程心に余裕もなかったのか。

 何か固い物に右足は(つまず)き、盛大に転ける。悔し涙と怒りの余り作った握り拳で地面を叩き、声を押し殺して泣いていると。

 突然降り注ぐ大雨。もうどうでもいい。そんな一時的な感情に流されそっと目を閉じると、瞬く間に深い眠りへ落ちた。


「ッ……もう、貴紀や静久にも通じない!!」


「まあまあ、落ち着いて霊華。帰って来てからずっと苛立ってるから、メイド達も怖がってるし」


 聞き慣れた声に眠りを妨げられ、ゆっくりと目を覚ます。其処は倒れて眠った密林ではなく──

 七千三十二年のヴォール王国・休憩室。即ち転移前へ戻っていた。……んだけれども、どうやら半透明になった此方を認識していないらしい。

 こりゃまるで幽霊だ。とは言え連絡も無しに転移しちゃったから、父さんは心配する母さんをなだめつつ、白いソファーに座らせる。

 視線を扉の方へ向けると、確かに一般メイド達は必死に冷静なふりをしているけど、震えは止められてない。


(シン)国王陛下、霊華王妃様、オラシオン候補生・ヴァイス、ルシファーはんと城下町の見回りを終えて帰還したで」


「報告。城内にあるゲート起動の連絡を受け見回り中、機械屋・Mは消失。恐らく何かしらに巻き込まれた。と認識」


「ちょ、それは本当なの!? ルシファー、ヴァイス!」


 城へ駆け足で戻って来た二人からの言葉を聞いて確認を取ると、小さく頷いて肯定。

 すると何やら落ち着かない様子で腕を組み、表情から焦りつつも思考を巡らせているっぽい。何を考えているんだろうか?


「大丈夫かしら……あの子」


「きっと大丈夫さ。闇の魔神さえ倒す実力を持っているんだ、僕達が信頼してあげなきゃ」


「それもだけど、そうじゃなくて」


 ポツリと呟いた言葉を父さんは拾い、安心させる為か両手でリアクションを取って返す。

 けれど、大丈夫かしら。と言った意味は別にもあるらしい。母さんは右手を頬に軽く当て、困った顔で溜め息を吐く。

 生存の有無で言えば、自分は生きてるよ。……多分。あぁ、健康面やちゃんと食べてるか? 的な事か。と勝手に思った時──


「あの子、純粋な人間以外の異性を無意識に引き付けちゃうのよ。何処かの誰かさんの所為(せい)で」


「あぁ……あの筋肉馬鹿(ゼロ)のお陰でな」


 予想外な方向の心配をされていた、と理解した。そりゃまあ光闇戦争時、最後まで残ってた面子って。

 人外やら何かしらの理由で純粋な人間の枠を逸脱したり、普通の人間だけど元の日常へ戻れない連中だったしな。

 人間は婦警さんと技術師だけ。後は異種族やら逸脱者だったか。ゼロはナイア姉にマーキング兼サポートとして強制的に与えられた仲間。

 お陰様で──異種族の異性やら力の有る連中に色んな意味で好かれ、性的な意味でも食われそう……いや、今でも気を抜くと食われるわ。


「あぁんっの膨れ女!! 私の居ない間にマーキングして行くわ、貴紀をつまみ食いするわ。あぁもう、今思い出しても腹立つ!」


「なあ、ルシファーはん。霊華王妃様の言うつまみ食いってなんや?」


「まあ。何時の日か現れる白馬の王子様にでも聞くんだな」


 苛立つ余り正面テーブルに置かれ、真っ白なお皿に乗ったクルミを右手で二個程鷲掴んだと思いきや。

 そのまま剥いてない殻諸共握り潰し、余計に一般メイド達をビビらせていた。母さん……握力幾つよ?

 それはそうとルシファー。それは説明を後回しにしてるだけじゃね? 自分でも答え難い場合はそうするけどさ。


「て言うか、(がい)宇宙の邪神やら旧支配者やら来訪し過ぎなのよ!! 観光地か、此処は!」


「お、落ち着いて、霊華。何を言ってるのか、サッパリ分からないんだけど」


 内心を愚痴り始めた……まあ、クトゥルフ神話を知らんと意味も理解出来んだろうな。

 実際ルシファーは笑いを堪えてるけど、父さんとヴァイスや一般メイド達は意味不明な顔。

 今思い出せる記憶の中で仲間未満の友人関係と言ったらヨグ=ソトース、ハスター、クトゥルフ、クトゥグア、ノーデンス位か。

 ……あれ。自分の友人関係、人間全くいなくない?


「なんや荷物が届いたで。ばーにんぐ、すりーあいず? とか言う名前の配達業らしいな」


 噂をすれば影。とはよく言うけれど、ヴァイスの言う配達業者の名前を聞いた途端、母さんとルシファーの動きは止まり。

 自分も含めて白く長方形の箱を抱え、笑顔を怠らない彼女へ視線が向く。アイツ……配達企業でも始めたのか?


「ルシファー。後であの筋肉馬鹿に渡しといて」


「了解した。それともう一つ。ナトゥーア大陸北東部に在る都市、リヴァーレに関する最近の情報を得た」


「預言者が現れたらしくてな。預言通り大量に武具を買い占めとるらしいで。戦争でも始める気やろうか?」


「……今は警戒と様子見に留めよう。ただでさえ国内へ侵入したラプターの駆除で精一杯なんだから」


 都市・リヴァーレ。ヴォール王国を一方的に目の敵とする変な国。いやまあ、ナトゥーア大陸は小さな小大陸かつ。

 国と呼ぶ場所は此処と向こうだけ。早い話、多くの村や集落から利益を全て得るには二分割の原因たる、ヴォール王国と言う存在は邪魔って訳だ。

 他国の技術・成果を横取りは当たり前。自分達は被害者だと吠えては賠償や謝罪を求め、自国の不利は嘘偽りで塗り固めふんぞり返る国。

 ハッキリ言って救う価値も無い国だ。けど、おかしいな。リヴァーレは良くても小国、武具を大量に買い占める財力は無い筈。


「ヴァイス、ルシファー。ゲートは使えそうかい?」


「使える反面、調査結果としては人数制限や選別が行われているそうだ」


「ヴォール王国にあるゲートで通れる人数は最大四人で帰りは無制限みたいや。後一人しか行かれへんで?」


 父さんは俯いて少し悩んだと思いきや顔を上げ、ゲートの状態に就いて訊ねる。十中八九、来る気だ。

 でも通る際に人数制限や選別を行っているらしく、発言から今は『三人分』埋まっているそうだ。……三人分?


「可能なら僕が行きたいけど、ベビド兵士長やメイド達にも心配や迷惑を掛けちゃうし、国王としての責務もある」


「かと言って生半可な奴を送っても、貴重な人数制限を無駄にするだけだろうな」


 自分としても、父さんに来られると困る。リヴァーレ王国の動きにいち早く対処するのは王様の責務。

 援軍は嬉しい反面、信頼出来ない奴や生半可な実力者を送られても、邪魔でしかない。ルシファーはそう言う点も良く理解してくれて助かる。


「なら、トワイに頼むかい? 彼女なら僕達の息子を、その仲間達を助けた上で戻って来るさ」


「……そうね。人数制限最後の四人目には、トワイに行って貰おうかしらね」


「決まりだね。ヴァイス、その箱は貰うから、トワイに地下室へ来るよう伝えてくれるかな?」


「了解や、ウチに任せとき。序でに必要なモンも纏めとくさかい」


 話としてはオラシオンNo.Ⅵ、トワイ・ゼクスを援軍に送ってくれるようだ。

 元気に返事を返し言われた通り箱を近くに居た母さんへ手渡した後、トワイを探す為に部屋から出て行く。

 少し間を開けて三人も部屋から出て、進む先的に地下室へ向かっている様子。ゲートを見ると確かに起動し、中央部が青く光っている。


『トワイ・ゼクス。伝令を受け、馳せ参じました』


「普段の仕事中に呼び出してスマナイ。今よりゲート先へ向かい、行方不明となった貴紀達の捜索、及び援護と帰還の(めい)を与える」


 その間にもトワイは表情一つ変えずに地下室へ駆け付け、父さんと母さんの前で跪き(ひざまず)、深々と(こうべ)を垂れ。

 任務を与えられると立ち上がり、遅れて来ては息を切らすヴァイスから大きなリュックサックを受け取り、礼儀正しく一礼してからゲートへ飛び込む。


「後はトワイに任せて、僕達に出来る事をやろう」


「せやな。ラプターの侵入もまだ、終わっとらんし」


 今出来る事をやる為、父さんとヴァイスは階段を登り一階へ戻って行く。

 それを見届けた後。母さんとルシファーの二人は事前に話し合いでもしてたのか、顔を見合わせると小さく頷く。


「まさか、筋肉馬鹿に先を越されるとはね」


「仕方あるまい。奴は都合良くオフの日。向こうとの時差で王との合流は遅れるが、俺達も向かうぞ」


「待ってなさい、貴紀。私達もすぐ、追い付くから」


 どうやらゼロは一足先に此方へ向かっていたらしい。それも踏まえて人数制限は一人分、余分にあったのだろうか?

 人数制限最大になった筈のゲートへ向かって何の躊躇いもなく、拒まれる事も無く飛び込む二人。

 人数制限四人までって言うのは……嘘の報告だったのか? 少なくとも此方には四人転送され、ヴォール王国からもゲートへ四人も入った訳だが。






 装備紹介・No.Ⅱ


 チェンジウオッチ


 貴紀=緋色、ゼロ=青色、ルシファー=紫色、霊華=紅白の四つに分かれており、矢印を任意の向きへ変えて叩くと対象の存在と任意で入れ替わる事が出来る。

 入れ替わると魔力も担当者のモノに変わる為、誰かが魔力切れが近い状態で交代したり苦手な相手・相性の悪い敵と戦う時に入れ替わる事で危機的な状況を覆す事も可能。

 貴紀専用の使い方と共有での使い方が存在し、使用回数は貴紀が自身の色を叩くのは三回(連続叩きは能力選択の為、含まない)、共有用は四回と分かれる。


 必殺技を使う時はダイヤル(矢印の針)を動かし、発動する誰かに合わせて叩く事で力を発動させ、威力や効果を上乗せさせる事が可能。これにより魔力無効の敵に、霊力をフェイクで叩き込む戦法も出来る。

 貴紀専用の使い方で自身を選択し使用する能力に合わせて(アビリティ・Ⅱなら二回)叩き、ダイヤルをグルッと一周させた後。ゼロ・霊華・ルシファー・貴紀の順番でウォッチを叩けば。

 四人分の力を込めて繰り出す必殺技、フュージョン・○○が使える。アビリティ・Ⅱだと融合系に効果的なフュージョン・ブレイクを行える。

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