悪夢の海・後編
『前回のあらすじ』
非戦闘員多めな中、店ごと転移してしまった為、周囲の調査へ向かう貴紀とマキ。
食料と飲み水を見付け、山頂から辺りを見渡してみると、其処は海に囲まれた孤島と判明。
遭遇したアニマと護衛のスカルフェイスを挑発するマキ。そのお返しにとメイト、スプリッティングに襲われて貴紀は右腕を切断されてしまう。
一瞬だけ宙に浮いた氷付けの右腕は、すぐに砂浜へ落ちるも、視線は奴らを捉え続ける。
何度目だろうか、四肢のいずれかを切断されるのは。幸い、切断箇所は凍らされた部位。
噴き出すような出血もなければ、痛みも予想以上に少ない。アイシングとある意味同じ……か。
「とは言え、凍傷は避けたい……なっ」
まだ起き上がらないマキの服を掴み、魔力で球状に包んでから、力強く店の方へ投げ込む。
続けてバックルを左右へ開き、携帯を操作して寧へ電話し、通話かつスピーカー状態に設定。
「寧。マキの回収を頼む……っ、戦いが終わって俺が落ち着くまで、近付かず、一歩も外へ出るな!」
『貴紀君?! まさか……駄目だよ、それは──』
礼儀として悪く、後々怒られると知りつつ、要件だけ伝えて通話を無視。フュージョン・フォンをバックルへ差し込み。
決まった手順を行い体だけ変身。まだ装甲は無く、防御力は薄い。後は俺自身の運に、全財産を賭けて願うだけ。
携帯から鳴るWARNINGと言う警告は無視、解放レベルは最大値のHAZARDに設定。最終確認でSACRIFILCE・Are You Ready?
そう問われた時。新調されたヘルメット型マスクを手に取って被り、下顎のパーツも装着し固定完了。
『あぁ~、もう! こうなったら最後までサポートするからね』
「助かる。リミッター解除。フルドライブ!」
大抵の魔力は太陽光や熱源から生まれる。けれど、俺の体内に埋め込まれた『輝くトラペゾヘドロン』は闇を吸って闇属性の魔力を生む。
普段は自身やゼロ達の魔力で戦う理由は、コレの魔力量に押し負け、心を飲まれ暴走してしまう為。
しかし……っ。俺自身の魔力量を無理矢理引き上げ、同等にしてやれば相反する魔力は衝突し合い、莫大なエネルギーを生み出す。
『第三装甲・一号、転送準備開始。完了まで……後約十秒』
「スゴイすごい。ご馳走の山だぁ」
「精神感応カメラの視界を三百六十度に変更」
ドデカい必殺技を撃ち、最大ブーストな為、スーツの稼働時間は三分を切った状態でスタート。
デカい魔力に反応して、周囲から喰らいに来る……か。楽園を追放された挙げ句、邪神共に気に入られ、魅入られた馬鹿野郎の力。
悪夢の異形を名乗るお前達に俺達の絆、見せてやらぁな!
「頂きま~──」
大好物へ丸噛り。と言わんばかりに背後から迫って来たんで、背中に担いでいたスタッフを手に取り、左側へ薙ぎ払う。
粉砕され、肉片となり吹っ飛ぶ瞬間。野郎の体に浮かぶ無数の成人男性の顔が「た、助けてくれぇ~!」と求めている。
あぁ、助けてやるよ。ナイトメアゼノ・メイト、コイツ諸共アンタ達も殺す事でな。
「ゴチソ……!?」
「っ!」
『確かに私達は前線で一緒に戦えない。けど、これも私達に出来る戦いなんだよ』
もはやどっちが正面か分からない中、迫る分裂体に一歩遅れて気付くと、分裂体の頭上へ第三装甲・一号のパーツが降り注ぎ、押し潰した光景が広がる。
パーツは磁石の如く本来装着されるべき各部へ自らくっ付き、換装完了。何故か活動可能時間も残り二分から、四分に増えている謎使用。
『一号はデータ収集用だからね。試験的に電池補充的な要素を組み込んだんだよ』
「確かに、これは助かる。ナイスサポート」
『それにね。視界を半分だけとは言え、貴紀君と一緒に戦えるから』
いわく、エルフの森・防衛戦で倒した機械兵のエネルギー源たる魔石と、ボタン電池を参考に第三装甲内へ搭載する発想を得たそうな。
アダムとイヴは二人一組。五感や能力を共有する『リンク機能』を使えば、視界三百六十度もこの通り。
俺は正面百八十度、寧は後方百八十度。地中や真上でもなけりゃ、この二人三脚は崩せない。まあ……弱点もあるけどな。
「女の子……ママ!」
『貴紀君!!』
「あいよっ、合点承知の助」
メイトの分裂体が店側へ放り投げたマキを見付けたらしく、一体を残し蜘蛛と同じ走り方で向かう。
最大速度で先回りしつつスタッフは捨て、彼女を背に構えは解いて待つ。──途中、突然脚から力が抜け、地面に両膝を着く。
『ッ……スーツのシンクロリミッターを二段階、解除!』
顔を上げれば間合いはもう詰められ、人の頭程度なら一口で喰えそうなデカい口が迫る中。
これまた突然ながら脚に力が戻り直感とスレイヤーのスキル、スーツが持つ機能をフル活用し、エボル・ブレードで文字通り『切り抜ける』事に成功。
振り向けば分裂体メイト三体は、縦・横・斜めからの一閃を受けて崩れ落ち、溶けて液体へと化した。
「寧ッ、もういい。リンクを切れ!」
『スキャン……結果、出た──気を、付けて。め……『メイトはまだ、生きてる』、それに、融合獣が』
「音声入力。リンク強制カット、百八十度視界へ変更しアクティブソナー、警報アラーム起動」
苦痛に耐える声が通信より聞こえ、リンクを解くように伝えるも。
最後までサポートする。と言う約束を守ろうと、途中で声は途切れつつも頑張っている。けれど、これ以上は危険だと判断。
音声入力によるカット・変更・起動を行い、震える足で立ち上がる。残るは砂浜で争っているメイト、スプリッティングのみ。
「もう残り三分を切ったか。急がねば」
変態と分裂が得意なナイトメアゼノ、如何にも俺の苦手な水中特化型と言う外見をした融合獣。トドメに現在地は海に囲まれた孤島。
ハハッ、なんつうアンハッピーセットだ。それはそうと奴ら……争い合っている様子だけど、仲間意識と言うモノは無いのか?
それともナイトメアゼノシリーズと融合獣は敵対関係なのか? 生態系や関係性は知りたいと言う好奇心の高まりを抑えつつ、倒す為に駆け出す。
「パパは嫌い。だから要らない!」
「パパもママも、友達も要る。だから必要!」
なんと言うか……幼い男女の喧嘩、意見の対立って印象を強く受ける。融合獣系統は元となった存在が生命体であれば。
精神年齢や思考を引き継ぐ場合もある。けれど、コイツらは本当に幼児って感じ。それで考えるとスプリッティングの融合素材は──
赤ん坊から小学校低学年位までの女子と、水性生物か。でも揺り籠って……どう言う意味だ?
争いに割り込むまで後少し。と言う時、後方からドデカい何かに体当たりされ、顔面から砂浜へダイブ。
「っ、なん……だぁ!?」
何事かと急いで顔を上げ、奇襲して来た存在へ視線を向けると──蛇やウナギっぽい……半分透けた超巨大かつ長い体。
旧聖書に書かれているリヴァイアサンを何故か思い出す。頭は海へ潜っており、何がしたいのか訳が判らず困り果てていたら。
半透明な巨大野郎の体から無数の手が伸び、俺や喧嘩中の二体を掴み、強引に海へ引っぱり込まれてしまった。
『貴……り君。聞……える?』
「少しノイズは酷いけどな」
水中かつ落下中だからか、それとも通信機能に不具合でも発生したのだろうか? 少し、声が途切れている。
しかし「少し待ってね。調節するから」と言ってモノの数秒で調節し終わる辺り、改めて寧の凄さを痛感するよ。
『今の超巨大な奴から、オルタナティブメモリーの反応があったの』
「お目当てを早々に発見出来るとは幸運だな。まあ……先に救助してくれると助かる」
『大丈夫。静久ちゃんが即座に向かったし、第一装甲のサヴァイブスーツは悪環境では君の生存優先になるから』
回収目的のオルタナティブメモリーを取り込んだ奴は早々に見付かり、申請前に静久は救助へ向かって来てくれている。
サヴァイブスーツは水中や俺の苦手な環境だと、可能な限り生命維持モードへ移行するらしい。とは言え、無酸素空間や気温系が精一杯とは寧の言葉。
バイザーに制限時間十分と表記され、破損箇所として体のアチコチは赤く表示されて行く。どうやら水圧に潰されているっぽい。
そんな中。アクティブソナーが死角から接近する物体を捉え、警報で知らせてくれるも……思うように動けず、海底へ落ち行くだけ。
序章第二十七話『巫女』の後書きキャラプロフィールの名前を、紫音真紀から未来寧へ修正致しました。
振り返って誤字脱字修正忘れ確認の為、見ていた時に発見致しましたので、手直ししました。設定と名前があっていませんでしたので……




