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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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青い鍵

 『前回のあらすじ』


 地下基地で精密検査を受け、問題無しと出るも無茶は禁物だとマキに釘を刺されつつも翌朝、約束通り冒険者ギルドへ向かう。

 アイ・アインスことナイアから水質調査を求める声がある事、ゲートに変化はないか? メールで聞かれ、静久へメールを通して連絡する。

 巴との午前中限定バレンタイン祭は問題無く終わり、冒険者ギルドへ送り届ける途中、手作りチョコを貰った。



 午後になる前に巴を冒険者ギルドへ送り届けた後、駆け足で機械屋・Mへ向かい午後十二時五分、地下秘密基地へ無事到着出来る……と思いきや。

 店の中から若干見覚えのある奴が勢い良く吹っ飛ばされ、痙攣している。皮が無く筋肉が剥き出しで骨の様に白い体、頭は切断されてるが長い手足に細長く鋭い尻尾と、異形感が強い爪。

 間違いない、ナイトメアゼノ・ラプターだ。何故コイツがヴォール王国に現れている? って、先ず気にするのは仲間達の安否だ。慌てて店内へ入る。


「五分の遅刻……戦場なら拠点が潰されてても不思議じゃない……」


「静久。これは一体、どう言う事だ?」


「どうもこうも……奴ら、直接此処を穢しに来たらしい」


 曰く。国を護る為、高位の神官達が張った奇跡の結界が単身突破出来ない為、水脈を穢し地下から侵入して来たと言う。まさか地下水道を通って来るとは……

 昨日口にした水が黒かったのは、そう言う理由があってか。しかし午前、町中は何時も通りで騒ぎが有った様子は無かった点を訊ねてみたら。


「シュッツや詠土弥(よどみ)達が迎撃中……それでも抜けた奴らは、霊華やベビド達が見回り、逐一潰している」


「……ごめん。そうとは知らず」


 話を聞き、何も知らず巴と出歩いていた事に対して謝る。

 そしたら「阿呆……弱体化した理由の半分は戦い過ぎ。少しは私達に任せろ……」なんて言われた。


「客は全員前もって帰してある……地下へ来い。ゲートが開いたらしい。他の連中も……後々来る」


 言われるがままに付いて行き、地下へ続く階段を降りれば地下空洞に、自分達の秘密基地が在る。

 パソコンが苦手な自分でも理解出来る程、滅茶苦茶なタイピング速度で文字を打っている寧とマキの二人。モニターを覗くと……第三装甲計画・○○アーマーと書いてあった。

 まだ正式な名前は決まってないらしい。基本設計は自分のアキレス腱である射程の短さ克服、火力不足や魔力の安定化が目的な様子。


「機動力を捨てての固定式砲台化……それは考えた事なかったな」


「うん。貴紀君は機動力を生かしてがメインだけど、敢えて逆を選択してみたの」


「ま、そうすると今度は君の足腰が想定する砲撃を踏ん張り切れない。と結論が出たんだけどね」


 ハッキリ言えば前衛で行う殴り合いを止めて、後衛での火力支援。とは言うものの、そうなると敵の注意を引く前衛・タンク役が居なくなる。

 それ以前に何を撃たせる気なのか知らんが、足腰が踏ん張り切れない砲撃って……けれど、完成にはまだまだ程遠い様子。理由を聞いたら、重量が二百キロを越え。

 砲撃戦型なのに、射撃補佐や照準系等システムの最終調整が全く進んでいない。そりゃ寧達は銃のプロフェッショナルじゃないし、寧ろ良くやってるよ。


「そうだ。ゲートが開いたんだって?」


「うん、貴紀君が出掛けた後にね。で、偵察用ドローンを飛ばしたんだけど……」


 ゲートが再起動したのを訊くと、偵察用ドローンから送られている映像ファイルを開き、上空から周囲を撮った映像を見せてくれた。

 大気汚染等は全く無く、太陽光が差し込んでいて空も青々とし、気温も春頃と同じ。孤島が一つだけ在るっぽいが……科学薬品でも漏れ出したのか、海が一部ドス黒い。

 何があったのか見入っていたら──誰かも知らない若い男性の声でhello(ハロー)! そう聞こえた後、画面が砂嵐状態になった。

 孤島が小さく見える高度で、さも当然の如く話し掛けて来る謎の存在。恐らくだが、ドローンは撃墜されたと考えるのが妥当だろう。


「それとね。貴紀君と同じ魔力反応、オルタナティブメモリーのエネルギー反応が一瞬だけど拾えたの」


「つまり……残る融合パートナーの誰かが、ゲートの先に居るって訳か」


「残る三人の誰が居ても……私以上に海と言う場所に優位な奴はいない……ふっ。ざまあみろ」


 離れ離れとなった仲間達とは少なくとも、合流して戦力を整えたい。とは言え、優秀な人材は何故か女子に集中してるんだよなぁ……男性の仲間が欲しい。

 そして静久よ。確かに四人の中で水中戦を得意とするのは君一人だけどさ、静久に何かあった時、自分は水中じゃ何も出来ないって分かってるのかな?

 もし向こう側で再会したするが恋や愛だった場合、地上戦でしか戦えなくなる。何かしら新しい装備やアイテムを仕入れる必要があるぞ、こりゃあ。


「寧、マキ。他に何か、情報はないか?」


「あるよ。一つ、ゲート先の海には知的生命体らしき反応が幾つかある。これは寧ちゃんが見付けた」


「二つ目はね。ナイトメアゼノシリーズの魔力反応が高くて、恐らくだけど……地下水道にゲートがあって、其処から来てると思うの」


 事前に得れる情報は貴重だが、これはある意味聞きたくなかった。が──そうなると第二のゲート先は、ナイトメアゼノシリーズが支配する領域か。

 ゼロ達や静久は勿論連れて行くとして……貴重な戦力をどう分けるか、が問題だ。最大戦力で行っては、確実にヴォール王国の防衛力は落ちる。

 今動ける正式なオラシオンは四人。アナメかシュッツは悔しいが、どちらかベビドと防衛に回って貰おう。ムート君……は、申し訳ないが戦力には数えられん、別の活躍を願おう。


「貴紀君。何を持って行くの?」


 次なる問題点はコレだ、所持品。前回は回復薬(ポーション)やお金を持って行ったけど、初っぱなから盗られて使えなかった、戻って来なかった。

 武器は装着型のバックラーとエボルネイル・ブレード……先端が球体のスタッフを持って行こう。これで少なくとも、斬撃・打撃・防御は対応出来る。

 パワードスーツは使えるのかどうなのか、気になったので忙しい中、訊ねてみたら……


「今急ピッチで修理中。一応使えるけど剥き出し状態。第三装甲・二号の開発とサルベージで人手と材料と時間が足りてない」


「ごめんね。流石に修理だけでも数日は掛かっちゃう作業量だから」


 流石に技術系専門特化な二人や、武具生産やスーツの装甲板開発担当となったアナメ達が居るとは言え、修理は間に合わない。

 第三装甲も魔人戦で得たデータを元に一から作り直しており、何をサルベージしているかは知らないが……これ以上、口出しは駄目だと理解した。


「でも──安心はして良いよ。サルベージと定着化さえ済ませれば、第三装甲・二号は八割完成したも同然だから」


 質問を止めて口を閉じたからか。キーボードを打つ手を止めて此方へ振り向き、マキは勝ち誇った顔でそう言い切った。なら、仲間を信頼して待たなきゃな。


「静久。ゲートは今直ぐにでも通れるのか?」


「いや……一度数分間開いた後、閉じたらしく……どうすれば開くかは、不明と言っていた」


 左側に嵌め込まれた機械式フラフープの様な形状をしたゲートへ目をやりつつ訊くも、そう都合良くは行かないと知る。次にゲートが開くのは何時になるかは全く不明。

 隣に立てる形で置いてある赤と青、二種類の鍵へ近付き右手で掴むと──うっすら明滅し始めた。どうやら、自分に反応しているらしい。

 それに何か。心に直接語り掛けて来る様な、もしくは暗闇の中に続く蜘蛛の糸的な何かを感じて目を瞑る。うん……青い鍵を通して判る。

 最後に残った幻想の地・無限郷で絆を紡いだ仲間の魔力が微かに感じれる。それと──自分へ助けを求めて泣いてる誰かの声。多分だけど、ゲートの先に居るんだろう。


「使う気か……?」


「うん。誰かに、呼ばれている気がするんだ」


「なら……最初にコイツを使え。多少は力が戻る……」


 そう言って静久が渡して来たのは──トリスティス大陸で回収し国王である紅心へ渡した筈の、七色に輝く結晶・オルタナティブメモリー。

 何故コレを持って来たのか、許可は得ているのか? 気になる事をまくしたてる様に訊くと。


「許可は出ている……寧ろ持って行け、と言われた。もう一つ有るが……アレは今、搭載実験中の為使えん」


「搭載実験?」


「ドイツもコイツも……使えん物ばかりを此方へ寄越す。私達をゴミ収集者と思っているのか……」


 アレやら搭載実験中……と言う単語が気になるけど。珍しく溢す愚痴に苦笑いをし、使えと言われてもどう使うのか分からない結晶へ視線を向ける。

 すると──文字通り意思があり動けるのか、胸の中へ飛び込んで来た。普通なら体に阻まれ、弾かれる筈なのだが……水面へ投げた石同然に入り込んだ。

 胸の内側から欠けていた力が、記憶が幾らか戻って来たのがハッキリと判る。忘れた何かをある日突然思い出した様な、そんな感じがする。


「みんな、準備は良いか?」


 赤と青。二本の鍵を両手に持ち、差し込む前に仲間達へ準備の有無を訊ねたら各々から肯定する返事と頷きが貰え、ゲートの前に立つ。

 先ずは一つ目。時計で言う十二時に有る鍵穴へ赤い鍵を差し込み、右側へ回す。すると鍵は穴へ吸い込まれ、赤い光が二時を指す鍵穴……ではなく、斜め下で三時側へ降下。

 三時へ青い鍵を差し込むも、鍵が合わないのか回らない。試しに二時側へ差し込み回せば……回った。赤い鍵同様吸い込まれ、四時側へ青い光が伸びる。


「……あれ。マキちゃん、何も起きないよ?」


「──!? ゲート起動、転移範囲拡大。全員、衝撃に備えて!」


「クッソ。鍵の所為でゲートが暴走したとか、洒落にもならんぞ──!!」


 そう。鍵を差し込んで二、三分は何も起こらず身構えていた身としては、肩透かしを食らった気分でガッカリ気味だった。

 が──突然ゲートの中央部分、転移空間が青く光り渦巻いたと思った瞬間、目の前が眩い(まばゆ)閃光に包まれ……各々腕や手元に有った物で光を遮る。

 体感的には数十秒間位だろうか。右腕で強烈な閃光から目を守っていたが、光が収まったので辺りを見渡してみる。のだが……これは、どう言う事か、サッパリ判らん。


「……みんな、大丈夫か? 体や体調に違和感があるなら我慢せず、即座に言うんだぞ?」


 何はともあれ。第一にみんなへ掛ける言葉は勿論、不調や怪我の有無だ。

 全員が聞こえる程度に少し声のボリュームを上げて訊けば、大丈夫と返されホッと胸を撫で下ろす。

 しかし、SF小説やアニメ・映画では時間経過で発症するパターンも幾つか有るが故、油断大敵だ。


「……寧。自分達は、転移した。んだよな?」


「う、うん。現在位置、西暦。共に変更を確認済みだから、間違いない筈……」


「全員で情報共有をしたい。現在位置と西暦を教えてくれ」


「西暦は二千五百年。現在位置を偵察用ドローンが最後に送ったデータから算出……孤島と判明」


 転移は成功したらしいが、自分達が今現在居る場所はどう見ても機械屋・Mの地下基地。自分と静久を除く面々が現在の西暦やら位置を聞き、慌てている。

 そりゃそうだ。非戦闘員が戦場へ向かう転移に巻き込まれりゃ、慌てもするさ。現在位置は孤島か……これは直接見て今後の行動判断にするしかあるまい。

 西暦は──無限郷時代終決が二千十二年。それから四百八十八年後の時代か。まあ、人類が自分の仲間達を殺した後、どうなったか。

 とかは正直、気になってたけどさ。まさかこんな形で来る事になろうとは……さてはて、この時代で待ち受ける出来事は何なのかな?


「外へ出て様子を見る。静久、みんなの護衛と拠点を頼む」


「……任せろ。戦闘員が私と貴紀だけ、だからな……」


「待ってよ。私も一緒に行くから!」


 一応安全の為武装だけはして、静久に寧達の護衛や拠点を頼み、店の外へ向かう。何故かマキもビデオカメラ片手に付いて来たが……

 もし万が一、外で何かあった時、彼女と拠点を護り切る事が出来るだろうか? それだけが心配だ。






名前:小山太郎

年齢:42歳

身長:185cm

体重:124kg

性別:男性

種族:人間

設定


 序章第十話『それぞれの道』から登場した、スキンヘッドで口回りを囲う様に黒い髭が生えた男性。初登場から序章・前半となる第二十三話までは、ふくよかな体型。

 次に再会した序章・後半の第三十九話では、ボディビルダー同然な体型に変化していた。貴紀曰く「最初に会った時はボディビル体型で、失恋が重なってやけ食いし、太った」そうな。

 貴紀・終焉・サクヤ達の魔神王討伐作戦中、何者かによる範囲内時空間転移を受けた被害者の一人で、転移先の未来では何故か貴紀が動くより十年早く到着しており、十歳若返っていたと言う。


 冒険者ギルドのギルドマスターであり、其処へ通う冒険者達からはマスターと呼ばれ、貴紀からは大将と呼ばれている。

 転移先で人間の女性と結婚をし、一人娘である小山巴(こやまともえ)、一緒に飛ばされた他の受付嬢達やコック、ウエイトレス達と今でも冒険者ギルドを続けている。


 冒険者ギルドは三階建てで、一階は大人用・子供用の受付と食堂、クエストを受ける為の掲示板がある。二階は休憩所兼食事用席が在り、貴紀達は主に此方を利用。

 三階はギルドで働く受付嬢達やコック、ウエイトレス達専用の住み込み部屋。ギルドマスターや娘の巴も、三階で生活している。

 大人用受付の奥には地下へ続く階段があるものの、ギルドマスターが認めた極一部の限られた者しか入る事を許されない、スレイヤーと協力者・FM専用部屋。



名前:小山巴(こやまともえ)

年齢:20歳(序章第四十一話時点で)

身長:162cm

体重:57kg

性別:女性

種族:人間

設定


 序章第四十話『戦いの後に・後編』で初登場。

 茶色の瞳、サイドテールの茶髪が印象的な女性で、初登場時点では七歳ながらも父から叩き込まれた作法や口調故か、大人びた雰囲気を持つ。

 スキンヘッドのボディビルダーが親とは思えない程、スタイルも良く仕事も出来る一人娘の受付嬢。母親は物心つく前に他界したらしい。

 幼い頃から貴紀=スレイヤーと散々語られている為知っており、どんな人物か気になっていたらしい。


 服装は基本的に黒と白が基準の受付嬢服。普段着はとある人物に女性らしさを出す為、恥ずかしいながらも頑張ってミニスカートや胸元が見える服を着ている様子。

 なお、男性と付き合ったり色恋の経験は全く無い。好きな人へは一途なのだが……肝心な所で奥手になって照れたり、変な所で妙に押せ押せになるのはご愛嬌。

 本人も自覚しており、自室で振り替えって反省したり一喜一憂しているのもセット。父親の小山太郎曰く「十年も良く続くなぁ……」との事。

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