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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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計画

 『前回のあらすじ』

 エルフの森に在るエルフ達の集落から、調律者の戦力から助けて欲しい。と言う手紙がヴォール王国・冒険者ギルドへ貴紀達宛に届いた。

 奇襲を狙っていた機械兵アポトーシスを倒すと、調律者と全く関係ない筈のナイトメアゼノ・ホライズンが現れ戦闘へ。しかし全く歯が立たず、貴紀とシオリは敗北。

 赤と青の鍵を投げ渡し、ホライズンは姿を消す。命は助かったものの、ダークエルフのシオリは意識不明の重体へ……



 ゼロ達を連れて来た琴音と合流後。エルフ達から防衛達成報酬である食糧を貰い、自分達はヴォール王国へ帰還。シオリは意識不明のままだった為、集中治療室へ緊急搬送された。

 国の防衛・救助も担当する重要人物、オラシオンの一人を守れず、意識不明にしてしまった無力感が自分自身を責めていた。何故撤退しなかったのか……と。


「はぁ……負けず嫌いも程々にしないと、今度は判断ミスで仲間の命をも失うぞ」


 回復系魔法や奇跡が使えない自分が城に居ても、何も出来ないし変わらない。罪悪感と無力感が胸の中を何度も渦巻いている。

 親しい人が手術室へ入った後、残された人の気持ちって……こんな感じなのかな? もっと、仲間を護れる力が欲しい。悪人として、自分自身が掲げる悪を成し遂げる力が……

 ふらっと人通りの減った夜の町中を歩き、何となく足を止めたその場所は──三階建ての毎度お世話になっている冒険者ギルド。そう言えば報告はまだしてなかったな。


「晩飯作る気力も無いし、報告序でに軽く食べて帰るかな」


 冒険者ギルドの扉を開けて入ると、夜だと言うのに馬鹿騒ぎしている連中がチラホラ居た。まあ、クエスト達成のお祝い……って感じなんだろう。

 今日も受付嬢として働く巴の所へ行き、クエスト達成の報告や見聞きした情報を伝えた。念の為、ホライズンが投げ渡して来た二本の鍵に就いては──伏せて置くのが吉かな。


「今回もご苦労様です。あの……普段着ているコートは、どうしたんですか?」


「あぁ、ちょっと色々あってな。ルージュに渡したまんまだわ」


「……へぇ~。殆んど名前を他人に言わない勇者候補生さんの名前、貴紀さんは知ってるんですね」


 クエスト報告が終われば毎度恒例、巴との世間話が始まった。最初は巴から話し掛けられ、今じゃ話すのが当たり前の事と慣れてしまっている。

 が……今回は少しばかし、言葉の選択をミスった。そう言えばルージュの名前、知ってる人物は限られてたっけか。何と言うか……笑顔の背後で燃え盛る嫉妬の炎が見えるわ。


「あぁ~……向こうで助けられてな。その時、自分から名乗ってたんだよ」


「ふぅ~ん……まあ、嘘を吐く様な人ではないと知ってますし。そう言う事なんでしょうね」


 軽く説明しても理解はしたが、それとこれは別! 的な素っ気ない態度で返事を返された。幾らか女性慣れはしてるが……付き合ったり結婚まで行くと。

 こんな感じのが何度も有るんだよなぁ。だから嫌なんだよ、ハーレムとか一夫多妻は。女性は感情的になり易く、マウントを取りたがる。

 金持ちやイケメンと結婚したい! って言うのも、周りにマウントを取りたいが為。まあ女性全員がそうだ、とは言わないけどさ。一方的な要求は止めてくんないかな?


「ごめん。二階で少し晩飯食べて、帰るわ」


 余り根に持たれても面倒臭いし。また同じ様な状況になった際、今回の件を引っ張り出されてもウザったいだけなので、先に謝って話を切り上げた。

 多くの女性を見聞きし接して幾らか判った。女性は友人相手でも席を離れると悪口を言い、何かしら問題が起きても自分の責任だとは思わない人が多い。

 そりゃまあ、男性も救い様の無い輩は居るが──男女では脳の作りが違うって点が大きいのかねぇ。女性寄りの男性とかもいるし、その逆もまた然り。


「あ……す、すみません!」


「別にいいさ。巴から貰ったペンダントに命も救われたし」


「あ、あの……明日! 午前中だけでも、お時間……頂けませんか!?」


 謝られた事で、自分の発言や態度に気付いたんだと思う。二階へ上がろうと階段へ向かう最中深々と頭を下げて謝り返され、貰ったペンダントが役立ったと伝えると。

 明日の午前中に予約を入れたい様だ。シオリの件やら先程のやり取りもあり、気分は下降気味。正直言えばやんわりと断り、見舞いに行き付き添いたかったが──


「まあ……別に、いいけど?」


「あ、ありがとうございます! では明日の七時頃、此処へ来て下さい」


 例え一日中見舞いで付き添っても、何も出来ないし変わらない。巴にペンダントの御礼もしてないってのもあって、午前中の約束を受ける事にした。

 日時と場所は覚えた。後は──緊急の用事が入らなければ良いだけか。先に食堂へ向かい、森の焼き魚セットを注文。

 二階の休憩所へ向かうと珍しく人気が無く、マキがベビドと寧に連れられ食事をしていたので、話し掛けて寧の隣に座る。


「珍しいな。マキが外出とは」


「別に……栄養食品ばっかり食べてたら、体に悪いって連れ出されただけ」


「そりゃブロック栄養食ばっかりじゃ、体に悪いわ」


 曰く「栄養豊富でゴミも少ない上、作業場から離れなくて済む」なんて言い出しやがった。そりゃそうだけどさ……もう少し食を楽しむ気はないのか?


「貴紀殿。少し訊きたいんじゃが、この三つの計画とは何の事なんじゃ?」


「自分は別に話しても構わんが……寧?」


「うん。私も貴紀君と同じだよ」


「それじゃあ──」


 寧達にも提出した写真付き報告書を片手に、イブリースが口走った三つの計画に就いて聞かれた。自分自身としては別に話しても良かったが……

 念には念を入れ、寧にも話して良いか話を振る。短く頷き肯定の言葉も頂けたので、イブリースが言っていたOZ(オメガゼロ)計画、EVE(イヴ)計画、R計画の内容に就いて軽く話す。


「一つ目は男性型、二つ目は女性型オメガゼロを量産する計画だ」


「む? 何故男女共通で作らぬのじゃ?」


「男性型一人の肋骨が一本必要な上、製造方法が全く異なるから……」


 そもそも効率が悪い。男性型一人を作って肋骨を一本貰い、相棒(パートナー)となる女性型のベース、もしくは被験者に組み込む。これは旧約聖書に書かれてる内容に酷似していると伝えた。


「ふむ……もし今もそう言う者がいるならば、会って話を聞いてみたいもんじゃな」


「いやいや。目の前に二人も居るでしょ?」


「なぬッ?!」


 会って話を聞いてみたい。と言うから、目の前に居ると話す。自分は幻想側から現代へ誘拐された赤ん坊の時、強制的に再改造を受けた。

 改造と言っても機械を組み込まれた訳じゃない。が、末恐ろしい代物は色々と埋め込まれたな。寧は現代側で再会した後。

 わざと終焉の闇勢に捕まり、適性手術を受けた。全く……何も此方側へ自ら足を踏み入れるとか正気を疑ったし、凄く怒った……気がする。その辺りはまだ、記憶があやふやだ。


「驚異的な力を得る反面、平均寿命は二十歳そこそこで常人よりずっと低い」


「そうなると、二人は──」


「早くて一年か二年。長くても五年から七年ってところかな」


 だから特定の条件を満たした異性以外と、恋人関係にはならない。どうせ付き合ったり結婚しても、悲しませる事しか出来ないからな。

 寿命を大きく縮める理由として、汚染・排気ガス・煙草の煙・自然破壊も含まれている。今自分が一番の脅威に感じているのは……ナイトメアゼノ・ハザード。

 アイツの近くに居るだけで、命を繋ぐ為に魔力が消費され続けて寿命もマッハだ。何だよ、アイツ……オメガゼロ対策にでも特化してんのか?


「私は貴紀君と同じ時間を過ごしたくて、EVE計画とR計画……もとい、リライト計画を自分の意思で受けたんだよ」


 とは言っても、自分はわざと性能を落とした劣化型。寧も劣化型で戦闘は不向きな代わり、技術系専門特化型。

 アダムとイヴ、二人で一組って設計だ。精密検査を受けると色々バレるから、逃げ回ってたんだよ。それに──この計画は『量産化』が目的だ。

 二千年代に計画そのものを潰して、書類とかも廃棄した筈なんだがなぁ……調律者の連中がサルベージでもしたか? アイツら姉妹ならやりかねん。


「そのリライト(R)計画……とは何じゃ?」


「リライト計画。それは条件を満たした一部の人間をOZ計画、EVE計画の素体に書き換える計画。早い話……遺伝子情報の書き換え」


 説明しようとしたが、どう話したもんか悩んでいたら以外や以外。突然マキが口を開き、代わりに説明してくれた。

 この『特定の条件』とは、人間であり年齢が二十歳未満の男女である点。若ければ若い程、成功率が跳ね上がるそうだ。まあ、一番は成長期らしいがな。


「マキ、なんで知ってるんだ?」


「EVE計画とリライトの被害者だから」


 何故知っているのか、素朴な疑問を聞いたら……あっさりと返された。あぁ~そう言えば現在へ来る前、アバドンを倒した後に副王が何か言ってたな。

 確か『彼女、貴方と似た所があるから、直ぐに仲良くなれると思うわ』だっけか。似た所って被害者繋がりって事? いや、副王の事だ、他にも有るんだろう。


「悪かったな、計画を完全に破壊出来なかったが為に」


「そんな事ない。寧ちゃんや君とも出会えて、仲間に誘ってくれたし──寧ろお釣りが来る位には充実してる」


「そっか……今度何か、自分に出来る範囲で二人にも御礼をしないとな」


 マキも計画の被害者だったんだ。と痛感するも、続く言葉に心が救われた。今や自分の戦闘力や命は、二人のイヴに支えられている訳か。

 そう思うとパワードスーツ関係や装備関連でも頼りっきりな為、何か御礼をと思い伝えると──野菜定食を食べるマキの手が止まった。


「それなら明日、買い物に付き合って」


「お安いご用だけど……午後からでも良いか?」


 何か際どいお願いをされるかと思ったが、買い物に付き合って欲しいと言われ承諾。した後に巴から午前中の約束を思い出す。

 買い出し時間は午後でも大丈夫か訊くと、短く頷いて「ん」と答えた。念の為、明日は有り金を多めに持っておこう。

 一通り聞かれた内容を話終えた頃。ウェイターがやって来ては、注文した料理を此方のテーブルに置いて帰って行った。


「でも……良かったね、マキちゃん。貴紀君がサヴァイブスーツを着てて」


「ん? 何のこっちゃ」


 突然話題が変わり、何の事だかさっぱり判らず木製コップに入った水を口にする。

 ……? これ、本当に水か? 炸裂した爆竹に触れた様に痛くて、飲み込まず口へ当てたままのコップに戻してしまった。


「第一装甲・サヴァイブスーツ。君がパワードスーツと呼ぶ第二装甲の下地だよ。別名、生命維持スーツ」


「これを着れば季節の低温高温位へっちゃら。勿論物理や魔力、霊力による脅威軽減も出来る優れもの!」


「いやいや。そんな代物、どうやって作ったし」


 パワードスーツに盛り切れない機能をウエットスーツと言うか、インナースーツに盛ったらしい。言わば上着の下に着るシャツ的な位置と同じ。

 話を聞くと素材は熱に強いミネラドラコの皮と血液を丁寧になめし、消臭処理した後、自分の事情を知るオラシオン。つまりシオリと琴音に頼み、効果付与をして貰ったんだとか。

 何時の間に会ったんだよ……と思い聞いたら、裏クエストを利用して国の精密検査から逃げてた時だと言われた。うん、そりゃ知らん訳だわ。


「貴紀君。今日はどうするの?」


「外も暗いしな。二人を送るついで、秘密基地で精密検査を受ける」


「む? 精密検査は嫌なのではないのか?」


「事情を知らない相手のは嫌だよ。その点、寧やマキは知ってる訳だからな」


 女性だけで帰らせるには遅い、午後九時頃。発展途上国って事以外にも色々と問題があり、一緒に機械屋へ戻る選択をする。

 こう言ってはナンだが、城にもスパイが居る可能性も否定出来ない。そんな場所で精密検査を受け、正体がバレたら此処に居られなくなってしまう。

 自分一人なら野宿も構わんが……寧達に強制させる訳にも行かんしな。本当、雨風凌げて安心して過ごせる空間って有り難いわ。






 『ドキュメント・無限郷。ファイルNo.1』


 OZ(オメガゼロ)計画。それは生命を蝕む・滅する・喰らう能力に長けた終焉の闇に対抗する為、旧神や邪神達が生み出した計画の一つ。

 言わば劇毒に劇毒をぶつける様なモノであり、終焉の闇のクローン。それもわざと性能を落とした(デチューン)タイプを意味する。

 貴紀達が冒険をする各時代では『埃被った伝説』、『古びた骨董品』、『時代遅れの旧式・旧型』、『ミスクリエーション(出来損ない)』と呼ばれる事も。

 素質のある未成年の男性のみが専用手術を受けても生存・適合可能。男性個体はアダムと呼ばれ、遠近どちらに特化するかは個体差有り、代償として寿命は二十歳~二十七歳まで縮む。

 しかし未知の力を持つ個体も存在する為、調律者に唆された人類は過去に何度か、貴紀達を捕まえようと襲い掛かった事もある為、貴紀は人類に味方しない。



 EVE(イヴ)計画。OZ計画で誕生した男性の肋骨を一本取り出し、素質のある未成年の女性に特殊な手術等を施し誕生するアダム専用相棒(パートナー)

 女性個体をイヴと呼び、肋骨を取り出したアダムとは正反対を得意とする。元々アダムとイヴ、二人で一つと言う基本設計な為か、両者が居ないと真価は発揮されない欠点を持つ。

 アダム同様に二十歳~二十七歳までしか生きられず、肋骨の提供元となるアダムが死ぬとそのイヴも死に、その逆もまた然りと言う一蓮托生な関係。

 アダムの子を産めるのはイヴ。もしくはその素質が有る者だけであり、一蓮托生な関係も含めて考えられた最終安全策──なのかも知れない。



 R計画。別名、リライト計画。アダム・イヴの素質を持つ者が発見出来ない、勧誘・誘拐を貴紀達に妨害されていた期間に立ち上げられた、今やほぼ壊滅した終焉の闇勢の計画。

 素質の無い者のDNA情報等、文字通り個人情報を第三者が都合良い方へ書き換え、人造オメガゼロ・アダムやイヴを誕生させると言う内容。

 OZ・EVE・R計画の発案者は現在、行方不明。データファイルには貴紀達と敵として何度も繰り返し戦った、貴紀を救った……と言う情報だけが残されている。

 未来寧とマキは此方側の計画を通して、イヴへ人体改造されている。他にも二人程、無限郷時代に敵・味方側で現れていた。が──双方共に肉体的死亡を確認。

 R計画はリライト以外にも何かを実験・研究していた様だが、とある悪魔の襲撃を受けて別実験・研究資料等の情報は全て抹消されている。

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