表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドロード  作者: オメガ
一章・I trust you forever
85/384

帰還

 西暦七千三十二年、二月一日・午前八時四十分。トリスティス大陸へ行く前にゲートを通ったヴォール王国・王の間へ帰還。出発日が一月二十日だったので、十二日は経過していた。

 其処からが大変だった。他のオラシオン四人は自分が最後にゲートへ入った直後、弾き出されてトリスティス大陸へ行けておらず、琴姉共々質問攻めを受ける中。

 自分が負った怪我のレベルを知るや否や、慌ただしく集中治療室へ運ばれ、治療を受けた。全身に擦り傷切り傷、左腕や右足貫通、両足共に血塗れ……ともなれば、当たり前か。

 体内側と体外側から魔力・霊力の回復を促す治療法のお陰で、集中治療室からの脱走は帰還日より三日後。見舞いは城の人達や、心に許可を貰った人達だけ。


「おっ、漸く戻って来たか。おぉ~い、注文の追加だ。エルフ森の甘味を一つだ!」


 二月四日、午後十二時頃。賑わう町中を歩き冒険者ギルドへ足を運ぶと早速、と言うべきか。スキンヘッドの大柄な大将が此方を見付けるなり、二階の休憩所から話し掛けてきた。

 昼頃と言う事もあり相も変わらず数多くの冒険者達でほぼ席は埋まり、談笑やら反省しながら思い思いの食事をしている。

 受付に巴の姿は──見当たらない為、手を振り呼ぶ方へ行き四人席の向かい側へ座るとビール入りのジョッキがあり、大将は毎度自分が頼むメニューを注文した。


「ただいま、大将。相っ、変わらず厳つい顔だねぇ」


「はっはっは!! そう言うお前さんは──下手な作り笑顔は止めときな? 巴や嬢ちゃん達にも見破られるぞ」


「そうかなぁ」


 無理矢理笑顔を作り、何時も通り元気に話し掛けてみる。けれど……やっぱりと言うかなんと言うか、見抜かれた上、忠告までされるとは。

 笑って口にこそ出さなかったが、まさか此方の心情を雰囲気で察するとは──大将、人を見る目はすっげぇなぁ。話題変更と言わんばかりに、一枚の新聞を出され目を通す。


「自分達が不在の間に、襲撃を受けたのな」


「魔神王軍と調律者って連中だ。後者の方に就いてだが……何か知ってるか?」


「調律者!? あぁ……知ってる。どんな奴等が襲撃に参加してたか、何か情報は?」


 大将曰く、自分達が出発した二日後。ヴォール王国へ軍を率いて攻め込んで来たと言う。運良く残っていたオラシオンとベビト率いる人間の防衛隊で食い止め、事なきを得たそうだ。

 魔神王軍配下の三騎士を名乗る女剣士をトワイ・ゼクス、志桜里・フュンフが二人掛かりで挑み撤退させ。下級魔族と魔物、調律者の機械兵はベビト達が倒したと言う。

 三騎士……トリスティス大陸で遭遇したコトハは厄介な相手だったが、まさか此方にも別の奴が現れていたとは。話から女剣士、とは言うものの、実際はどうか分からないらしい。


「でもな。ベビト兵士長が娘さんと同い年の娘っ子二人に叱られてた姿は、不謹慎ながらも笑った笑った!」


「ん? ベビトに娘がいるの、知ってるんだ?」


「当然。時折夜にやって来ては、愚痴やら武勇伝を交えながら話してくれるからな」


 本当、ベビトには悪いけど寧とマキに何故叱られているのか~とか、分かった気がする。十中八九、調律者が操る機械兵の部品を頂戴しようと考えてたけど。

 あの人が使う武器って、ブースターの付いた鉄球なんだよな。早い話、倒す=部品も破壊って構図が出来上がり、リサイクル出来ない屑鉄になったんだろう。

 大将と仲良く話してる光景も、簡単にイメージ出来る。なんせ同じ年頃の娘持ちな父親だもん。自分も子育て経験はあるが……年頃の娘は本当に扱い辛いし、ある意味理不尽にも感じる。


「被害とかも気になるが、寧達は?」


「彼女達なら機械屋に居る。被害は比較的軽微だな。迎撃に向かった連中や国も」


 知りたい情報が聞け、ホッと胸を撫で下ろした。すると大将はニカッと笑い「今度はそっちで起きた話も聞かせてくれや」、そう言った。

 正直話したい訳でも無かったが、結局国王の心にもレポートを書いて提出したんだ。事前に一部憶測も入っていると伝えた上で、トリスティス大陸で体験した出来事を話す。


「ってな事があった」


「成る程な。そりゃそんな体験をすりゃ、雰囲気の一つも変わるってなモンだ」


「失礼します。此方、ご注文の品になりま~す」


「でもまさか、問題の根元が地元の連中とはな……あ、ありがとうございます」


 話している内に注文された品を、女性ウェイトレスが持って来た。飲み物付きの甘味セット、エルフ森の甘味。ドリンクは勿論、エルフの森から輸入した茶葉から淹れる緑茶。

 肝心の甘味はエルフ森で取れた甘い樹液、枝豆などをふんだんに使ったずんだ餅。これが今現在、冒険者ギルドの食堂で食べれる一番お気に入りの甘味。

 お礼を伝えると、ウェイトレスは営業スマイルを浮かべて去って行った。手を合わせて頂きます。感謝の言葉を口に出し、木製フォークで頂く。


「相も変わらず好きだな。甘味」


「歯が浮く程甘いのは勘弁願うがな……ん?」


 名残惜しく思いながらも完食。自分が食事中の邪魔は嫌うと知ってか、食べ終わり緑茶を飲んでいるタイミングで大将は三枚のクエスト用紙を出して来た。


「何時も通り、この手のクエストは俺に言えよ?」


「あぁ、了解了解。期限が近いのは……コレか」


 差し出されたクエストは、一般向けではない依頼書。自分の一般冒険者ランクは藍、けれど裏クエストを与えられた際はランク『スレイヤー』扱い。

 裏クエストは一般冒険者が受けれない、受けないモノが多い。死んでも事実を闇に葬られ、抹殺される危険性を孕んだ依頼すらある。故に報酬金額は当然高いモノもあるが。

 危険手当ても含まれているので、金貨数十枚や百枚なんざ当たり前。中には銅貨数枚ってのもあるけどな。勿論、そう言った依頼の解決も自分の仕事だ。

 依頼内容は魔物・魔族退治や駆除、潜入捜査や抹殺。色々あるが、今回差し出されたクエストは──駆逐二枚の救助が一枚。期限が近いのは救助。


「一日ずれになるが、救助から全部受ける」


「悪いな。報酬金が少ない上、ナイトメアゼノシリーズが出る範囲だから誰も好んで行かねぇんだ」


「そりゃあ、達成条件に無い奴ら相手の妨害有りで銀貨五十枚とか、命賭けるには安過ぎるわな」


 取り敢えず、ヴォール王国近辺のアルファ村から来た救助クエストを解決しよう。魔神王軍やら調律者軍の脅威に対し、抵抗出来る希望が有るんだと知らせなくては。

 その為にならオメガゼロ・エックス、スレイヤーの名を轟かせるのもやむを得ん。少なくとも『貴紀』と言う人物が目立つ訳じゃない。正体がバレない限りは……な。


「おっと……お迎えが来たらしい」


「本当に悪いな。どちら側の顔も大忙しで」


 背筋がゾッとしたので、確認がてらチラッと一階の入り口側へ目をやると……武装した冒険者ギルドには不似合いな紫色と銀色の髪を靡かせる二人のメイドが冒険者達に絡まれていた。

 軽く話した後、大将の言葉に皮肉も交え「本当にな。信頼されるってのも、困ったもんだ」と言い、結果が分かりつつも階段を駆け降り琴姉とシオリの元へ向かう。


「ちょっとちょっと。オラシオンの二人が何かしたの?」


 何やらムッとしてる琴姉が見えた為、ヴォール王国の国民なら否が応でも知ってる『オラシオン』の名を出し、二人が誰か知らない冒険者達へ注意喚起も含め話し掛ける。

 すると二人を囲んでいた冒険者達は驚いた顔で虫を散らす様に、そそくさと席に戻って行った。ナンパなら、相手が誰か位は理解するべきじゃないだろうか?


「さっきの連中、坊やの仲間?」


「仲間~……と言うか、同じギルドで働く同業者?」


 ギルドでは主にゼロ達とパーティーを組むけど、時折ボッチと勘違いされて誘われる場合もある。そんな訳もあってか、他の冒険者達に仲間意識は持って無い。

 簡単に説明すると琴姉に後ろから首根っこを掴まれ、ギルドから出て行こうとする。突然の事に何事かと思っていたら、シオリが此方を覗き込み──


「な~る。それじゃ、精密検査に戻ろっか」


「いや、精密検査はちょっと……御免蒙りたい」


「もう子供じゃないんでしょ? なら検査の準備中に脱走なんてせず、素直に受ければ良いのよ」


「ちょ、琴姉ぇ~……」


「琴姉言うな!」


 ズルズルと引っ張られ外へ出た瞬間、今や慣れ過ぎた感覚が世界を一瞬にして覆う。

 いやまあ、世界を~とか言ったけどさ。例えとしか言い様がないのよね。こればっかりは……


「トリスティス大陸を救った英雄らしかぬ格好ね?」


「嘘吐け。絶対、内心大爆笑してんだろ」


「ふふっ。大正解」


 時間が停止した世界の中、少女姿の副王が現れた。こう言う言い方をすると、町中の敵キャラが裏ボスって感じに聞こえる……嫌だな、そんなゲーム。

 右手で口を隠し、微笑む顔に対し呆れた顔で返しつつ立ち上がる。そりゃまあ、魔神を名乗る野郎を倒した男の格好や発言じゃなかったけどさ。


「話なら、ギルドの椅子に座ってでもするか?」


「残念ながら、あの中で話は出来ない。それに今回は、貴方を劇場に誘いに来ただけだから」


 劇場──その言葉を聞きいて差し伸べられた手を見、魔人ファウスト専用の固有能力『悪夢の道化師』を、アナメ達の事を思い出す。

 永遠に繰り返される悪夢から解き放ち、トリスティス大陸と住民達を救い、殺した。その事実が心に今もなお、棘として深く突き刺さり思わず俯く。


「貴方は蟻を踏み潰して、一々悲しむ気?」


「それは……」


「小石に躓いたからその小石が砕けるまで殴る気? 違うでしょ、貴方がやるべき事は」


 言いたい事は分かる。自分が進む道は今回みたいな出来事が何度もあり、一々悲しみ立ち止まっていては時間が足りないと言うのも。

 辛い、悲しい出来事に出会う度、答えを見つけるまで立ち止まっている暇もない。そうだ。今までも、親友や仲間と殺し合ったり見限り見殺しにした。

 自分の手で殺した人達だって沢山いる。勝利とは敗者の未来を奪う行為。大切なのは罪を自覚し、償う為に生き続け、そして──優しさを持ち続ける勇気を持つ事。


「言ったでしょ。貴方の根本的な強さは腕力や魔力とは全く別のモノだって」


「心の強さ……か」


 人間、自分自身が持っているモノには意識が向き難い癖に、他人が持つモノに対しては敏感だ。故に妬み・恨み・嫉妬し欲しがる。

 仮に手に入れても、幾らかすれば興味や関心は向かなくなるって言うのにな。そう言う意味でも、自分が持つ本来の強さは──誰もが持つ『心』……か。


「そうだな。此処で挫けてちゃ、前へ進めないもんな」


「えぇ。その人間らしさ、最後の最後まで持ち続けなさい」


 小さく頷き、顔を少し上げて副王へ視線を合わせる。相変わらず麦わら帽子を深々と被り、二月とは思えない白いワンピース姿が目に映る。


「それじゃ、さっさと劇場へ行くわよ。そろそろ上映時間が迫ってるんだから」


「え? 時間止めて上映時間ギリギリって……何してたのさ?」


「暇潰しに、侵入者と遊んでたのよ」


 侵入者、遊ぶ。その言葉で侵入者が誰か、遊ぶとはどう言う意味か大体を察してしまった自分は恐らく、ソチラ側の事情にも詳しくなってしまったのだ。

 と、内心思った。正直、副王が言う侵入者の手下と一度戦った事はあるが……仲間達と戦っても追い返すのが精一杯。倒せるかも知れんが、後々更なる面倒事が来る。

 ずっと差し出されたままの手を取り、そっと目をつぶる。理由は至極簡単だ。直視すると発狂して即死するからだ。






名前:覚醒空想魔神イブリース・パズズ

年齢:不明

身長:193cm

体重:151kg

性別:不明

種族:融合悪魔

設定


 マグマエネルギーを完全に取り込み、進化した姿。本人は『融合神』と言っているが、実際は『融合悪魔』止まりである。少なくとも『獣』から『人』を飛び越しての進化ではあるので、進化は早い方。

 アナメ、シュッツを強制召喚し取り込み、粘土さながら形態変化を始め──魔人を取り込んだ事で融合獣時のゴツい姿から離れ、魔神・パズズの姿を模倣した事でスリム化に成功。

 パズズとは──紀元前千年紀、アッシリアとバビロニアで崇拝された魔神・パズズを模倣した形態。一角を頭部に持ち、獅子の顔に二対の翼。蠍の尾に鷲の脚、蛇の性器を隠し持つと言う悪霊の王。


 追加で両肩にファウスト、メフィストの仮面を付け、魔人達の装甲も装備。ステータスも上昇しており、所有スキルも相まって慢心気味になりスキルを完全に理解していなかったと言うのも、敗因を作る切っ掛けの一つ。

 スキルは融合獣・イブリース時とほぼ同じだが各能力やスキルは、一だけレベルアップしている。慢心から愚かしい行動をしなければ、活躍の機会は多かっただろう。




名前:ナイトメアゼノ・イブリース

年齢:不明

身長:211cm

体重:87kg

性別:不明

種族:ナイトメアゼノシリーズ

設定


 慢心から注意もせず取り込んでしまった貴紀の魔力を凝縮した弾丸、エナジーバレットが原因で溶解する中。ナイトメアゼノ・ハザードが飛び込みお互いに吸収し合い誕生。

 深緑と橙色が混ざった汚物に近い色で、パッと見は黒紫色ドレス姿の長身者。しかしドレスと思わしきモノは溶けめくれた皮膚であり、中は飢餓と分かる程細く、必要最低限人の形を残す皮と骨しかない。

 背中と腰にカラスを連想させる黒い翼、肋骨と脇腹から追加で生え合計六本の痩せ細った腕。腐り剥がれた獅子頭をフードの様に、蛇の如く長い頭に被っている。


 異臭・悪臭はナイトメアゼノ・ハザードより酷く、思わず手で口や鼻を覆っても、呼吸すら満足に出来ず咳き込むレベル。例えるなら科学薬品や毒ガスが蔓延する中、防護装備無しで歩き回る程。

 暗い中でも怪しく不気味に光る紅い眼は、腐り落ちた眼球を魔力で代用したモノ。それ故か視覚を失った代わり魔力感知を習得、死角が無くなり、ドレスの内側にある触手を使い遠距離にも対応可能に。


 その正体は太古の昔、トリスティス大陸に降り立った守護女神。しかし遥かなる時の流れにより人間・蜥蜴人(リザードマン)・ドワーフ達から『生け贄』を与えられ守護女神として澱み、力が大幅に弱体化。

 凶作や良くない事がある、続くと祠を蹴ったりお供え物をしなくなったりし始め信仰を失う。遂には祠を廃棄用の穴に置き、ゴミや不要物を棄てられた。


 与えられた『生け贄』により澱み、力が弱体化。信仰を失うも守護女神として守ろうとする心に『闇』が取り憑き、融合神イブリースとして誕生した。

 結局は人間や蜥蜴人(リザードマン)、ドワーフ達の行いが招いた自業自得であり、イブリースや守護女神は被害者側。

 暴走する自らを止めて欲しいと必死に願った結果、オメガゼロ・エックスである貴紀をゲートを通し西暦四千十六年に呼び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ