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ワールドロード  作者: オメガ
一章・I trust you forever
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イブリース・後編

 一時は立っている事が困難な程に揺れていたが、今は収まり揺れも無くなった。片足立ちでバランス感覚が悪いとフラッとするが、アレより酷い。


「我の計算では後五分も経てば本格的な噴火が始まり、最終的にこの大陸は滅亡。そして悪夢のループが再び始まる!」


 五分……インスタントのカップうどんを作る時間しか残されてないのか。とは言えど、奴を倒したからと言って噴火が止められる訳じゃない。

 仕込んだ策は奴を、イブリースを攻略する為のモノ。例え今噴火を無理矢理止めても、炭酸水を良く振ってから開ける様な結果しか見えん。

 それに噴火が起きないと鉱石は無くなり、生態系や大陸での生活環境すら変わる。ん? ちょっと待てよ、噴き出す……水?

 そうだな。そうするしか悪夢脱却と生存を両立させる方法は無い、か。みんな、やって貰いたい事がある。頼めるか? そう尋ね思考を共有する。


(良いじゃない、その考え)


(あー、確かにそうすれば両立出来るな。てか宿主様も何度か現代でやった経験あるしな)


「……ほう。それは俺達、戦闘ばかりの魔族や幻想では思い付かん発想だな。良いだろう。その手が最善そうだ」


 災害者や被害者では無いと、割りと冷静に思考が出来たり第三者視点で見たりするが……今現在はそう言う状態らしい。

 確かに学校での成績は悪い。が──空想したりして遊ぶ事は大好きで『小説を一時期自作』していた位だ。あれやこれやとイメージはするさ。

 ウォッチを通して自分の考えを三人に共有したら、それが今打てる最善だと言われた。他人任せって言うのは理解している。けれど……やるしかない。


「王よ。その気持ちは大事に持っておけ。それは勇気を奮い立たせ、信頼するに足る材料となる」


「何かは知らんが、噴火は誰にも止められん。そして貴様らは敗北し永遠の悪夢が繰り返される事も!」


 言われた言葉に深く頷き、信頼するが故に今はこれ以上何か言うのを止めようと決めた。きっと頼んだ事を果たしてくれると信じて。

 野郎は胴体と頭で二手に分かれ、打撃と怪光線で襲って来る。それにしても撃った光線が誤射して胴体に当たるも気にせず撃つ辺り、余程頑丈さを信頼しているのか?


「フンッ。脆弱な光線なんぞ、片手で十分だ」


「あぁ、理解している。確かに『貴様には』脆弱な攻撃だろう。貴様には……な」


「胴体の攻撃を頼ってるのか? にしては誤射が多い……何だ、声?」


 ヘッドの怪光線はルシファー相手だと威力が弱く、決定打にはなり得ない。そうと分かっていながら何度も撃つも、右手や左手に装備した盾で受け止められ被害は少ない。

 しかも姿勢や動き回りながら撃つのが悪いのか、ちょくちょく自らの胴体に誤射しても気にする様子も無い。

 胴体もリアクション一つ取らず、打撃や蹴りで攻め込んで来るも動きは頭が付いてた時より鈍く、簡単に防がれている始末。これでは二対一の意味がない。

 魔力を使わず右手で蹴りや拳を流している時、ヘッドの光線が胴体に誤射した際──確かに聞こえた。小さな声だが、間違いなく少年少女の声だ。


「おぉっと……もう気付いたかぁ。噴火までの後二分、もう少し遊びたかったが仕方ない」


「な……っ!?」


 此方が声に気付き、胴体の両手を掴み動きを封じていたら奴の声か意思に反応してか、胴体のあちこちに子供達の顔が浮かび上がった。

 顔の一つ一つが此方に助けを求め、泣き・喚き・叫ぶ。ハッキリ言ってこんな事、正気の行為とは思えなかった。いや、思いたくない。

 何度も繰り返される「助けて……怖いよ、死にたくないよ」と言う悲痛の声に反応してか、頭が酷く痛くて……大きな爆発、肌が溶けた人間、崩壊した都市。

 それが何度も繰り返し見える……これがフラッシュバックと言うヤツ、なのか?! こんな地獄絵図と自分に、一体何の関係が?


「攻撃したければ思う存分やれば良い。但し、ダメージは我ではなく取り込んだ連中が負うがな!」


「チッ、あの触手は人質を得る為の行動だったか……っ、今は、耐えるしか」


 動きを封じる。と言っても下手に動き回られない様に両手を掴んでいるだけであり、足による蹴りや突如背中から生えたグロい触手の攻撃には無防備。

 勿論そんな攻撃チャンスを逃す筈もなく、野郎と胴体は攻撃し放題。ヘッドは此方の背中を駆け登り、血管っぽい触手で首に巻き付け絞めてくる。


惑星(ほし)の守護者が人殺しなぞ、出来る筈もあるまいて。ふは、ふはははははは!!」


 正面からは子供達の助けを求める悲痛の声。背後からは耳障りな野郎の五月蝿く、好き勝手言う声。

 漫画やアニメでもよくあるパターンだ。主人公やメインキャラが敵に人質を取られ、一方的に攻められると言う展開は。

 大抵は仲間が助けてくれたり、人質が自らを犠牲に倒すチャンスをくれる。されど今現在の状況では仲間が助けに来る展開は無く、後者も無い。


「両手が空かなければウォッチは使えず、この場所へ仲間は来れん。我の勝利は確定した!」


「と──思うだろ? ドイツもコイツも、俺達がどう言う立場か分かってねぇ連中が多いんだよ。なあ、ルシファー」


「な、何ッ?! 誰だ、貴様は……」


 お前の言う通り、ウォッチは最低でも片手が空いてないと使えない。こんな噴火寸前の火山へ飛び込む正気の阿呆はいないだろう。

 でもな。お前さんは一つ、大きな『誤認』をしているっぽいな。確かに『交代』やら『協力系』なんかはウォッチを利用するが──

 ゼロ達は基本的に『己の意思』で共に居てくれている信頼出来る仲間だ。別に拘束している訳じゃない。手っ取り早い話、好き勝手に出入り出来るんだよ。

 現に今、足下の影から伸びてはお前の後頭部を鷲掴み、握り潰そうとしている黒い異形の右腕がゼロだ。さあ、どうする?


「ぐ、ぐぐぐッ……フッ。まあ良い、噴火までの時間は十分稼いだ。後はソイツら共々、仲良くマグマに呑まれるが良いわ!」


「なっ、あんにゃろう。まだそんな手を残してやがったのか!」


「構わん。ゼロ、霊華の力を借りる。ウォッチを回すから奴を捕まえろ」


 また酷く足場が揺れ動き、手から離れるとドサクサに紛れて後頭部に蝙蝠らしき羽を生やして、噴火口から逃げ出しやがった。

 追うにしても胴体が手を離してくれない。何か考えがあるらしく、文字通り手の空いたゼロへイブリースの胴体を捕まえろと呼び掛けると──


「えぇ~。イカサマする奴の言葉に従うってのはど~もなぁ~」


 出番を取られた事に拗ねていた。子供か!? とツッコミたいけれど、今は手が使えるゼロしか突破口も助かる手段も無い。

 なんとか手短に説得し、従って貰おうと考え思考を巡らせているとお母さん……霊華が呆れた様子で溜め息を吐き、口を開く。


(何時までも子供ねぇ。こんな状況でアンタは自分の意地を通して、貴紀を死なそうって訳?)


「むぐっ、うぐぐぐぐ……わぁ~ったよ。ヤれば良いんだろヤれば!! ルシファー、次は俺に譲れよ?」


「勿論だ。今回は初戦で得た情報から、お前向きでは無いと判断しての行動だからな」


「よく言うぜ……skill(スキル)・霊華。defend(ディフェンド)Are(準備は) You Ready(出来たか)?」


 我が儘を言う子供へ言う様に、ゼロへ与えられた使命を思い出させる。使命と意地──その優先度に少し悩みつつも、黒い異形の腕が巨大化し胴体を掴み上げる。

 次に関して話ながらも起動させるべくウォッチを回して叩き、何で・誰が・何をするかを伝えつつ準備の有無を尋ねた後、効果が発揮された。


「よし、捕まえたぜ。さあ、俺達も脱出だ」


(えぇ。一時的とは言え対策案も有るんだし、試さないとね)


 もがき暴れる胴体はそのままゼロに任せ、目を閉じたルシファーが胸元で腕を交差させ目を見開くと、一瞬で噴火直前のスカイマウンテンから外へ脱出。

 いわゆる瞬間移動(テレポーテーション)。自分も出来ると言えば出来るけど回数は一回な上、回数制限付きの覚える能力を使う必要がある。魔力消費量も多く、一部の例外を除き戦闘向けじゃない。

 転移した先は廃棄物場が見える近くの場所。ふとスカイマウンテンを見上げる。青白くも黄色が混ざった長方形の超大型三重結界が包んでおり。

 例え噴火しても飛び散る火山弾や溢れる溶岩は、少し位なら止めれるだろう。後は──


「後は俺の魔力で噴火を押し留めつつ冷却、静久を呼び出しサポートさせるだけだな」


「絶対妨害受ける。に金貨を三枚賭けるぜ」


(ちょっとゼロ? それじゃあ賭けにならないわよ)


 こんな危険な時だって言うのに、賭け事すら出来る神経の図太さには頼もしさすら覚える。氷地獄で長年過ごしたからか、ルシファーの魔力は冷たく。

 元々持っている魔力が重力系である為、噴火を抑え冷却するのに使って貰う。噴火とは言わば沸騰したヤカンだ。熱が高まり、出入口から噴き出す。

 ならばどうするか? 熱源から遠ざける、冷やす、火を止めるのがベスト。料理経験やらヤカンでお茶を沸かした事があれば、考え方次第では思い付くだろう。


「……妙だな。余りにも静か過ぎる。それに──」


(それに、何よ?)


 今現在は穴から噴き出す空気を塞ぎ、元栓を締める様な行為。妨害行為があるだろう。そう思い周囲を警戒し身構えていた中、不自然過ぎる程の静かさに疑問がふつふつと浮かぶ。

 何故攻めて来ないのか、噴火は自分達を足止めさせる為のカードではないか? ならば本当の目的は何なのか。思考が走る中、手応えが変だと言う。


「押し返される手応えが弱い。噴火の勢いが弱まって……違う。マグマが吸い取られている様な感じだ」


「なんだそりゃ。と言うかだな、俺としてもそろそろ面倒臭くなって来たんだが……」


 曰く噴火の勢いが『内側』から弱まっているそうだ。よく見ると噴火口以外の出入口からマグマが溢れ出している様子が全く無い。

 まるでマグマを喰らう『寄生虫』が吸っているんじゃないだろうか? そんな考えさえ浮かんで来る。ゼロも胴体を捕まえてるのに飽き始めてるし。


「──!! 王よ。その発想、どうやら『当たり』らしいぞ」


(アイツ。逃げ出したと見せ掛けて、別の出入り口から入ってたのね!)


「これは……宿主様。どうやら俺達、まんまと一杯食わされたらしいぜ?」


 試しに魔力探知を四人で行うと──ビンゴ。スカイマウンテンの最深部、自分達が戦っていた場所にイブリース・ヘッドの魔力反応を見付けた。

 しかも魔力量が上昇している辺り、本当にマグマを吸い取っているらしい。そしてもう二つ……枯れ果て活動停止していた筈の大樹・ヴェレーノ。

 アレの根が真下まで伸び、ヘッドの触手と絡み合ってやがる。そんで最後の一つ。三種族が出入りする穴や噴火口から魔人・インサニアが溢れ出している。

 大樹・ヴェレーノは死んでおらず、チャンスを待っていた。イブリース・ヘッドの計画を読み切れず、阻止出来なかった……本当、一杯食わされたな。


「霊華、結界の強度を上げろ!」


(無、理……これ以上は、規模が大きくて──)


 これ以上、噴火を押し留める必要は無いと判断したルシファーは作業を中断。結界の強度を上げる様に言うも、山頂は雲の遥か上。

 更にスカイマウンテン全体を覆う結界と言う事もあり、霊力の消耗は激しく話している間に内側からインサニアに破壊され、飛び出して行く。


「御勤め御苦労。よくぞ我が体を噴火から救った。そして──もう貴様らに、我らと真っ向から戦う力は残ってなどいまい」


「触手による誘拐は人質を得、俺達を誘い込む罠。噴火も此方の消耗と自身の強化&魔人の量産……随分と手の込んだ罠だな」


 四つの集落へ飛んで行くインサニアに紛れ、イブリース・ヘッドが此方へ飛んで来ては触手を伸ばし胴体を奪うと合体し着地。

 トドメとばかりにアナメ、シュッツを強制召喚し融合しやがった。子供達や二人に加えウズナちゃんの悲鳴が混じる中、粘土さながら形態変化をし始め。

 完成した姿はスリムで……そう。紀元前千年紀頃、アッシリアとバビロニアで崇拝されたと言う魔神・パズズを連想させる形態だった。一角を頭部に持ち、獅子の顔に二対の翼。

 蠍の尾に鷲の脚、蛇の性器を隠し持つと言う悪霊の王。追加で両肩にファウスト、メフィストの仮面があり、所々に二人を守っていた装甲もある。


「この溢れんばかりの力……これが『融合神』の力!! ふふふ。そうだ。今や我は融合神、覚醒空想魔神・イブリース!」


 覚醒空想魔神・イブリース……ねぇ。自分、いや、俺から言わせればイブリース・パズズだ。三人のお陰で少しは休めた、魔力もかなり回復した。

 後は疲弊した三人に代わり、俺が戦わないとな。ウォッチを回して貰い、俺自身と交代して貰う。と言うか……仕掛けはまだ動かないのか?!

 いや、インサニアの襲撃を受けてはそんな余裕も無いのが当たり前だ。全滅さえしていなければ、俺が時間を稼げばきっと……今はみんなを信じ、待つ時だ。






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