monere・後編
「16、1666666!! :7♡4:7♡4、}:8\:7♡○%&2…#…"4!」
……遠吠えが終わったかと思いきや、全く理解不能な言語で話し始めやがった。こうやって聞くと、理解出来ない外国語って言語は違ってても何を言ってるかサッパリ分からん。
ただ何となく、喜んでいる行動から察するに誕生出来た事を喜んでいるのだろう。さて、産まれて早々で悪いんだが──幼年期の『獣』から成長する前に仕留めなければ!
「@♭2…-…◇・~;…\×。5-…@7~6、0♡0♡(:♪4…×¥-'…-8、-/♭/(7※◇:&×○?」
(何故人間や生命を護ろうとするのか? だってよ。宿主様)
「……俺が『護りたい人間』を救う為だ」
ゼロを通訳として通し、会話を成立させる。例え人類に融合獣や今現在の出来事を伝えても科学的根拠は~等と戯れ言を言い続け、憎しみや負の感情をぶつけ合い融合獣を生み出し続ける連中なんか死んでも構わない。
寧ろ率先して死んでくれと言いたい。いや、殺してやるから出て来い。自分が……俺が護りたい人間を生き残らせる為、不要な枝は切り落とさなければならない。そうすべきなんだ。
トリスティス大陸の連中やヴォール王国の奴ら、大人も子供も関係ない。ドイツもコイツもこのまま成長すれば、必ず融合獣や怪物・怪獣になる連中だらけ。いずれは怪獣島とか呼ばれるレベルにな。
「☆2/^€:。&…:2…/#※+…-○/2…4&…○♪*644…<&;。0♡0♡{:%…:+…{…:2395○+-2'/、5/&♭1-…€+☆)×…€♪」
(テメェ、何処まで知ってやがる?)
あぁ、そうだ。例え極悪人と言われようが構わない、勇者や英雄には出来ない事を俺はやる、やり遂げてみせる。必ず破壊し止める。それこそ『アイツ』が俺を一番に信頼し、託した希望であり約束。
ん……? アイツ、アイツとは誰だ? 妙に変な事を口走ってるな。それはそうと平和に慣れ過ぎて自ら戦う意志を持たず、頼り続ける人類を救う義理等、俺には微塵も無い!
そう胸の内で決意を固めたからか……少しだが色々と吹っ切れた気がする。人命救助なんざ出来る奴がやれ、俺は『結果的』にしか救助なんざ出来ん。
「ひ<;…。い×…♡、必ず知○。%€=+€\3;…4-/♭/2…、わ♡0れ&5る理由を」
(十中八九、大体の予想はつくけどな!)
何時かは必ず、その時が来るだろう。だから俺は俺自身の戦いをする。例え再び世界や人類を敵に回すとしても、やり遂げなければならない理由がある。その為にも──
俺の意志と任意で、枯れ腐った枝は切り捨てる。……また無意識的に変な事を思考してるな。けれどまあ、やる事に変わりはないから別に構わんけどな。
それは別として──予想以上に融合速度が早い。取り込まれた三人の声がケルベロスに混ざり始めている辺り、コイツは『獣』からの進化が早いのかもしれん。
「お前達の暴走は俺が、俺達が必ず止める。例え、再び世界や人類を敵に回すとしても」
(スーツの活動限界はまだ余裕がある。落ち着いて行けよ? 宿主様)
「残☆カ×風情2…、吠~○な!!」
「その残りカス風情に退治され、負け続けてるのは何処の誰だか」
三勢力は必ず止める。それが俺を信頼し、今も尚昏睡し続ける『アイツ』から託された希望であり、果たすべき約束。……クッソ、どうもこの空間に巻き込まれてから、無意識的な思考が多い。
取り込まれた三人には悪いが、お陰で奴の言葉が幾ばくか理解し易く、数秒の間が無くなって会話が比較的楽だ。悪口に対して挑発で返してやると、また天井に向けて吠え始めたがな。
「固有異能……譎詭変幻」
(来るわよ!)
この空間は『スキル封印』能力があり、主にスキルで戦う戦士や冒険者殺しのフィールド。逆に魔法・奇跡・異能・機械には無関係だが、補助・底上げ・強化するスキルは常時封じられる。
スキャンから通常にバイザー機能を切り替え、演劇さながら動く舞台セットやトリスティス大陸の三種族を表すパネルに紛れ、複数のケルベロスが四方から飛び掛かって来た。
どうせ幻影だろうと思いつつ。一応は盾を構え踏ん張ると──正面から来た奴の爪を受け止めた時、グッと押される手応えが有った。故に他は実体無き幻影、そう判断し空いている右手で殴り込む。
「何──っ!?」
(本体じゃ……ない?!)
本体と思っていた奴の狼顔を拳がすり抜け、左右後方より迫る幻影が鉤爪で切り裂かんとスーツに傷痕を付けては舞台セット裏へ消え、今度は種類を増やして飛び掛かるの繰り返し。
増えた幻影の中には桔梗や水葉先輩、記憶が欠如してから遭遇した敵達がチラホラ見える。口が裂ける程不気味に笑う姿が偽者感たっぷりで、俺に対する嫌がらせとしか思えん。
「だがまあ。見世物としては幾らなんでも『見せ過ぎ』だ」
(おっ、何か攻略法でも見付けたのか?)
(いやいや。もしかしてアンタ、気付いてないの? 私達はとっくに見切ったわよ?)
(え……マジで?!)
ウォッチの中で言い合うのは止めてくれ。俺自身の精神と繋がってるらしく、耳の塞ぎ様がなくて五月蝿い。この攻略法は静久の十八番だが、魔力が少しでも使えるならこの方法が楽だ。
盾を外し、代わりに漆黒と純白の拳銃・朔月と恋月を拾う。
魔力とは粘土であり、空気の様に軽い。右人差し指に微量な魔力を練らぬまま足元へ落とせば弾け、所有者が持つ魔力の色と同じ煙が舞い上がる。
「……其処だ」
相手は此方が目眩ましで煙を~。と思っているだろうが、此処はファウストが作った密閉空間。煙の逃げ場など微塵も無い。其処で動き回るって事は当然──煙が舞い上がる以外に揺れ動く場所こそ。
ケルベロス本体の現在位置。それプラス培った豊富な戦闘経験による勘で……通るルートを先読みし、左手の恋月を三度発砲。白い光弾が緋色の煙へ潜り込む。
「ふは、^66666!! 重量級59兎も角、%€集合体は機&…:力&異能特化。銃弾5&…遅──!?!?」
「生憎、機動力系や能力者との戦闘経験は豊富でな。弱者なりの戦い方は心得てるつもりだ」
真っ直ぐ迫って来る銃弾を狼の脚力で上空へ跳んで避けた。それは褒めてやろう、素早い判断力と反応速度だ。が……此方が『武器を頻繁に使ってない』事位、理解しろ。
恋月は発砲速度こそマグナム程度で連発が出来ない反面、猟犬みたいな銃でな。狙った獲物は弾丸の軌道を曲げでも相手に噛み付く為、機動力系には滅法強い。
だから例え一度回避しても、お前さんみたいに背後や脇腹へ命中し怯む。強い武器だからこそ知られず、無闇に使わず、確実に倒す。そうしなければ此方が不利となるだけだ。
自分自身を強者とか思ってる連中は大半、慢心し怠慢気味な奴等が多い。真の弱者とは己が弱いと知り、強者相手に勝つ為あれやこれやと策を練る。俺はそう言う戦い方が好みでな。
「だ、4…2…、その銃€特性は知;…た。もう、当たらな──にぃ?!」
「もう少し、頭の回転率を上げたらどうだ?」
(恋月の特性を知った。でも、朔月の特性はどうかしらね)
魔力で作った煙幕の中から、苦しげな声だけは確かに聞こえる。再度恋月を発砲するも足を止めず走り続ける機動力系相手には、恋月単体じゃなかなか当たらない。
ではどうするか? 恋する白き月は恥ずかしさの余り、隠れる時がある。宵闇に隠れし黒き月──朔月。雌雄二振りの剣が有る様に、コイツらは二つで一つ。恋月で敵を追尾し、朔月が穿つ。
「ば、6…2な。この肉体は、間違い5く『神』に至♡る、と言:のに」
「神……完全体である『融合神』に、か。アレはイリスで懲りたんで、勘弁して欲しいな」
あぁ、本当に融合神なんざイリスだけで十分過ぎる、勘弁して欲しい。強さや成長速度もそうだが……あんな、我が子を殺す様な哀しい悲劇は懲り懲りだ。
当時使えた最強技の一つすら微動だにせず軽く防ぎ、弾き、完全再現と更なる発展系で返す存在なんかは特に。そうだ、愛したイリスの為にも──融合神への進化は防がねば……
(おい、宿主様。どうした、思考と体が止まってるぞ!)
此処ではない、この時代・世界では無い場所で、白い麒麟の姫と行動していた場所を鮮明に思い出していた。本当に幼い……幼稚園児位の人間の女の子を二人で拾い、我が子として共に過ごしたあの頃を。
懐かしくも楽しかった、幸せな時間。俺を育てた親は生みの親では無く、誘拐された後に拾ってくれた義母親の一族。だから俺もその優しさを見習って姫さんとイリスを寂しがらせない様頑張った。
「今だ!!」
「──!?」
俺を呼ぶ叫び声が聞こえ、現実に引き戻された。寝起きさながらぼんやりする頭が何をしていたのかと現状把握と理解が遅れ、気付いた時は既に遅く防御も間に合わない状態。
ケルベロスが大きく息を吸い口から吐く赤い光線、左右両肩に付いた魔人の顔が此方を向き眼から黒と紫の波長みたいな怪光線が迫り、俺は……その直撃を全身で受けて大きく吹っ飛ばされ、俯けに落ちた。
「は6っ、何時29固有異能が『視界』限定だと思っ#/た」
(頭に直接幻覚を叩き付ける……か。嫌らしい能力じゃないの!)
全身が痛い……バイザーに被弾箇所、被害報告が提示される。フュージョン・フォンとウォッチ、スーツは──無事だな、良かった。被害としては左腕が動かず、視界が奴を麒麟の姫さんやイリス、桔梗に見えているだけ。
成る程。視覚と頭に直接幻覚を叩き込み、強制的に記憶を引き出し投影、心へ直接干渉させ行動の自由を阻害する能力って訳か……はは、ははハハははハははッ!!
「さて……遺言はそれだけか?」
「は……?」
「もう一度だけ言う……『最後に言い残す言葉』はそれだけか?」
右腕と脚の力も使い、惨めにもゆっくりと立ち上がり問い掛ける。少し声が小さかったらしい。疑問符で返しやがった為、今度は先程より大きめの声で、低く怒鳴る様に言う。
「──ッ!! ヤバい……8ば/や6…/86…い!!」
誰にでも触れられたくない記憶、領域がある。俺の場合は許可も配慮も無く、土足で心や記憶を覗き、利用する輩だ。龍で言えば逆鱗、と言えば分かる人は多いだろう。
つまり野郎は──俺の逆鱗を無遠慮に、穢らわしい笑顔で逆撫でした。手っ取り早く結論だけ言おう。お前は此処で、確実に倒す。決して逃がしはしない。
逃げ出した野郎へ右手を向け、緋色の魔力帯を伸ばし胴体に巻き付ける。遺跡で得たスキルではない力、パワーグリップで此方側へ勢い良く引っ張り上げ、床へ力一杯叩き付ける。
(喜ベ。王直々ノ判決ガ今、貴様ニ下サレル)
(残念だけど、貴紀の逆鱗に触れた直後は私達三人でも止められない。観念しなさい)
(王の判決を言い渡す。さあ、宿主様。憐れなる愚か者に判決を)
誰が王だ。俺は王様なんざ窮屈で面倒臭い役職なんか此方から願い下げだ。心の中で反論しつつも右手でウォッチを掴み、一度一周させてから紅白で一回、次は緋色に矢印を合わせ二回叩く。
(ability・Ⅱ。support、霊華。Are You Ready?)
「とっくに出来てるよ」
ゼロが内容を教えてくれる為、大体どう言う効果なのかは分かる。一歩一歩と踏み締めて歩み寄る中、ウォッチから右足へ魔力と霊力が流れ込むのが判る。
魔と神、油と水。相反する力が干渉してか、右足から外へ放電が始まっている。魔人二人が此方へ先程の怪光線を放つが……既に見切っている為、右手に魔力を集中させて受け止め、纏めて返す。
怯んだ隙に狼頭を右足で踏みつけ──一言。
「お前を『破壊』する」
判決を下し、そして……踏みつけた足から直接魔力と霊力を電流さながら流し込み、融合獣・ケルベロスは内部から爆発。
原因の闇は飛び出し逃げたが、手負いの獲物を易々と逃がす程、ゼロは優しくない。影が自ら動き、姿を名状し難きモノに変えて飛び出し喰らった。
「ん? アレは……」
振り向き舞台セットを見ると穴の中に在る祠を拝む三種族があり、何故か死体や武具、ゴミを次々と流し込んでいる。
次第にゴミで埋まり、黒く澱んだ祠へ赤紫色の発光体が入り込んで行く。成る程、トリスティス大陸で起きている原因は、そう言う事か。
(あぁ~……やっぱりコイツ、四文字熟語の譎詭変幻から来た能力らしいぜ?)
「そうか。で……『味』は?」
(焦りと不安が強い。肉で例えるなら脂身の主張が強い感じだな)
揺れ動き、崩壊して行く空間。足元へ目を向ければ取り込まれていた三人が倒れ伏し、気絶しているっぽい。
手首や首を触れると少なくとも脈はある為、生きている。そんな中、ゼロがケルベロスが持つ能力に就いて話す。
味……要するに融合獣化した闇の原因を尋ね返答を聞いている最中、空間は完全に崩壊し元の集落・ヴェレーノへと戻って来たので、スーツを脱いだ。
名前:譎詭変幻融合獣・ケルベロス
年齢:0歳
身長:206cm(狼ヘッドまでなら175cm)
体重:126kg
性別:不明
種族:融合獣
設定
集落・ヴェレーノに住む住人・ムートが抱え持つ心の闇が終焉の地のフィールド効果により暴走。魔人二人を取り込み、誕生した融合獣。
融合獣としてのレベルは『獣』であり、ケルベロスの名前通り三つの頭を持つ。容姿はガッシリとした二足歩行の体格に、腰辺りから蜥蜴人であるシュッツの尻尾。
両腕には鋭利そうな二本の鉤爪。名前らしく正面ど真ん中に狼顔。左右両肩部分にチェスの駒同様に生えたファウスト、メフィストの上半身がある。
幻覚・幻影を見せ翻弄するのが得意で、接近戦では両腕にある鉤爪で敵を切り裂く。中距離遠距離だと口から吐く真っ直ぐな赤い高熱光線。
両肩の魔人が眼から放つ幻覚補助・記憶読み取り効果があるウェーブ光線を使い貴紀を苦しめた。敗北した理由、原因はやはり──
一つ目は戦った相手が悪かった事。二つ目は人の心に土足で入り込み、大切な記憶を利用し逆鱗に触れ、許されざる怒りを買った事だろう。




