準備・前編
活動報告の方でも書いたと思うのですが、見れていない方の為に此方でも説明しようと思い、久方ぶりに前書きを書かせて頂きます。
章の完結だと思い、序章の最終話……つまり第四十四話を再投稿した際に完結を選んでしまい物語自体を完結扱いしにしてしまっていました。
まあ……次話更新の準備をしようとしている時に気付きまして、慌ててどうにか連載中に戻せましたが読者の皆様に誤解を与えてしまい、大変申し訳御座いませんでした。
本当の意味で完結するには八章……最終章まで進めないと終われないので、最速でも後三年か四年は掛かる長編作品となります。故に流行物は書けませんし。
私個人の空想・体験を織り混ぜた物語となります事、ご理解頂けると大変助かります。基本的には週一月曜日の午前0時更新予定になっております為「あ~、今日は更新されてるな~」程度に思い、見てくださると有り難いです。
長々と前書きを書かせて頂きましたが、此処から先の空白部分を越えれば、三月三十日の更新分となります。では……どうぞ。
三種族話し合い……と言うか最早、作戦会議も同然だった日から四日が経った頃。三種族がどう言う回答を出したのか気になり、人が殆ど居なくなった集落・フールを拠点としていたが見回る為、魔力飛行で飛んで行く。
「運べ運べ~!! 受けた恩もそうだが、復活した闇の魔神を俺達が協力し、倒す手筈を一刻も早く整えるんだ!」
東部にある蜥蜴人の集落・ハイルへ昼過ぎ頃に足を踏み込むと、木製の高台からヴェルターが作戦会議後渡した洋紙を片手に石材や泥、土を運ぶ仲間達へ指示を出していた。運ぶ蜥蜴人達もこれまた元気に、生き生きと働いている。
そりゃまあ、残された伝説なんか夢幻の出来事であり、現在を生きる者達には過ぎ去った記録だ。けれど今回みたく現実に起こってしまった場合、嘘か真か審議で時間を掛けるより、行動して万全の態勢で待ち構え杞憂に終わる方が良い。
どうせ反対派やマスコミは、視聴率や支持率を得る為の批判やら妨害報道しかしない害虫、もしくは井の中の蛙。平和ボケした連中なんか攻め込まれた時、防衛してくれる存在の有り難さを本当の意味で知らない阿呆だ。
「よっ、ヴェルター。精が出るな」
「おぉ、貴紀殿に静久様。来訪に気付かず申し訳ない」
「構わない……今はイブリースとか言う奴を、本当の意味で倒す準備が最優先……」
「そうそう。気にしない、気にしない」
此方の声に気付くと十メートルは有りそうな高台から飛び降り、頭を下げて来た。が──実は三種族の誰にも事前に話さず、お忍びで見回っている最中なのだ。来訪に気付けなくてもしゃーないさ。何故お忍びで見回るのか。
と言うと今は姿を見せない三騎士・コトハやイブリース、インサニア、魔人の捜索や可能なら捕縛・妨害阻止・情報収集が目的。裏で繋がっている奴を炙り出すのもある。
二重三重に罠を張り、策を張り巡らせて終始優位で戦う。可能ならそれが一番望ましい……んだけどね。現実はそんなに甘くない。作戦の前倒しやら準備不足での戦闘なんざ当たり前、ゲームじゃないんだから。寧やマキと話がしたいんだが、圏外で通じない。
魔力を電波代わりに使ってるから、イブリースがデカい魔力を電波として邪魔してるんじゃないだろうか、と予想。気を取り直し「今現在、掘り作業と竜脈の干渉を同時に行っていてな」と話すヴェルター。修正と掘り直し、埋め直しが難しいと言う。
「しっかし……此処の竜脈とコレを繋ぐ事に、一体何の意味があるんだ?」
「機械も無い時代、魑魅魍魎に恐れる人間が編み出した対抗策さ」
もしもイブリースが自分の魔力を目安に行動する、現れると言う予想が当たっているのならそれを逆手に取り策を仕掛けるしかない。決戦の場はスカイマウンテンと決めているが、可能なら切り札は五枚程仕掛け、持ちたいモノだ。
ドワーフ王のディザイアから、竜脈の位置は詳しく教えて貰った。だから持てる情報と手札は最大限利用し、配置する面々はじっくり考え適材適所を選ばないと駄目だ。そうしないと勝てない、強敵難敵を相手にするなら尚更。
「遺跡で合流した後、詠土弥を見たか……?」
「いえ。見掛けてはないですが、何か用事でも?」
「アイツが居れば……少しは勝率も上げられるからな……」
静久は三種族会議後から、詠土弥を探している。それは本人が言う通り勝率アップもそうだが、コピー体とは言え容姿が瓜二つで姉妹の様なもの。能力的には相性こそ悪いものの、二人の仲は悪くない。口には出さないが、内心お姉さんになった気分なんだろう。
「そうか……判った」
「それと貴紀殿。もう暫く療養されては? 静久様曰く、長年の疲労が溜まっているそうじゃないか……」
「いや、暇潰しが無いから暇で暇で」
な~んて思っていたら話題が此方に飛んで来て、決戦の時まで休め。的な事を呆れ顔で言われた。正直言って暇なんです、本は有っても専門用語満載だったり畑違い過ぎて訳が判らない。
格闘家に素質もない魔法や神秘とか教える様なモンだよ? だから暇潰……げふんげふん。調査も含めて静久達にお忍び見回りの許可を貰って参加してるのさ。独断行動禁止って条件付きでな。そりゃまあ、当たり前だけどさ。
「詠土弥殿は見てないが、最近チラホラと見知らぬ人間の女二人組をこの周辺で見掛けるな」
「ヴェレーノの連中……ではないのか? 被害はあったのか……?」
此方の心情を察してくれてか、話題を切り替えてくれたのには感謝しかない。で──女二人組がハイル周辺で見掛けると言う。被害は無いのか尋ねると深く大きな溜め息を吐き、困った様子で話してくれた。
曰く「養殖場の魚や蛙が現れる度、盗まれていて困っていてな。我々は今この通り、他の事まで手が離せない」だそうだ。そりゃまあ協力して貰ってる身からすれば、対処するしかあるまい。
「なら自分が……」
「阿呆。日数はどれ位掛かる……」
「予定では後三日も有れば完成し、警備に人員を回せると思う」
「なら私が残る……貴紀、先に別の集落へ行っておけ。私は少し遅れて向かう……」
残ろうとしたが地形的な意味も含め、止められた。渡した洋紙通りに進めるには早くとも後三日は必要で、被害を受けている食料は心身の維持に必要不可欠な物。残るから先に他の集落を見て回れ、と言われ心配ながらも頷いて返答を返す。
「あ、静久。イブリース関係ではないんだが、一応伝えておきたい情報があるんだ」
「なんだ……話してみろ」
別行動する前に念には念を入れてヴォール王国で見聞きした、勇者候補生のルージュから聞いた情報を伝える。女二人組と聞いた時にまさかな……とは思ったが、伝えておけば後々色んな意味で有益な情報を得れるかも知れん。
特徴などを詳しく説明すると「判った……もし遭遇し可能なら捕まえてやる……」そう返す静久に信頼を込めて頷き、再会を約束して握手を交わす。二人や作業中の蜥蜴人達に見送られ手を振られ、ハイルを後にした。
「はぁ~……流石ドワーフ。仕事に精が出ますなぁ」
蜥蜴人の集落から飛行しゆっくりと降り立った先は、西部にあるドワーフの集落・ストゥルティ。おぉ……既に渡した図面通りの模様が大きく出来てる、仕事が早い。闇に覆われていた時は幾らスキル・スレイヤーで暗闇での視界を得ても夜行性生物程は無く、車のライトで照らせる範囲が精一杯。
故に徒歩で移動していた。太陽が照らしてくれる今、気兼ねなく空を飛べるのは有り難い。……飛び続けると魔力消費が半端ないけどな。肝心のストゥルティはドワーフ達が洞窟の中へと、茶色い布で包んだ荷物を運んでいる。多分、鍛冶に必要な物だろう。
「おぉ、オメガゼロ・エックス様。来られるなら一報位頂ければ、歓迎の準備をしたのじゃがなぁ」
「自然体な様子を見たくってね」
流石は岩場に作られた集落。壁に雛壇みたいな段があり、三段目が一番上なのだが其処にある洞窟の一つからドワーフ族の王・ディザイアが現れ此方に気付くと、器用に滑り降りて駆け寄り来るなら一報位欲しいと言われた。
後、出来るなら様付けは止めてくんない? そう言われるとむず痒くて……アレルギーが発症した時程じゃないにしろ、本当に様付けは止めて欲しい。一応そう伝えてみたが案の定「なぁ~に、ワシがそう呼びたいだけじゃ!」で無理そう。
「それで、今は何をしているんです?」
「イブリースらに一矢報いる為の準備じゃ」
「と言う事は……協力してくれるんですか?」
何やら材料を持ち走り回る者、鍛冶を行う者達を眺めながら尋ねると、奴らに一矢報いる準備だと言う為もしや……と思い訊けば右手で鼻に付いた汚れを拭い「まさか追放された奴が批判も覚悟の上、夫婦揃って土下座で頼み込んで来るとはな」そう聞いた瞬間。
話に聞いた姿が鮮明に浮かんだ。みんな、自分自身の戦いを頑張っているんだな……と思い集落を眺めていたら、幾らか離れた場所に大山夫妻の姿が見えた。他のドワーフ達へ何か指示をしいる様だが、あれは一体……?
「アレが気になるたぁ、相当勘が良いと見た」
「一体何を造ってるんだ?」
「貰った洋紙の図面とは別に、ワシらもドワーフの意地で一矢報いる為に決戦兵器を造っとるんじゃ」
余程気になって注目していたらしい。話し掛けられた際に問うと、ドワーフ族の意地で一矢報いる決戦兵器だと言う。なんと言うかやっぱり、ドワーフ族の男性は男心を良く理解している、と思った。決戦兵器、秘密兵器……実にロマン溢れる響きだ。
「っ……」
「なんじゃ、何処か痛むのか?」
「いや……大丈夫、もう落ち着いた」
体が痛む度、心の中に誘惑が生まれては何度も「もう、休んでも良いんだよ。沢山頑張ったじゃないか、もし負けたとしても誰も文句は言わないよ……」と優しい言葉を囁いて来るが、判った様な口を利くな!!
敗けたくない……負けたくないんだ。勉強も友人関係も出来損ないの自分が誇れる、数少ない取り柄で絶対に負けたくない!! 例え勝負に惨敗したとしても、次は必ず喉元に食らい付いてやる。種族差がなんだ……才能がなんだ!
天才だろうが勇者だろうが、必ず越えてやるんだ。自分の誇りを守り抜き、意地を貫き通す為にも。心配する声を聞き、足を踏ん張り気持ち的にも持ち直して大丈夫だと返す。そうだ、敗けたのなら次は勝てば良い。敵にも、自分自身にも。
「そうか、無理をしてなければいいんじゃが。あぁ、忘れとった。和人が何か話したがっててな。少し話してきてはどうじゃ?」
「判りました。では、失礼します」
いかんいかん。もっと気を張れ、何処で誰が見ているかも判らないんだ。弱味を見せれば其処を突かれて負ける可能性だって高い、琴姉が言ってた通り、注意力を損ねる訳にはいかん。猫背気味だった背筋をビシッと正し、ディザイアと別れ和人さんの所へ向かう。
「お久し振りです!」
「ん? あぁ、オメガゼロ・エックス。丁度良い時に来てくれた。コイツを見てくれ!」
周りが鍛冶をしている為、普段よりも大きな声で話し掛けると聞こえたらしく、振り向き此方に気付けば。見た感じでも判る程喜び、荷車に乗った赤く厚みある縦長の三角形らしき物。イブリース復活前に見た長い盾。
なんだが……よく見たら持ち手側がL字型に屈曲したスパイク付きカイトシールドだ、これ。少し丸みがあり、内部に鉤爪部分と連結した鎖が付いてる。何だこれ、鎖鎌とか鎖付きブーメランは見聞きした事はあるが、何この……何ッ?!
「カイトシールドにナックルダスター、ミネラドラコの鋭爪、鎖鎌の要素を詰め込んだ一品でな。自信作なんだ」
「ナックルダスター? あぁ、メリケンサックか。てか、なしてそげなことすっと……」
魔改造品は何度か寧が造ってたから知ってるが、まさか闇鍋的な盾と遭遇するとは……思わず関西出身なのに博多弁が出たぞ。まあ、博多弁が理解出来てないらしくて、どう言う意味か問われたがな。遠い昔の方言の一つだと答えた。
水滴をイメージしたのか、通常のカイトシールドとは形状とが真逆。使用方法は防ぐ・殴る・投げる・突く・払うの五種類。全長百五十センチ、横幅六十五センチと言う使い手を選びそうな、炎の模様とカラーリングが特徴的な盾。
いや……形状はカイトシールドっぽいけど、長さが最早全身を守れるレベルのタワーシールドだぞ? 警察官とか自衛隊が防衛やら、盾を持って制圧する時に使ってそうな位の。
「オメガゼロ・エックス達が狩ったミネラドラコから作った代物だ。あの魔王相手に役立つかは分からんが、良ければ使ってやってくれ」
「お、おう……有り難く頂戴する」
盾──と言う物は個人的意見としては、片手で軽々持てる代物がベストだと思うんだ。余った手で武器を持ち戦う、実に格好良く素人でも戦士らしさが出て絵にもなるじゃないか。だけどこれ……魔力強化無しだと片手じゃ思う様に扱えないんですけど。
念の為に重量を聞いたら「あぁ、ブレイブシールドの重量か。ミネラドラコの素材も含めると大体三十キロだな」とか言い抜かしやがった。クッソ、種族の違いが腕力の決定的な差ではない事をっ。こ、事、を……駄目です、強化無しでは片手じゃ扱い切れませんでした。
他のドワーフ達は平然と片腕を通して持ち上げるから本当に種族差だと痛感して、心が挫けそうで涙が出そうになった。ゼロじゃないけど、もっと筋肉を付けよう。コイツを片手で自由自在にブン回して見返してやるんだ。……畜生、ぐすん。




