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ワールドロード  作者: オメガ
一章・I trust you forever
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堕ちし者・後編

 今回は現れないと予想してたんだがな。……いや、襲って来るなら道化師の仮面を砕いて素顔を暴いてやるだけだな。取り敢えず、今は様子見して動向やコトハとの関係を観察する為、此方からは敢えて手を出さずやり取りを見守る。


「……おぉ? おおぉぉお?! 霊力が見えませんねぇ~、もしやこれが『あの巫女』が言っていた魔人……とやらですかぁ~?」


「オ前、か」


「ふひひ……もしかしてもしかして~『見えちゃってますかぁ~?』そ~で~──おわわわっ!!」


 スキルアップしているのに霊力が見えない。いや、仮説としては存在しないって言うのと、あの仮面とかが漏れず見えない様にしていると言った方が正しいのだろう。一瞬此方をチラッと見たが直ぐにコトハへと向き直る。口が滑ったのか『あの巫女』と言うワードが出た。

 ファウストも何かを確かめる様な発言をした後、ウザい顔芸と意味不明な発言から確証を得ると同時に殴り掛かった。呪術……思い出せる限りだと(うし)(こく)参り、コトリバコ、呪言とかだな。呪言は厄介でな、怨み辛みの言葉で文字通り呪い殺せる術だ。呪術ってのは返されると威力は倍に跳ね上がる諸刃の刃だな。


「霊華。ウズナに呪術が付与されているかどうか、または解除可能かどうか判るか?」


(下級や中級なら外見からでも見抜けるけど、上級は私が直接触らないと判断に困るわね)


「判った。霊華、後は任せる。何だったら邪魔者をブッ飛ばしても構わん」


 流石に呪術が付与されているかどうか。なんて見抜く力は自分には無い。 そう言うのは巫女である霊華か悪魔王のルシファーにでも訊け、専門家の方が対応策やら応急措置も出来るだろうしな。曰く下級は一から四、中級だと五から七、上級は八から十だそうだ。

 どの道、目に見えない状態異常系の判断や回復系は職業や特殊なスキルが必要。スキル・スレイヤーは見敵必殺(サーチ&デストロイ)特化型、要するに通常とは違う視界で敵を見付け必ず殺す方法・手段が頭と体が覚える訳だ。自分は該当しないので霊華かルシファーと交代しなきゃ判断も出来ない為、ウォッチの矢印を霊華に合わせて叩く。

 一つの視界を四人で共有している訳だが、自分以外は主導権が無いにも関わらず普通に魔力やら霊力を探知出来るんだよなぁ……霊華は職業とスキル、ルシファーとゼロは種族的な理由。自分も出来るけど、主導権を持ってないとスキルすら使えない。服装や動作確認しているらしく、白い巫女服や赤い袴が見える。


「そんじゃ、さっさと確認を──っ!!」


 近付いてウズナの肩に触れようとした途端、砂鉄が集い黒い腕となって殴り掛かって来た。霊華も直感系スキルは持っているけど『戦巫女の直感』と言う派生系であり、自分が使う直感とは似て異なる効果を持つ。基本的に危機回避系スキルの直感、戦闘特化型スキルである戦巫女の直感。

 自分は他の常時発動型スキルと同時使用が当然な運用方法の為、効果重複や弱点看破に使えている。お陰様で魔力消費量は仲間内でトップだけどな。さて……話を戻そう。顔面へ迫り来る大きな右腕を屈んで避けると胸ぐらを掴み、背負い投げを決めた。


「手応えが……っ」


「お前も、お前も破壊者の仲間かぁぁぁ!!」


「間違いなく呪術による作用で発狂してるわ。この子」


 背負い投げは綺麗に決まった……が暴れていた砂鉄が背中に集まってクッションとなり、ダメージは予想以上に無い。そして霊華を自分の仲間だと認識したらしく、五本の剣と左右二つの腕を砂鉄が形作り襲い掛かって来る。物理的に接触して得た情報は──

 呪術の効果で発狂。もとい精神と記憶に異常が有り解除するには『今現在の消耗した状態』では殺す以外に救う方法は難しいと、確かめれた事。手っ取り早く言うなら助けたければ撤退しろ、そうでなければ殺せ。ハッキリと分かれた二者択一だねぇ。どうしようかな?


「破壊者、破壊者、破壊者ァァァ!!」


「動きが……止まった?」


(此処は我々が彼女を食い止めます。オメガゼロ・エックス様、どうか奇跡の水で彼女達を救ってやってください)


 暴れ狂うウズナと砂鉄の動きが突然止まり、男女問わぬ多数の声が頭に響く。詳しい事は判らないが、撤退しろって話で間違いないのだろう。盗まれたパワードスーツも心配だが、現状此処へ止まっても自分達は探索は出来ん。時間稼ぎも出来たし、一時撤退と行こう。

 コトハもファウストに襲われていて、此方に近付けない今がチャンスだ。懐から護符を取り出し足下へ押し付ければ地面に浸透、消えてなくなったのを確認後、集落・ストゥルティから撤退した。少し離れた頃、男達の大きな悲鳴が聞こえたが一度も振り返らず、足も止めずただひたすらに走り続けた。


「此処まで離れれば、問題無さそうね」


 ストゥルティがやや小さく見える距離まで撤退した頃、辺りを見渡し誰も居ない事を確認してから本日最後の一回となるウォッチを起動させ、自分と交代する霊華。しっかしあの悲鳴、一体何だったんだろう?

 陽動兼囮として突入した自分とは別で、ストゥルティに潜入して貰っている琴姉やヴェルターなら知っているだろうか。まだ二人共帰って来てはいない様だけど……そんな心配をしていると、噂をすれば影、ってなことわざ通りに二人が走って来た。


「おぉ。流石は貴紀殿、三騎士を相手にして無事とは」


「時間稼ぎが精一杯だったよ。てか、聞こえてたのか」


「コトハって女が遠慮無しの大声で話してたからね。どうしても耳に入ってたのよ。さ、情報共有と行きましょ」


 合流した二人に怪我はない。三騎士・コトハ……戦って判ったが、これっぽっちも全力を出してはいなかった。殆ど遊び感覚で攻撃すらして来なかった事は気になるものの、予想以上の情報を無傷で持ち帰れたのはとても大きい戦果だ。魔力はたっぷり使ったがな。

 二人に得た情報を話す。コトハが呪術使いであり、ウズナちゃんは呪術で記憶が滅茶苦茶かつ発狂して襲って来て、治療には奇跡の水が必要だと。逆に話してくれた情報は変な鎧をドワーフの王・ディザイアが、ウズナちゃんに何かしらの条件と引き換えに持って来させたと言う。

 何故ドワーフの王が自分専用装備のパワードスーツを求めたんだろうか。と言うか、何処で知った? 少なくとも知り合いの前で変身はしてないし、知ってると言えば自分の関係者一部と大山一家位……もしかしたら、そう言う事か?


「面倒臭いが、もう一度大山夫妻の所へ戻る必要があるな。可能ならリーベにも来て欲しいが」


「リーベが必要なのは、奇跡の水とやらを作る為だな」


「それならアタシが付いて行った方が、行き帰りは楽そうね」


「頼む。此方は先に静久、大山夫妻と合流して待っている」


 次の目的を話、奇跡の水とやらを作る為にリーベを連れて来て欲しいと頼み、再び別行動を取る。琴姉の飛行魔法で飛んで行く二人を見送り、自分も大山一家が住んでいた洞窟へ戻る為動く。レベルアップしたスキル・スレイヤーの視界は暗闇でも昼間位に明るく、何故か『目に見えない存在』をも捉える。

 この視界になってからと言うもの、視界に入れたくない『虫』がチラホラ映ってウザったくて二匹程潰したが、一体何処から来てんだか。内心愚痴りながらも無理せず走行と休憩を繰り返し、魔法やスキルで飛べる連中が羨ましく思いつつ合流地点である大山一家の住む洞窟へ向かった。




「戻ったか……残念な知らせと面倒臭い知らせ。どっちから聞く……?」


「あぁ~……じゃあ、残念な知らせで」


 戻ると鎮火した洞窟の前で静久が焚き火をしながら出迎えてくれた。のだが──開口一番がソレかぁ。ハッキリ言ってどっちもどっちだし、聞きたくないのが本心。でも聞かなかったら後々更に面倒臭い事態になりそうなので、残念な知らせから聞く事にした。


「あの女。アナメが姿を消した……」


「魔力切れしてたんじゃないのか?」


「恐らく、外部から魔力を得た……と考える」


 終焉の地を発動させていれば、闇から魔力を得れるとファウストは言っていたが……それも無しで誰がアナメに魔力を与えたんだ? 考え事をしていると静久が続けて「それと蓮華を絞ったら、ドワーフ族の王にスーツの情報を流していた……」と言う。

 監視役と言う点からもしかしたら、なんて予想してたら大当たりかい。けど鍛冶屋職人の和人さんですらパワードスーツの素材を知った途端、触るのを嫌がってたのにドワーフ王は何を考えてウズナちゃんに強奪させたんだよ。


「エボリュウム合金……別名、選定の素材」


「えっ?」


「稀少価値は極めて高い反面、素材が人を選び認められなければ殺す……職人殺しの素材」


 選定の剣とかなら聞いた事あるけどさ。流石に選定の素材とかは知らないなぁ。素材が人を選ぶってのは聞いたけど、認められなければ殺すとか……物騒過ぎません? あぁ~だから末恐ろしいモンだの、命知らずなモンを着込んでるって言ったのか。

 そう言う意味では自分は選ばれた訳だが、選ぶ理由と条件は何だ? あ、そうなると撤退中に聞こえた悲鳴って拒絶されて死んだドワーフの声だろうな。南無阿弥陀仏、恨むなら自分自身の強欲さと王であるディザイアを恨んでくれよ。


「……ただいま」


「──!?」


 話し合いの最中、和人さんや蓮華さんとも違う声で話し掛けられ、振り向くと同時に驚きの余り思わず後退してしまった。何故なら姿を消したと聞いたばっかりのアナメが帰って来たのだ。服は上下共に幾らか裂けて切り傷が見える為、誰かと戦っていた様な痕跡を思わせる。


「アナメ、傷だらけじゃないか!」


「平気。どうせ死体だから、痛覚なんて無い。それに……私は」


 魔法・奇跡の類いが全く使えない自分を恨みつつ、傷口へ両手を向け残った魔力で応急手当を行うけれど、傷が治る気配は全く無い。死体だから、とかそう言う問題じゃない。見てて痛々しく思うから治療しようと思い行動しているのだ。

 続けて言おうとした言葉を遮る為、右手で口を塞いでやった。此方の意思を理解したのか、今にも泣き出しそうな顔で小さく何度も頷いた。例えそうだとしても、アナメは自分が守りたいと思った数少ない人間だからな。可能なら殺すのは避けたいんだよ。


「……何故戻って来た?」


「私が堕ち切って手遅れになる前に、私を殺して欲しくて」


「手遅れ? それはどう言う意味だ」


「それは……うぅっ!?」


 戻って来た理由は手遅れになるのを避ける為らしく、何が手遅れなのかを尋ね答えてくれる時、両手で頭を抱えて苦しみ始めた。恐らくアナメを蘇らせた存在が、余計な事を言わない様仕掛けた妨害魔法だろう。

 解いてやりたいが……残念ながら自分は破壊専門だ。霊華ならワンチャン可能性は有るかも知れないけど、今日はウォッチの使用回数限度を使い切ってしまっていて交代が出来ない。クッソ……簡易的な応急手当しか出来ない自分が情けない。


「面倒臭い知らせだが……スキルに祝福(ギフト)を持つ連中がいる。貴紀。ストゥルティで見聞きした事を全て話せ……」


「判った。先ずは──」


 曰く祝福(ギフト)とは、神々の力や神話・逸話に登場する何かを産まれながらにして持つ、または第三者から与えられるスキルらしい。例えば呪術で味方に何かしらのスキルを上乗せ、付与する行為は呪い(カースト)に該当する。

 別行動中に見聞きした全てを話した。三騎士・コトハやウズナちゃんの変貌、パワードスーツを求め盗ませたドワーフ王・ディザイアの存在。そして奇跡の水を作る為、合流地点である此処へ戻って来た事も。静久は黙って真剣な様子で聞いてくれた。


「そうか……あの二人が戻って来るまで仮眠を取れ。気持ちだけでも回復させろ……」


「そう、だな。仮眠してる間、この命、静久に預ける」


「安心しろ。(みずち)である私は独占欲が強い……領域(テリトリー)へ入る阿呆は丸呑みにしてやる」


 話終えると此方を心配してか、仮眠を勧めて来た。流石に精神的、魔力的消耗も激しく色々とあった為、提案に乗り寝させて貰った。ただ「膝を貸してやる……」と言われ、半ば強引に膝枕をされたがな。余程疲れてたのか、直ぐ深い眠りに落ちた。






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