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ワールドロード  作者: オメガ
一章・I trust you forever
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魔人・後編

 逃げる。後ろを確認しつつ、痛む左脇腹を押さえ走って逃げる。あぁ~クッソ、お気に入りかつ一張羅の黒コートに穴空けやがって。太陽光さえあれば、これ位の傷、一日で完治出来るのに。


「後少し、後少しだ……」


 集落・フールの真横まで来た。後はぐるっと回り込んで入ればいい。琴姉がまだ居てくれてるかさえも、現時点では賭けな点さえ除けば、なかなか良い結果とも言える。諦めるな、信じて進むんだ、自分!

 とは言いつつも、目がぼやけてきた……やっぱ最後の一撃は、無理があったか。頭もハッキリしなくなってきたが、持っていた短剣を左足太股へ突き刺し、鋭い痛みで意識が目覚める。

 無理矢理な応急感は否めないがな。大分警戒が薄れていたと思う。自分の周囲で突然火薬の多いネズミ花火が爆発した様な音と、火花が飛び散った。慌てて後ろを振り向くと。


「逃がしはせんぞ……オメガゼロ・エックス」


「しつこい奴は嫌われるって、教わらなかったのかよ」


 道化師野郎が追い掛けて来ていた。最後の一撃を叩き落とした際の爆発をモロに受けたらしく、仮面や体の白い部分が薄汚れており、右腕へ岩の破片とか刺さってるのに気にも止めやない。魔力は殆ど使った、もう攻撃や防御へ回す程も残っていない。

 現状、逃げるしか助かる道はない。と言うか、見逃してくれる様な心優しい奴にも見えん。けれど、何もせず殺られてやる程優しくもなければ、甘くもないんでな。


「はた迷惑だが、砂鉄を燃やす程度の力は残ってる。魔女裁判みたいに焼ける位にはな」


「ならば、ソレをさせる時間すら与えず倒せばいい」


「ハッ、お前にそれが出来るならな!」


 此方が出来る事をわざと言い、更に挑発。少しはマトモに動ける為、遠距離攻撃なら頑張って避けて、接近戦へ持ち込ませる。可能ならマウントを取ってくれると有り難いが、さてどう来る?

 先ずは遠距離攻撃か、左右へのステップで直撃だけは受けない様、向きに注意して避ける。それでも地面の砂鉄が燃え、此方の逃げ道は限られるものの、炎だらけじゃ相手も此方を視認出来まい。


「えぇい、直接息の根を止めてくれるわ!」


 狙い通り、接近して来たので少し後ろへ下がり待ち受ける。当然炎の中へ突っ込み、出てきたファウストは自分の首を両手で絞めて来たので、このタイミングで左足を力強く蹴り此方側へ引っ張り倒す。


「貴様、何を……」


「不死鳥は火の中から蘇るらしいが、お前さんはどうだろうな」


「クソッ、えぇい。離せ!」


「コイツは効くぜ? 何せ、知り合いの『生ける炎』から教わった技だ……イグニッション!!」


 同時に左腕で奴を持てる力で抱き締め、仮面に頭突きを打ち込む。そのまま右手で砂鉄を鷲掴み、残る魔力で全身を燃やす。昔、アイが嫌う邪神と戦った後、耐えた記念に教えてくれた『特別な技』だ。

 例え幾ら魔力を吸収したり、反射する相手でさえ魔女裁判さながら火炙りの刑にして燃やし尽くす。使用する魔力は相手から奪い、燃え盛る技故に我慢比べ。高く燃え盛る炎を纏い、捕らえたコイツは離さない。


「必殺ッ、コロナ──」


「逆巻く海よ……その荒々しさで我が厄災を飲み込み、藻屑と化せ。荒々しい海(フェルスマリン)!!」


 文字通りの必殺を繰り出す瞬間、聞いた事もない呪文と静久の声が聞こえたと同時に。包み燃え盛っていた炎は何処からともなく現れ、渦巻く水に自分達諸共飲み込まれて瞬く間に消えた。と言うか溺れる溺れる!

 突然の出来事に溺れるかと思ったら、周囲の炎さえも鎮火するや否や、荒々しさは静まり返り徐々に引いていった。濡れた顔を手で拭い、立ち上がると其処には──


「坊やが御世話になったみたいね」


「阿呆……その技はまだ未完成、現状だと自分も巻き込むと言っていた筈」


「琴姉、それに静久……」


「おのれ、増援か」


 二人が立っていた。静久には相変わらず怒られるが、結局は自分が怒られる様な事をしてるからなんだよな。さっき使おうとした技、コロナバーンはまだ未完成。言われた通り、現状では自分にもダメージの入る危険な技。

 今発動してたら、かなり危なかった。そう言う意味では妨害してくれて助かった、とも言える。駆け付けてくれた援軍に、ファウストの声は余裕がなくなり、憎々しい感じに変わった。


「坊やとの戦闘ダメージは残ってるみたいだけど、アタシとも踊ってくれるのかしら?」


「フン……いいだろう。お望み通り、倒れるまで踊り狂うがいい」


「琴姉、ソイツの──」


 奴の前へ立ち、勝負を挑む。琴姉は戦闘を舞踏会に例えて言う癖があり、自分が稽古で挑んだ時はダンスで例えられたから知識無い身からすると、訳が分からなくて理解に苦しんだな。

 それと思わずファウストが隠し持つエクリプス宝石の事を喋ろうとした時、手を此方へ向けて続く言葉を遮られた。そうだった。琴姉は魔王のプライドとして、厳守している美学的なモノがある。

 一つは正々堂々、可能な限りお互いに全力で挑み、今回みたいな時は断りを入れる。もう一つが言葉を遮った理由、立ち合う以外で敵の情報は知らない状態で挑む。この二つが原因でアイや心に今も負け続けてるって言うのは、野暮だろうな。


「さあ、掛かって来なさい」


「調子に乗るのも始めの内だけだ!」


 直前まで自分との戦闘でダメージが抜けてない今、長期戦は不利と考えて攻め込むファウスト。連打で殴り込み、時には蹴りも混ぜて繰り出すものの、琴姉は赤い眼で動きを読み紫色の髪をなびかせ避ける。

 ロングスカートの裾を摘まみ上げ、まさしく踊る様に避け続ける。大きなステップは踏まず最大でも大股で移動出来る距離を一歩、また一歩と軽やかに動く様は、まるで一人舞踏会だ。


「アナタ。坊やの戦い方に酷似してるわね。それだとアタシには敵わなくてよ?」


「そうなのか?」


「ほぼ完璧に酷似している……知ってる者としては、疑問を抱かなかない方がおかしいレベル」


 攻撃が当たらない理由に、自分と戦闘方法が酷似している点を指摘した。戦闘中は意識してなかったけれど、言われてみれば同じ行動や先を読まれていて苦戦してたんだよな。

 琴姉とも散々稽古したから、動きは確かに読まれてるんだよね。となると、ファウストは何故自分と戦闘方法が似ている? 知り合い……にしては声は知らないし、動きが酷似する程なんて誰も該当しない。


「あなたに勝ち目はなくてよ。それでもまだ、やる気かしら?」


「ウ……時間か」


 時間? 何やら鉄でも叩くような高い音が聞こえるから何かと思ったら、胸の赤い十字架が点滅していた。多分自分のパワードスーツと同じで、制限時間があるっぽい。しかし僅かながら聞こえたウ……とは一体?


「運のいい奴め。今度こそ必ずやその命、貰い受ける」


「ベタな捨て台詞を吐いて行きやがった……」


「言わせておけ。どうせそう言った連中は、最終的に勝てた試しがない……」


 聞き飽きた台詞を吐き、闇に包まれてファウストは自分達の前から姿を消した。静久の言葉は辛辣だと思う反面、そう言った連中を倒してきたのだ。ある意味正論だとすら思ったのは、内緒にしておこう。

 ただ……アイツが離れて分かった事が一つだけある。自分の中の何かが呼応していた。決着がつけば、呼応していた意味も何か分かるのだろうか? 光より生まれし影、アイツは何故そう言ったのか、謎だらけだ。

 ボロボロの体で人間の集落・フールへ戻り、拠点の地下室で琴姉と静久に傷を治療して貰った後、魔力も分けて貰った。お陰様で命拾いした、なんて言ったら怒られるかな。そんなレベルで消耗したし。何故場所が分かったか訊くと。


「此処まで爆発音が聞こえてたわよ。野次馬も居たし、遠目からでも燃えてるのも見えたわ」


「同じく。ところで……アイツは何者かそろそろ教えろ」


「ライヒェ=ファウスト、魔人、光より生まれし影。とか言ってた」


「何だ、ただの中二病患者か……」


 居場所に関しては、狙った通りだった。爆発音と可燃性の砂鉄で大きく目印を立てたのに、なかなか来ないからコロナバーンを使うところだったんだけどね。そんで、これまた頂きました静久の辛辣なお言葉。

 でも何て言うか、妙な奴だったよな。此方の攻撃が直撃しても驚いて怯みはすれど、全く通じてない感が大きい。まるで痛覚が無いリビング・デッドを相手に、奮闘してる気分だった。


「兎も角、アイツの狙いは自分らしい」


「つまり、麻薬やら何やらと嗅ぎ回っている事を快く思ってない奴……と言う訳か」


「でも変ね。アタシ達の前には一度たりとも現れなかったけれど」


 アイツが噂に聞く三騎士とやら、なんだろうか? 騎士っぽい要素は全く無かったけどな。二人の前に現れなかったのは、単に目立った行動が無かったんじゃなかろうか。自分はアイツに見付かったし。

 取り敢えず、問題は攻略法だ。戦法が自分に似ているなら逆手に取れば~、なんて考えるけど、実際戦闘では予想通り上手く行くなんて綿密に作戦を練って何十回も練習しなきゃ無理。ぶっつけ本番なんかアドリブ全開だしな。


「何はともあれ。自分は引き続き調査をする」


「アタシはドワーフの集落へ行ってみるわ」


「同じく、調査に戻る……」


 恐れていても、事態が解決する訳でもない。やるべき調査に戻る為、静久と琴姉の三人で少しの間、人間の集落で活動すると決めた。頃合いを見計らってか、突然「何を隠している……」と話し掛けられ少し迷ったが、話す事にした。


「ファウストと戦闘する前、集落の人間が団体で此処。海近くの崖に移動して例の赤紫色をした発光体に懇願してたんだ」


「何を懇願していた……」


「金をくれ。俺達はアレが欲しい、アレを買う金の為なら心でも何でもアンタに渡すって」


「アレ……ね。もっと具体的な言葉が欲しいところだわ」


 連中の言う『アレ』が何か分からない為、曖昧な情報は言うべきか迷っていたけれど、話す事にした。そして吸われた人はどうなったのだろうか? その後戦闘に入ったから、追い掛けるなんて出来ず仕舞い。

 吸ったのは何だったのか、ソレは何に使うのか。情報が足りない今では、何を答えても予想の範疇を過ぎない。もしも吸った何かが負のエネルギーなら、それを使う連中次第では怪獣を生み出す事すら出来る。

 昔の旅ではそんな事態があった。怨霊が集まり集合体となって、子供の誘拐やら犯罪者、汚職実行犯を狙っての殺人も普通にあった。一番酷かったのは、夫婦喧嘩が一部の地域で多くあったが為、夫婦喧嘩から怪獣が生まれた事かね。






名前:ライヒェ=ファウスト

年齢:不明

身長:168cm

体重:73kg

性別:不明(声から判断するなら男性)

種族:魔人

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 一章第七話『魔人・前編』より登場。

 闇を白と黒のウェットスーツに変化させて纏い、銀色の上下セット型の仮面を被った黒い眼の魔人。魔人とは、魔法や魔物・魔族の源である魔素や大自然の力・マナを人間が制御出来ない程に大量に取り込み、暴走させた姿を差す。

 その力はパワードスーツ抜きの貴紀とほぼ互角。格闘能力も高く闇の魔力を使った技も幾らかある。攻撃力が高い上に痛覚が無いのか鈍いのかは不明だが、痛がる様子を見せない。

 胸元に赤い十字があり、これがエネルギーゲージの役割を担っている模様。胸部装甲が左右に開くと胸元にあるエクリプス宝石から魔力弾の発射や、敵の魔力を吸い込み増幅、倍返しとして撃ち返す事が可能。

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