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ワールドロード  作者: オメガ
一章・I trust you forever
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魔人・前編

 パワードスーツを装着出来ない今、無理は出来ん。可能な限り被弾は避けて、被害は魔力を纏い防御するしかない。いずれ倒すにしても、少しは情報収集をしておくべきだ。フュージョン・フォンを取り出し、スキャンを始めた──けれど、何か変だ。

 ノイズが鳴り響き、画面は砂嵐が混じって外見的な結果しか出ない。もしかして、妨害されている、のか? 周りを見渡すと、景色が全く変わっていた。月明かりも無く真っ暗闇の筈が、遠くの周囲や相手すらハッキリ見える位には明るい。

 岩や山と思わしき物体は在るものの、何とかの悲鳴みたいな絶叫の顔だらけで気味が悪い。それにこの妙に体が重たいと言うか、重りでも付けている様な感覚。光闇戦争で何度も引き込まれた『あの場所』と酷似している。


「クッソ。まさか『終焉の地』……か?」


「その通り。我が名は魔人ライヒェ=ファウスト。光より生まれし影。残念だが、ソレは使わせん」


 『終焉の地』、それは闇の眷属を強化しエネルギーを無尽蔵に与える他、光と敗者を飲み込む亜空間。アバドンも使ってたが……コイツは無詠唱。なら、何処かに付け入る部分かある筈。にしても──

 ファウスト……確か悪魔と契約して魂を奪われ、体を四散させた錬金術師だか黒魔術師の名前だったか。でもライヒェがどう言う意味を持つかまでは、生憎知らない。でも、決して良い意味では無さそうだな。

 光より生まれし影故に魔人ってか。フュージョン・フォンの事も知ってるらしいし、スキャンされると困る何かがあるのか、それともとびっきりな奥の手を隠し持っているのか。兎も角、フュージョン・フォンを鞄に直して迎撃するっきゃない。


「楽しませて貰うぞ」


「今はやるしかない、か!」


 此方へ走って来ては、連続で繰り出す左右連続回し蹴り。受け流す……のは無理だ。踏み込む瞬間に後ろへ下がって避け、続く左脚は魔力を纏った両腕で防ぎ、力一杯押し返して払う。

 姿勢を崩されない為に両足で踏ん張った瞬間を狙い、両手で首を挟む様にチョップを叩き込む。そのまま肩を掴み振り回して右側面、崖側へ放り投げる。受け身は取れていない。筈なのに平然と立ち上がりやがった。相当タフらしい。


「フフフッ。ソレでこそ楽しめると言うもの」


「畜生、こっちは楽しむ余裕ねぇよ!」


 掴み掛かって来た両手を掴み返す。力比べはほぼ互角、だが──脇腹が隙だらけだ! 左脇腹へ蹴りを叩き込む……んだが、相手も同じ事を考えていたらしく、多少のズレこそあれど互いに蹴りが直撃。此方としては予想外だったが。


「同じ読みとは。フフフッ、アハハハッ」


 どうやら相手側も同じだったらしく、お互い大きく後退。距離が空いた、これならデカいのを撃っても此方へ被害は無い。両腕に魔力を込め、大きく円を描き胸元で交差させて増幅、スパークさせ腕を押し出し緋色の電撃光線を撃ち出す技。


「ライトニングラディウス!」


「ぬうぉ!?」


「よし、直撃だ」


 エルフの集落ん所じゃ、追い掛けられて溜めるのに時間が必要で使えなかったが、相手が怯んだお陰で撃てた。しかも胴体へ直撃、ダウンも取った。今使える遠距離技だとこの電撃光線が精一杯だ、後は静久達とアレが出来ればもっと強力なのが撃てる。

 撃てるが……太陽が出ていない今、無駄に魔力を消耗出来ず無駄撃ちも出来ない。太陽の無い今は二発が限界。撤退するなら今がチャンスだ、琴姉に協力を求めてコイツの撃退なり捕縛やらをするのが最善。背を向け駆け出す。


「イッテ……壁、闇が壁を作ってるのか?!」


「その……通り。敵は私だけではない。この大陸を覆う闇全てが貴様を追い詰め、苦しめる敵となる」


「クッソ。倒すしか道はない、ってか!」


「フフッ。そうだ、掛かって来るがいい」


 走る先で勢い良く壁にぶつかった。姿形を持たない筈の闇が固まり、俺とファウストの野郎を閉じ込めていた。恋愛漫画やら小説ならハプニング~だろうが、気分はプロレスの金網デスマッチだよ馬鹿野郎。

 太陽光は無い、援軍も見込めない、撤退さえ出来ないとなればやるっきゃない。殺るか殺られるか、選択肢は他に無い。不気味な笑い声も不快に思えて仕方ないしな、出し惜しみなしで行く!

 俺が駆け出すと、相手も駆け出す。危惧するは助走付きの飛び蹴り。咄嗟に姿勢を低くし肩からの体当たりを繰り出すも、読まれていたらしく背中へ飛び乗り、転がって背後に回られた。


「フン!」


「ッ!!」


 直感が働いて振り向いた矢先、胸元に右足の蹴り、それも強烈な直撃を貰ってしまった。魔力防御は辛うじて間に合ったものの、それでもかなり痛いし、よろめく程だ。この感じ、守りが突破されたみたいだ……

 こんなダメージ、パワードスーツ無しじゃそう何発も受けれないぞ?! 中距離から射撃技で安全に押し切りたいけれど、魔力が持つ訳がない。大技で一気に──駄目だ、隙が作れるかも怪しい。


「中距離から射撃技で攻めたい。が、魔力が足りない。不憫なモノだな」


「──!?」


「その点、私は闇から魔力補給が出来る!」


 此方の思考が読まれてる。となると、当然大技も警戒されて狙い難くなる。ファウストを睨み付け、動きを警戒していたら突如胸が左右へ開き、中で輝く黄金色の大きな宝石から光弾を放って来た。

 慌てて岩陰へ隠れるも、直撃した岩は一発で砕け散る恐るべき威力。いやいや、大きさは俺が屈んだ位とは言え、幅はそこそこある岩が一撃とか、自動車衝突事故レベルじゃないぞ!

 畜生、闇から魔力補給が出来るからってジャンジャカ撃ちまくりやがって。走って避けたり岩陰へ隠れる度、飛び火して地面が燃えて爆発してるじゃねぇか。ん? 地面が燃える……一か八かの賭けだな、こりゃ。


「どうした、もう終わりか」


「終わりな訳があるか!」


「そう言う割りには、攻め手が止まっている様子だが?」


「うっせぇ。これでもくらいやがれ!」


 周囲に爆発音が響き、砂鉄が着弾と飛び火を受けて燃え盛る。盾にはなってくれんが、視界の妨害程度には出来る。炎へ近付き、裏側から直前の光景と予測だけで手裏剣を投げる感覚でハンドショットを連続して撃つ。

 あくまでも予測撃ち、それも単発ずつだから命中する確率は五分と五分。だが狙ってるのはファウスト自身じゃない。ソレを勘付かれる前に早く仕上げてしまわないと、避けられる。


「何処を撃って……しまっ──」


「遅い。ライトニングラディウス!」


 自身へ当たってない事へ疑問を持たれ、勘付かれたがもう遅い。此方は左腕で魔力は充填し終えた、お前の周囲は前方以外は全て炎で包まれている。もう一度同じ動作を行い最後の一発、緋色の雷撃光線を放つ。


「えっ!?」


「流石に今のはヒヤッとしたぞ。だが、選択を誤った様だな」


「魔力が……吸い込まれてる?!」


 真っ直ぐ飛ぶ雷撃は直撃コース、相手も避けるタイミングが間に合わなかった。のだが……胸の宝石が俺のライトニングラディウスを吸収している。驚きの余り撃つ手が止まってしまう。思わず宝石へ注目していると。

 中で渦巻いている様子が見えた直後、この後に起こるであろうビジョンが見えた。俺に何かが直撃し、崩れ落ちて倒れ伏す光景が。我に返った次の瞬間、恐るべき事に撃ち返して来やがった。


「吸収し増幅、そして反射。受けるがいい、エクリプスの輝きを!」


 咄嗟に両足へ魔力を纏い、右側へ飛び込み避けた。回避した──つもりが掠っていて、左脇腹の服は消し飛び、皮膚が焼けていた。直撃だったら完全に殺られていたし、後ろから聞こえる爆発音からして例え、魔力防御で受けてもアウトだっただろう。


「フン。噂に聞く危険予知、直感スキルに救われたようだな」


「此方の攻撃をっ、倍返しする……だと」


「これぞ宝石・エクリプスの力」


 ヤバい……掠り程度でかなり効いている。応急処置こそ出来てるが、早めに本格的な治療を受けないと此方の魔力が尽きてしまう。求める物が相手の胸にあるとか、何の冗談だって話だよ。

 光線技は駄目、接近戦へ持ち込もうにもこのダメージじゃ殴り合いで確実に負ける。俺が今取るべき最善の手はなんだ……敗北を認める事じゃないのは確か──よし、撤退するぞ。


「ほう。まだ戦う気力があるとは」


「負けるのは大っ嫌いなもんでな。必殺、サーキュラーブレード!」


「二度も同じ過ちを──何っ?!」


 力を振り絞り、魔力込めた右手で宙にX字を描き、両手を合わせて叩き出す形で放つ。魔法も奇跡も使えない俺には、こう言う形でしか属性付与が出来ない。案の定、吸収出来ると思ってるらしいが──

 どうだ? そう思ったら吸収行為はせず、開いた胸部装甲を閉じて魔力の刃を叩き落とした。やっぱりそうだ、光線吸収やら反射とかする連中には切断技が有効となる。昔っから特撮見てて良かった……

 叩き落とされた刃は地面で爆発、アーンド発火して前も見えまい。本調子なら追撃と行きたいんだが、現状は無理だ、素直に諦めて背を向け走り出す。


「逃げようとしても無駄だと……何っ!?」


「確かに、お前さんの魔力光線倍返しは恐ろしく、大した威力だよ。亜空間すら壊してみせるんだからな」


「クソッ、逃がさんぞ!」


 痛む左脇腹を押さえつつ、倍返しで空いた穴へと向かって走る。ガラスが割れた感じになってる事から、一定以上の攻撃で割れるらしい。昔戦ってた連中のは、本当に逃げ場が無かったがな。明るさ的には外の方が暗いが、なんとか脱出成功。

 けど……道化師野郎が炎の中すら走って来るのにはウンザリだ。何か手はないか~と思っていたら、アイツの言葉が脳裏に蘇った。それなら可能かも知れない、急いで合わせた両手を突き出し割れた亜空間へ魔力を放射。

 するとどうだ、割れていた箇所がドンドン修復されて行くじゃないか。後少し、後少し……此方へ伸ばした手が届く前に壁は修復が終わり、同時に道化師野郎を自分自身で作り出した亜空間に閉じ込めてやった。


「早く、戻らなきゃ。何時追い掛けて来るかさえ、分からないんだ」


 人間の集落・フールへ戻るまで、出てくるんじゃないぞ。そう願いつつ走る姿はきっと、敗走した軍人とかに見えるだろうな。っ……魔力切れが先か、集落へ着くのが先か。それとも最悪のパターンかは、神のみぞ知る、だな。






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