再会の娘・中編
先導する静久の案内で無事、ミネラドラコに遭遇する事もなく兄山にある大山一家の住む洞窟へ到着した。中へ入ると親父さんの奥さん、蓮華さんが出迎えてくれた。青い眼と長い黒髪ポニーテール、白装束を思わせる長袖の服に灰色のロングスカート姿だ。
少し遅れて和人の親父さんも出て来た。何故か此方を見た途端、二人共お化けでも見たかの様に物凄く驚いてたけど。取り敢えず奥の居間へと案内され、蓮華さんは自分達を先に進ませ、後ろから付いて来る。何か重要な話でもするのか?
「無事に戻って来れた事に驚いた。が、まさか……」
「貴女。アナメ、よね?」
「そんな顔されると、流石に傷付くんだけど」
三人だけで話が通じてるっぽいが、此方としては全く分からん。親父さんと蓮華さんが驚いて本人確認してる辺り、長期間行方不明にでもなっていたのだろうか。アナメ本人はそんな感じじゃないっぽいんだけど。と言うかだな──
『無事に戻って来れた事に驚いた』とか言われると、何か罠でも仕掛けてたんじゃないか? と疑ってしまうんだが。そんなこんなで話は進んだ……とか行けば良かったんだが、さっきから気まずい沈黙が続いてて、正直吐きたいレベルで居心地が悪い。
「確認する。この女はお前達の娘で間違いない……それはあっているのか?」
「あ、あぁ。俺達の娘で双子、ウズナの姉だ」
「双子?! ウズナちゃんと比べて身体的、雰囲気的にも全然違うんだが……双子!?」
「ウズナはドワーフの、私は人間の血が色濃く出てたから、初見じゃほぼ間違えられてたのよ」
沈黙を破ってくれたのは、静久だった。確認を取ると娘で間違いはない、のだが……まさかの双子。本人曰く「ウズナや私、父さんは見た目以上の年齢をしてる」そうだ。それが本当ならアナメとウズナちゃんの実年齢は一体……
聞いてみたい好奇心はあるものの、好奇心は猫をも殺すとも言うし、そう言う質問して半殺しにされた記憶も危険予知な感じで蘇って来たので、伏せて置こう。親父さんは素直に「俺は百十歳だ」と話すけど、女子に直接にしろ間接的に、訊くと後々が怖いのよ。
恋愛関係になってた仲間達からも、女性に年齢を聞くのは禁句だと口が酸っぱくなる程言われてたしな。しっかしまあ、怒った女性ってのは何故あぁも怖いのかねぇ。下手な怪物より怖かったぞ、あの凄まじい威圧感は。
「けれどアナメは昔、鍛冶に使う材料を取りに行ったまま、帰っては来ませんでした。今の、今まで……」
「そうなの?」
「余り思い出せないけど、一刻も早く鍛冶見習いから卒業したくて素材集めと鍛冶に勤しんでた覚えはある」
「私は研磨師として和人や、アナメの造った道具等を仕上げていました」
何かを言い難そうな表情で話す蓮華さん。親父さんも何か、そんな顔をしているな。見習いから一刻も早く卒業したい気持ちは判る、鍛冶と素材集めに勤しんでた途中で行方不明に……本人はその辺りを覚えてない様だが。
後でその辺りを調べた方が良いかな? もしかしたら副王が原因で開いた『時空の穴』に落ちて、時間を越えた可能性も否定出来んし。フュージョン・フォンならソレを調査出来るかも知りたい。
「どうする、アナメ。此処で鍛冶見習いを卒業する為にもう一度、頑張ってみるのも手だぞ」
「そうね。それもありかな」
「ってな訳だ。家族四人揃って、また過ごせば良い」
選択肢の一つを提示してみると肯定した。此処には居たくない、とか言い出したらどうしようかと内心ヒヤヒヤしたがな。でも何て言うか……二人共、嬉しそうな顔をしてないんだよな。ずっと暗い顔してて、雰囲気も暗いままだし。
「パワードスーツの強化に必要な素材採取だが、まだ幾らか時間が掛かりそうだ」
「まあ、そう……だろうな。希少な素材だ、そう簡単には見付からん」
二人の視線は此方を向いてない。左側に座っているアナメに向けられていて、何か彼女の様子や言動を窺っている感じだ。まあ確かに? 長い年月行方不明だった人が突然現れたら本人かどうか、疑いたくもなるけどさ。
そんな事を思っていたら右側に座ってる静久に脇腹を肘で小突かれ、短く首を横に振る。何かアクションを起こす合図だと判ったものの、現状を変える行動を起こす程度しか判らなかった。
「私達二人は失礼する……それと、パワードスーツを見させて貰う」
「それなら、俺が案内しよう」
「それは遠慮させて貰う。行方不明から帰って来た家族と、話をするといい……」
先導する様に立ち上がった為、自分も続いて立ち上がる。親父さんは顔色が悪いにも関わらず置いてある場所まで案内すると言うが、静久はこれを拒否、家族との会話を楽しめ。的な言葉を投げ付け奥へと進む。
居間に置いていたパワードスーツが無かった為、今現在置いてある場所を訊き、静久の後を追い掛けて奥へと進む。壁に灯りが無いので、普段から松明を持ち歩いて移動してるのか?
「……追い掛けては来ない」
「静久?」
「話は外に出てからする……先ずはパワードスーツの有無を確かめるのが先」
奥へ奥へとズカズカ進んでは止まり、後ろをギロッと睨み付けては、追跡が無い事を確認する。それを繰り返し行い、自分が聞いた置き場へと道案内を言う前に、的確なルートを通って行く。
「これで間違いないないか……?」
「うん。自分のパワードスーツだ」
念には念を入れフュージョン・フォンでスキャンするも、何処か変な点も無く転送して貰ったパワードスーツで間違いなく、確認し終えた後外へ出る。すると大きな溜め息を吐いて、自分へ向き直る。
「私はあの一家を調べる。何かを隠している可能性が高く、信頼性に欠ける……」
「信頼性に欠けるって」
「貴紀は普段通りに接しろ。その奇妙な強運が何かを引き寄せるかも知れない……」
「判った。自分も、人間やドワーフの集落で調査をしてみるよ」
本音を言えば、大山夫妻を信頼出来ていない気持ちはあった。アナメを連れて来た時の様子には不安が大きく膨れ上がり、嫌な予感があれやこれやと沸き上がって来て、胸の奥がモヤモヤして苦しい。
長期間離れ離れ、生死すら分からなかった家族が帰って来た。それなのに、あんな顔をする親がまだいるだなんて……悲しんでも仕方ない、問題が解決する訳でもない。今は行動する事で一致、お互いに一旦別行動を取る。
自分はもう一度大山一家で宿泊させて貰いつつ、人間とドワーフの集落を調査し仲違いの原因を探る。解決出来るかは不明だし、魔神王軍の三騎士とやらに遭遇する可能性もある。周囲にも注意しよう。
「こんな所で何ボーッと突っ立ってるのよ」
「あ、あぁ。アナメか。いや、この闇に覆われた空が晴れる時は来るのかなぁ~、と思って」
「光がある限り闇もある、その逆も然り。何時か、晴れる日は来る。そう信じなきゃ」
光と闇……光が強く輝きを増せば増す程、闇はより濃く大きくなる。そんな言葉を思い出したが、アナメの言う通り、何時か闇が晴れる日は来る。雨も何時かは止んで日が差し込む様に、その日は必ず来る。
「そう言えば、修理に必要な素材を集めるんでしょ? 助けてくれたお礼に手伝うわ」
「その厚意は有り難いけど、面倒な素材ばっかりだぞ?」
「いいのいいの。受けた恩は石に刻み、与えた恩は水に流せ。私の好きな言葉通りにしたいだけだから」
結局押し切られてしまい、面倒臭い素材集めを手伝ってくれる事となった。彼女の素材集めを優先して貰いつつ、移動する中で思い出せる事を色々と教えてくれた。人間達は自ら作った衣服を他の者達へ売り。
ドワーフは農具等を作り、蜥蜴人が沼や山で獲物を取り皆で分けあって生きていたと。成る程、そう考えると仲違いをして信頼関係を失いつつある今、かなり悪化しているんだな。と再確認出来た。
「ルナ鉱石は鉱山の外側にあるって事、私が知る限りだと多くの人が知らなくて、稀少価値扱いされてるのね」
「外側? 鉱山の中じゃないのか」
「そう。大抵の鉱石は鉱山の中で見付かるからそう思われがち。でもルナ鉱石は月の光を浴びて変質した鉱石を差す訳」
「成る程、だからルナ鉱石なのか」
月は人間を狂わせる、なんて聞くけれど、まさか鉱石すら変質させるとは。スカイマウンテンの外側は土砂崩れで砂が多くあるが、どうやらこの砂、砂鉄を含んでいるそうだ。磁石を落としたら……結果が目に見えるな。
面倒な事に求めている鉱石は、砂鉄混じりの砂に大抵は隠れているんだと。但し満月の光が差し込む中では青白く淡い光を放つ為、満月の日しか取れないと誤解されているんだとか。
「あ、お兄ちゃん。何処に行ってたの──アナメ、お姉ちゃん?」
「ウズナ、久し振りね」
砂を払い、鉱石を探しているとウズナちゃんが此方を見付け、走って来たと思ったら途中で立ち止まりアナメと話し合い始めた。再会の娘……だな。夫妻は嬉しそうな顔をしなかったが、ウズナちゃんはとても嬉しそうだ。
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら駆け出しては、姉妹で抱き締めあっている。何度も本人かどうか、夢幻ではなく本当か泣きながら尋ねる辺り、本当に嬉しいんだなって判る。判るんだけど……居辛い感と言うか、空気がキツいッス。
「ごめんなさい。さ、気分を入れ替えて発掘しましょ」
「ウズナも手伝う~」
「そんじゃ、鉱石を掘り出しますか」
軍手を付けて、三人で作業を始める。ウズナちゃんに松明で照らして貰い、残る二つは砂に近付け過ぎない様片手で持ち、二人でスコップを使い崩落に注意しつつ掘り進める。見付かったものの、アナメ曰く足りない。
パワードスーツをちょっと強化するだけなら、今回発掘出来た一握りの鉱石でも十分足りる。が……『強化・補強・改修』するなら全然足りない。可能なら大人が両手で抱き抱えるレベルが必要とか言う。崩落の危険性が高くて、思う様に進まんのにそれ程?!
「ルナ鉱石は魔力を貯蓄し増幅する効果があって、私の考えだと体の関節部に付けたら良いと思うの」
「そうすると、どうなるんだ?」
「流石にそれは試してみないと分からない。でも近くに魔力があると……ほら」
彼女には強化・補強・改修後の完成形イメージがハッキリ浮かんでいる風にも思えた。けれど、どう言う効果を持つかは不明点も多く断言出来ない。しかし両手に持ったルナ鉱石へ魔力を込めて見せると──
青白い魔力が互いを求める様に磁石や電気さながら走っている。連鎖反応を起こし、単体よりも多く増幅しているらしい。これを使って他のを探せないか聞いてみたが……砂鉄が邪魔して反応しないそうだ。
厄介な事に此処の、この大陸の砂鉄は可燃性らしく魔力を撃ち込んだ日には、運が悪いと山火事でドワーフ族の集落が燃えるのを見れるんだとか。スカイマウンテンの東を蜥蜴人、南は人間、西がドワーフの集落があると教えてくれた。
「凄いな、この大陸は。知らない物ばっかりだ」
「ねぇ、貴方が居た大陸の話を聞かせてよ」
「ウズナも聞きた~い」
休憩がてら丁度良い岩へ腰を下ろし、自分が居た大陸に就いて話した。エルフ族が居て僅かながらも機械が有ったり、魔物や魔族が住んでいて住民を困らせ、冒険者が依頼を受けて討伐やら採取等をすると。
二人は真剣に聞いてくれて、質問されては答える。それをどれ程していただろうか? 夫妻が心配する前に二人を連れて帰ろう。そう思い帰路へ着く中、自分とアナメの間にウズナちゃんが入り手を繋いで来た。
「お姉ちゃんとお兄ちゃん、一緒にならないの?」
「ブッフォ?!」
「う、ウズナ?」
傍から見たら親子に見えるんだろうか? なんて仲間達との思い出にふけてたら、この不意打ち発言で思わず吹いたわ!! 言った本人は私、何か変な事を言ったの? 的な顔だし。言われるまで意識してなかったが……
アメナはいい女性だよ。接しやすくて、容姿だって出る所は出て引っ込むところは引っ込んでいる。冷え症なのか、それとも此処の気温が低いからか、体温は低い。自分の手も冷えて冷たいがな。そんな話をしつつ、大山一家の住む洞窟へと戻った。
キャラクター紹介
名前:大山和人
年齢:110歳
身長:162cm
体重:83kg
性別:男性
種族:人間とドワーフのハーフ
設定
筋肉質な体型で汚れた白シャツ、黒い鉄と見間違える腕、灰色をした布生地のズボン、青い眼と短髪の白髪が特徴。ハーフらしく身長はドワーフ以上、平均男性以下。見た目は三十代の成人男性。
ドワーフの集落近くにある双子山。其処の洞窟に住む大山一家の大黒柱。妻に蓮華、娘にアナメとウズナを持つ。鍛冶師としての腕は高いらしく、パワードスーツに使われている素材を触れただけで言い当て、危険性さえも理解していた。
トリスティス大陸が闇に覆われてからは娘達とは仲が良い……とは言えないのか、ウズナに対して強く言い当たっており、アナメには夫婦揃って長女の顔を真っ直ぐ見ていない。しかし先祖代々言い伝えられて来た貴紀へ協力する際は、家族の為にと言っていた辺り、何か思う所があるのだろう。
職人気質なのか、パワードスーツの強化に入手難易度の高い素材や珍しい鉱石を要求する。所有スキルは殆どが鍛冶師に関わるモノばかり。魔神王軍に関しては、余り良い好感は持っていない様子。
名前:大山蓮華
年齢:32歳
身長:160cm
体重:68kg
性別:女性
種族:人間
設定
研磨師であり、和人の妻。青い眼と黒く長い髪をポニーテールにしている。白装束を思わせる長袖の服に、汚れても構わない灰色のロングスカート。仕事中は黒、料理中は白の専用エプロンを着用する。双子の娘にアナメとウズナがいる。
和人同様、アナメと再会した時は真っ直ぐ顔を見れていない。トリスティス大陸・人間の集落出身、仕事繋がりで和人と出会った。貴紀の感想としては「何かを話したくても言い出せず、言い難そうで親父さん同様に信頼したくても今一つ、信頼に欠ける」
二児の母だが体型としては、ほっそりとしていてスリム。金銭に関しては自給自足の生活スタイルが長く身に染みているからか、生きるのに必要最低限有れば良いと言う認識。




