新たなる旅立ち・中編
冒険者ギルドの地下。仲間達が集う場所で未知となった異国の地へ赴く事、恐らく三大勢力のどれかが支配する圏内で妨害が予想されるとか、知り得た情報を共有する。
「ってな事があったんだよ」
「おぉ、それに関してじゃがな、儂ら兵士にも国王直々に伝達があったんじゃ。その間の守りを頼む。とな」
流石話が早い。オラシオンが探索の為に抜ける穴は大きい。またディーテでも送られて来られたら対処は難しいだろう。此方もオラシオンの面々と最低限友好関係は良くする必要がある。
険悪な空気で探索して預けた背中をブスりとか、ソレなんて地獄? 兎も角、此処の防衛は兵士であるベビド達や冒険者の方々に任せる方が良い。実力者も居る事だしな。
「パワードスーツの方はどう?」
「システム面は修復完了。装甲は作業用アームでやらないと命が足りないから、一番遅れてる」
「後は色々と素材が欲しいかな~、欲を言えば純度の高い魔石も幾つか欲しいけど」
「魔石? 何に使うんだ?」
「昔で言う予備電池を作るんだよ。そうすれば光源の無い所でもある程度戦闘が出来て、魔力充填も出来るしね」
やはり素材不足でパワードスーツは装着出来ない。魔力を帯びた石、魔石が有れば今後の戦闘が少し楽になるそうだ。最優先はスーツの素材だけど。
「あ、そう言えば……マキ。例の放射性物質に就いて何か分かった事はある?」
「うん、少しはね。アレは植物みたいな物って事と、接触したモノに突然変異を引き起こさせる二点だけだよ」
「何にしても、現状サンプル採取が不可能で調査と言うよりは観察に近い状態かな~」
放射性物質だもんな。最低でも防護服を着て被爆を避けないとサンプル採取なんて出来やしない。そう言えば眠ってる間に見たやり取りは夢……だったのかな?
本当だとしたら調律者の奴ら、かなり研究が進んでそうだ。話したい気持ちはあるが、確証が何もない現状話しても、良い結果にはならないだろう。
「でも新しい場所か。どんな所なんだろ?」
「偵察ドローンで調査してみたんだけど、命が住める比較的安全な場所みたい」
「比較的安全ねぇ。てか偵察ドローン!? これまた凄いモンを作ったな」
「まだ空飛ぶ計測器としか役立たないけどね」
いやいや、十分凄いって。機械工学とかに詳しくなるとこうなるって例だろうか。料理もやり方を知らない、下手な人から見ると料理人の手捌きが魔法の様に見える的な。
自作らしい箱型パソコンの画面を見ると、赤・青・黄・紫のグラフが上下しているが、何を示しているんだ? 色からして熱源……位しか分からん。
「左から高温・低温・大気汚染・放射能汚染。今回は平均値で良いけど、酷い時も想定したいからね」
「酷い時って?」
「火山周辺とか氷河地帯。排気ガスとかで汚染された場所や放射性物質まみれな土地とか。今のスーツじゃ自殺行為そのものだよ」
そりゃ確かに自殺行為だわ。でもあの放射性物質は融合獣と何かしら関係性がある筈。確実に接触する事となる中、対策無しで飛び込むのは嫌だな。
そう考えれば、事前に環境を知れるのは大きなアドバンテージだ。こう言う時、機械に強い仲間が居てくれると心強い。二人を見て、改めて思う。
「ただね。貴紀君の魔力に近い反応が、ほんの一瞬だけど確かにあったんだよ。もしかしたら罠かも」
「自分に近い魔力……」
「あくまでも、偵察ドローンが測定した地域が平均値を叩き出してるだけ。他の場所は違うって可能性も考えてよ?」
オロオロする寧とパソコンを直視するマキ。一見対照的な二人は得意分野も同じ機械ではあるが、細かく見たら割りと違う事が分かる。
寧は機械工作系と改造が得意。マキは情報処理と最終仕上げが得意。苦手はお互いが得意な事と、互いを助け合う形になっている。
「分かった。向こうへ行った時はその二つを重点的に注意する」
「それと、コレを渡しとく」
マキが突然キーボードを打つ手を止め、パソコンの横に置いてあった物を掴み渡してきた。それはパワードスーツ装着時、目となり敵を察知したり。
スキャン機能で助けてくれる、紅い色が特徴なバイザーと同じ機能を持った携帯電話。種類としては、マイナーなガラケーとスマホの中間、ガラホと呼ぶ物。
「新しく改良を加えたフュージョン・フォンだよ。以前のと違う点はね~」
「環境情報の解析と今は使えないスーツ装着機能、他にも沢山詰め込んであるよ」
「本当に凄いな」
「ただ、スーツは機能を詰め込んでも限界があるの」
曰く、残り容量的に後二つしか機能を足せず大気汚染や放射能汚染、高温低温等は容量が大き過ぎてどちらも取り付けるのは無理だと言う。
なのでパワードスーツを一から見直し、なんとか機能と戦闘能力増加が出来るよう再設計の真っ只中らしい。アタッチメント製作だと材料費が~……と唸っている。
「これ、アタッチメントに使えないかな?」
「貰っても良いの!?」
コートのポケットから単眼鏡を差し出す。魔力を込めると刃に出来て、普通に遠くも見れる拾い物。良いよ……と言う前に取り上げられ。
二人は新しい玩具を貰った子供さながら嬉々として分解し、解析を始めてしまった。こうなると二人だけの世界に入ってるから何を言っても無駄だ。
「そうじゃ。お主、勇者と言う者を知っておるか?」
「勇者? いや、知らないな」
「皆、証言がバラバラでな。無償で魔物から助けてくれた、俺様な態度と我が物顔で村人から強奪やら色々あってじゃな」
勇者……勇者か。そうだ、副王が自分をこの時代へ飛ばす前にそんな事言ってたっけか。勇者御一行とか居るって。証言がバラバラなのは多分──
その勇者御一行が顔を使い分けてるか。称賛されてる勇者と、勇者であるのを利用してる勇者紛いの二組が存在するんだと思う。
特に最後のはゲームの主人公気取りな屑野郎だ。これは自分の目と耳で確かめる他ない。一番はな~、愛が居てくれりゃある程度見抜き易いのに。
「もし遭遇した場合、どうしたらいい?」
「先ずは様子見じゃな。もし強奪等する輩であれば、強引にでも取り押さえるしかあるまい」
「そっか。あ、その勇者って男? それとも女?」
「横暴な態度をする方は男じゃな。ほれ、面もバッチリ割れとる。称賛された時はローブで顔を隠しておったそうじゃ」
ベビドから似顔絵を三枚貰ったが……ほぉ~、バッチリお仲間まで詳しく描かれてやんの。勇者紛いはパッと見、短い金髪を逆立てて顔付きからも何て言うかザ・不良って感じ。
黒ローブの薄ら笑いが似合いそうな女魔法使い、初見でこいつビッチですと言いたい顔の女僧侶。なんかこう言う悪人トリオを昔、テレビで見た覚えが……
「でも他の土地へ行く方法なんて、どうやって見つけたんだろうな」
「実はな。あの二人がゲート……とか言う円形の古代遺物を最近、城の中に出してしてしまったんじゃ」
「アレを!? そりゃ大層驚いただろ、城の人達」
「うむ。心様は好奇心が強い方じゃ、自ら率先してゲートへ入り今に至る」
多分あの超古代遺跡の遺産を起動し、解析しようとたんだと思う。城の人達へは本当に余計なご迷惑を掛けた。今度シオリやトワイの二人と菓子でも作って振る舞おう。
それか、お茶会を開く方が良いかもな。女心って複雑怪奇で、自分には理解出来ん事を昔やらかされた記憶があるし。
……あの頃のみんなに、また会いたいな。っていかんいかん。過去を振り返ってばかりじゃ駄目だ、今まで犠牲になった仲間達の為にもこの旅を完走しないと!
「顔色が悪いが、どうかしたのか?」
「いや、ちょっと昔を思い出しただけ。時間があったらまた来るよ」
時々思い返す。自分を庇って死んだ仲間や倒した数知れない敵、救った相手を。まるで起きていながら悪夢にでもうなされてる気分だ。
余計な詮索をされると、うっかりポロッと喋りそうな気がして話を切り上げギルドから走り去る。クソッ……森の神殿に行った日から悪夢を見がちだ。




