戦いの後に・後編
町人の買い物を見てて何となく分かった事がある。大抵の人は銀貨と銅貨で支払いをしている為銀貨何枚、銅貨何枚って言うから額が解らん。
すれ違う中には武装した人を見掛ける辺り、冒険者的な存在はいるっぽい。白い騎士の格好をした人や馬鹿デカい大剣を背負う人は流石に目立つよな。
……不味い、早速迷った。それでも城が見えるから帰り道は何となく判るがな。やっぱ今の内にある程度戻ろう、進んだら絶対夕暮れには戻れん。
「ちょっと休憩」
寝かされていた医療用テントの近くまで戻って来た辺りで、木製ベンチに座り一休み。観察してみると子供でも、水汲みや木の板を運ぶ手伝いをしている。
あれなら手伝えそうだ。手伝いを終えた子は何処へ行くのか追ってみた。するとギルドと思う場所へ辿り着いた他、大人用と子供用受け付けが在った。
大人用にはモヒカンのおっちゃん、子供用だと同い年位の受付嬢的な服の女の子。この差は一体なんだ? それは兎も角、大将、また会いたいなぁ。
「おぉ、おおぉぉぉおっ!? もしや貴紀か!?」
「えっ、そうですけど……大将!?」
「ハッハッハ! いやぁ~、こんなにちびっこくなっちまって」
「うるせえよ。てか、なんで大将がこの時代に?」
わざわざ屈み、肩をガッシリと掴んできたスキンヘッドの男性に話し掛けられて理解する。冒険者ギルドで世話になったギルドマスターの大将だ!
本名は小山太郎って名前だなんだが、その名前で二メートル未満の身長とボディビルダーみたいな体じゃ、似ても似つかないんで大将。と呼んでる。
思っていた疑問をぶつけると、顎を擦りながら考え出した。大将、ボディビルダーのスキンヘッドがその仕草をすると何故か渋いって感じるよ。
「おぉ、そうだ。お前達が魔神王討伐に行った後、一部の建物や人物がワープって言うのか~うーん」
「要するに一部の人、建造物がこの時代に転移した。って事?」
「おぉ、その通りだ。俺は十年前に着いたらしくてな、その分年齢も十歳若返ったのには驚いた」
ちょっと喋らせ過ぎた。大将、喋り続けると要らん私生活の事まで話しちゃう癖があるんだよなぁ。夢中になるのは良い事だけどさ。
話を纏めると、この時代へ移された際若返ってて、好きな人見付けて結婚まで行き、産まれた愛娘が子供用の受付嬢って訳だな。OK、分かった。……大将に似てなくない?
「初めまして。私は小山巴と申します」
「初めまして。自分は」
「知っています。父から耳が痛くなる程聞かされてますから」
「それは……うん、申し訳ない」
小山巴と名乗る彼女は明るい茶色の瞳、サイドテールの茶髪が印象的だ。それとなんだか、少し大人びている?
言動や態度がなんて言うのか、高級ホテルの受付嬢って感じ。行った事は無いけど、他で例えるなら礼儀正しい人。良い意味でませてる。
「凄いだろ、俺の娘は。今年で七歳の割りに礼儀正しく可愛いんだよ」
あぁ~、こりゃ我が子自慢に移る手前だわ。霊華もたまにこうなるからよく分かるし、自慢したい気持ちも解らん事はない。
が、何時止めたら良いかが判らんのがな。困っていると娘さんが静止を促す様に軽く咳き込み、大将も苦笑いで仕事に戻って行った。すげぇ……
「それで、何かお手伝いに来られたのですか?」
「あぁ、うん。それと此処に就いて色々知りたいんだけれど、大丈夫かな?」
「はい、構いませんよ。では先ず──」
口調も本当に丁寧で礼儀正しい。これぞ人間のお手本、とさえ思ってしまう程。説明会の途中で他のお手伝いさんが来ると、一度話を止めて対応に回る。
そして中断した少し前から話し始めてくれるので、此方がド忘れしても思い出し易い。やっぱり此処は冒険者ギルドで間違いなく、ランクもあった。
ランクは強さと信頼度から上昇する。でも例えば最低ランクの冒険者が稀少価値の薬草、素材を持って帰ったりしてもランクは決して上がらない。
ランクを上げるには、現在のランクで出されてるクエストを特定回数クリア。それと感謝や名声と言った信頼度が必要値に到達後、面談を受け合格すれば良いそうだ。
「他に質問はありますか?」
「上級になる程、契約金が発生する。これで間違いないかな?」
「はい。契約金が発生すると言う事は、それだけ責任の重い依頼であり、実力と信頼度が試されるクエストとなります」
ランクは下から紫・藍・青・緑・黄・橙・赤の七つ。最高ランクでも最上位となる冒険者は代々スレイヤーの称号を与えられるが、今は誰も到達していないそうだ。
話もそこそこに、手伝えるクエストの説明と内容を聞く。やはり子供でも出来るのが多く、その大半が復興の簡単なお手伝い。薬草採取とかは無い、アレは知識と武装をしてやれる依頼だ。
「それじゃあ、荷物の配達を」
「それは依頼者の要望で中身を見てはいけません。指定された場所へ取りに行き、依頼者の元へ届ける依頼です」
地図と依頼内容が簡潔に書かれた紙を貰い、受け取り場所へ向かう。賑わうバザーを幾つか通り過ぎた辺りで、もう一度地図と現在位置を確認。
此処で間違いないっぽい、んだけれど……あるのは何屋さんか判らないボロい店。展示物や看板も無く中もやや暗い。本当に此処であってるのか怖いが、入って聞くだけ聞こう。
内装は木造で商品棚もあるが、何も置いてない。奥にはレジと椅子に座るお婆さんが一人。相当高齢なんだろう、遠目でも弱々しそうなのが分かる。
「お客さんかい?」
「えぇ~っと、ギルドの依頼を受けて来たんですけれども」
「ギルドの依頼? あぁ、アレの事じゃな」
まだ奥があるらしく、お婆さんが入って行って少しした頃。何かの小さな木箱を一つ持って来て、レジに置いた。持っていけ、と言う事だろうか?
「依頼主に伝えときな。一番良い宝物を堀当てたね、って」
「宝物? まあ、伝えておきます」
木箱を手に店を出てから直ぐ振り返り、もう一度店を見る。本当に何屋さんなんだ? 依頼物であるこの木箱、軽くて傾けても音がしない。
気になるが……触らぬ神に祟りなし、だ。下手に開けて呪いを掛けられる。とか勘弁だし、これ以上厄介事は此方から願い下げだ。さて──
後は依頼主の所へ行って、木箱を渡して伝言を伝えたら終わり。地図と依頼内容の紙を見比べて住所を逐一確認しつつ、辿り着いたのは。
「機械屋・M?」
展示物を見ると、自分が知っている物が幾つもあった事に驚きを隠せなかった。機械の義手やラジオ、デジタル時計。身近に存在していた物が並んでいる。
額は盾銀貨や聖杯金貨数枚。自分がサクヤ、終焉と学生だった頃は銀貨は千円、金貨が一万円位だった覚えがある。そう考えると……易い?
考えてても埒が明かない。さっさと依頼物を渡して帰ろう。店へ入るとベルの音が店内に響き、買うか否か悩む人々を横目にレジへ到着。
「すみません。ギルドの依頼で来たんですけども」
「おぉ、スマンスマン。わざわざご苦労……んん?」
「えぇ……」
「ヌワッハッハッハ!」
店の奥から出て来たのは、微妙に覚えてる人物。機都・エントヴィッケルンで兵士長をやってた爺さんじゃねぇか。向こうも此方を覚えてるらしい。
じろじろ見て確信したのか、大笑いして客の視線が集まる。流石に店内だと言う事を思い返したらしく、慌てて口を両手で塞いでいたが、もう手遅れだよ。
「お主の事は聞いておる。奥に入るといい、お主を探していた者達が集まっておる」
自分を探していた人達が集まっていると言うが、一体誰だろうと思いつつ店の奥。スタッフ専用エリアへ通され、何時掘ったのか気になる地下階段を降りる。
折り返し階段を降りた先は、ちょっとしたマンションの一部屋とも思える空間が広がっていて、妙な懐かしさを感じていた。
「皆の者、貴紀殿が来たぞ!」
「皆の者って……みんな!」
「遅かったな、宿主様」
「久し振り、貴紀君」
其処には姿を見掛けず、探していたゼロやルシファーの他に、寧とマキも居た。思わず二人に駆け寄り抱き締める。
もう会えないと覚悟していた二人が無事で、本当に良かった。ただ、現状を前もって聞いていたようで、即座にパワードスーツの綿密なチェックが始まり。
重要なシステムが破損しているらしく、メンテナンス行きになった。原因はディーテの電磁光線。後は装甲も相当傷んでいるとかで、替えが欲しいと。
「早急な機能の修復と装甲を改修したいかな~これは」
「でもこの大陸にある素材じゃ弱いし、装甲もダウンしちゃうよ?」
その後は二人で専門的な会話が続き、理解出来ない自分達は蚊帳の外。判った事はパワードスーツは改修しないと使えず、必要な素材がこの大陸では全て揃わない。
機械的な部分も、修理に必要な材料を買うお金と時間が圧倒的に足りない。つまり暫くは生身で戦えって話。伝言を伝えて今日は解散、ギルドへ報告して帰宅する事にした。




