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ワールドロード  作者: オメガ
最終章・racrimosa
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最終決戦

 『前回のあらすじ』

 遂に魔神王が待ち構える結晶塔に辿り着いたエックス達。されど内部は、外見とは裏腹に真っ黒な空間。

 其処は例えるのであれば──追い詰められ、絶望した人間が必ず辿り着く断崖絶壁と言う終焉の地。

 その中で聞こえるオメガゼロ・ワールドロードの声。ソレが求めるモノは、絶対的な理想郷。

 しかし魔神王が求める理想郷創生には、オメガゼロ・エックス……彼の者が唯一無二の邪魔であった。



 サクヤとタイミングを合わせ、飛び越す様に高く跳躍。空中で身を翻し、登り崖しか見えない山へ。

 頭から突撃するのを見届けるべく視線を奴から離さぬまま、縦一列に着地。だが奴は山に激突せず。

 目の前に展開した円形の闇に突入し、激突を回避。直後、空間が酷く歪み捻れると真っ白に早変わり。

 あるか分からない壁や天井、足場も無く自身の魔力や霊力で足場を作るか浮遊する他無い。


「永久に響き貫け、静響(せいきょう)久遠掌(くおんしょう)!」


「これは──超音波?成る程、空間と相手の位置を把握するのね」


 霊力を纏った両手を打ち合わせ、超音波を発生させてサクヤの言う通り、空間と相手の位置を探る。

 知れたのは──この空間に果てはなく、天井もない。但しこれは無限に空間が続いてる……訳ではなく。

 一定の規模。多分、東京ドームを横に二個並べた横幅と縦幅。内端を反対側に繋がる様にしてると推測。

 超音波が反響ではなく、一定範囲を越えないのがその証拠だと思う。ならば、奴は転移攻撃で来る筈!


「──っ、サクヤ!!」


「えぇ!」


 背後に闇の門が開くと直観が全身に訴え、相棒の名前を叫び注意を呼び掛ければ、サクヤは応え。

 此方が差し出した左手を取り、右側へ跳んだ直後、四足歩行の黒い何かが先程居た場所を通り抜け。

 奇襲を凌いだ。次の瞬間──研ぎ澄まされた五感や第六感、空間把握能力が直感(直観)と合わさり。

 未来を予知。四方八方から時間差で襲い来る、暗い色をした無数の弾幕。それを二人で踊る様に避ける。


「これは……」


 いや、違う。これは弾幕等ではない。よく視ると多種多様な薄暗い色の球体、その内部に何かを感じ。

 じっと目を凝らして見え、感じ取ったモノは──ナイトメアゼノシリーズ。奴らが弾幕と認識した正体。

 けれど……何かがおかしい。心が酷く怯え、目が見ない様にと逸らし、全身が震え必死に避ける。何故だ?

 その時、ふと思い出す。夢見永久と初めて出会った異質美術館。あそこで飾られてた絵を視た感覚だと……

 刹那、バックルが腰に現れパワードスーツを強制装着。バイザーが上を表示し、左側にWARNING(警告)の文字が。


「──!?」


「貴紀?!」


「オオォォォッ!!」


 突如背後に現れては此方の頭を掴み、後方へと連れ去る謎の存在。触れられて漸く分かる──この感じ。

 サクヤの呼び声が瞬時に遠く離れ行く中、獣の雄叫びと風を切る音だけが大きく耳に届く。

 空間把握能力が即座に地形の変化を感じ取るも、次の刹那には既に地面を抉って掘り続け、地盤に直撃。

 それでも止まらない獣は右手だけで此方を何度も地盤に叩き付け、顔面を周囲の地面に擦り付ける始末。

 バイザーには損害箇所とダメージ量が表示され、左目・右胸部・左脇腹に強い衝撃で亀裂が発生。


sin(シン)fusion(フュージョン)change(チェンジ)……Seven(七つ) Deadly() Sins(大罪)Dragon Sin(憤怒の罪)


「目には目を歯には歯を。ならば魔獣には──神殺しの獣じゃ!!」


 危険を察知してバックルが強制的にsin・第三装甲を呼び出し、中央の結晶が放つ光より駆け付け。

 刃ともなるその尻尾で獣の右手首を斬り付け、顔面を蹴り自分の前へ姿を表すは……灰色の狼型装甲。

 一瞬姿を見せた瞬間に分離。音声のままに憤怒の罪を纏い、sin・第三装甲フェンリルフォームへ。

 しかし、こんな地中で戦うには向いていない。掘られた土壁の左右を順序良く蹴り、地上へ飛び出す。


「グオオォォォッ!!」


「魔獣は魔獣でもイフリートとはのぅ。短気で獰猛な性格の癖に、炎や様々な魔術を操る厄介者かや……」


「貴の──?!」


 此方を追い掛ける形で地上へ姿を表し、溢れんばかりの力と感情を放出する様に、両手は握り拳を作り。 

 顔は天に向けて放つ咆哮は耳を塞がねば鼓膜が破れる程に力強く、周囲を見渡す四つの眼が異形さを……

 思わず生唾を飲む程に恐怖心を煽る。愛曰く、魔獣形態の奴はオメガゼロ・イフリート。

 炎を自在に操る魔人の名を冠するとはな。サクヤが此方の名前を呼ぶ瞬間、彼女の近くで鈍い音が響く。


「グルルルルル……」


「何じゃ。音速に対抗されるのは初めてかや?それもそうか。お主は孤独の王……じゃからな」


「グルルアァァッ!!」


「魔獣・魔人の影がよう吼える。余程欲望や感情、性格を抑圧して来たと見える!」


 音は幾度と聞こえど姿は見えぬ。それもその筈。此方は音速で移動と戦闘、会話を行っているのだから。

 愛の煽り発言にキレたのか。気に入らないと言いたげな低い唸り声から、敵意剥き出しの咆哮へ。

 徐々に、確かに速度を上げて刃と牙を、拳と爪を交えながら宙に浮かぶ壁を走り、蹴って飛び跳ねる。

 跳躍移動をする度に砕け散る浮遊民家。同じ速度で漸く目の当たりにするイフリートの姿は……

 薄暗い橙色に紫のライン。左右上下にある瞳は紅く、目の下のラインも紫色で実に悪魔的デザイン。


「イグ……ニスッ!」


「炎のホーミング弾かや?生憎、それはぬし様の技で慣れとる」


「そう言いながら逃してる部分があるんじゃ──言い訳にもならないわよ!」


 左右に広げた両手を此方に向け、周辺に展開した無数の赤い炎を雨霰と撃ち出す魔獣・イフリート。

 愛も負けじと口から冷気を吹いて迎撃するも……相手は無制限に続くマナがある為撃ち続けれるのに対し。

 此方は有限かつ息継ぎも必須。故に迎撃し切れず、冷気をすり抜けてくる炎弾もかなり目立つ。

 それを横から自身専用の狙撃銃で炎を撃ち抜いて爆散させ、的確で正確無比な援護射撃を続けるサクヤ。

 爆煙が互いの視界を奪い、読み合いを生み出した。これはチャンスと認識し──煙の中へ飛び出す。


「ルォッ?!」


「ぬぅっ!!」


 鈍い金属音を立て、空中で勢い良く弾かれる双方。片や重量級な為か背中で浮遊民家を数件砕き、停止。

 片や軽量型故に浮遊民家へぶつかるも弾かれ、サクヤに受け止めて貰い漸く止まるも装甲の損害は甚大。

 旧型より強度も強化されたsin・第三装甲が、こんなにも早く限界近くまで消耗するとは……

 話す暇も無く再度、此方へ飛び込んで来る魔獣。此方も負けじと尻尾型の湾曲剣を手に飛び出せば──


「くっ……」


「貴紀が……打ち負け、た?!」


「グフッ──グフォっ!!」


 交差一閃。双方の着地後、奴の鼻で失笑する音を耳にし……湾曲剣が砕け散り、胸部追加装甲が全壊。

 内側へ響く痛みに右膝を地に着けると──魔獣の左脇腹から鼻角、右目と右角に一閃が入り体がズレる。

 切り落とされた二本の角、切断された右目の視界。噴き出す紫色の血を背景に立ち上がれば、奴は爆散。

 倒したと思った瞬間、先程の悪夢達が爆炎の中へ飛び込んで行くと奴は復活。


sin(シン)fusion(フュージョン)change(チェンジ)……Seven(七つ) Deadly() Sins(大罪)Dragon Sin(憤怒の罪)


「相変わらず……っ!!無茶をされますね、マイマスター!」


 超速再生を終えると同時に此方へと掴み掛かって来る中、再びバックルが強制的に次のsin・第三装甲。

 紅と青の龍を呼び出し、フェンリルアーマーを強制解除し後方へ。変形する二匹の龍を融合装備直後。

 両手で魔獣の両手を掴めば、後方へ押し込まれる。その最中、魔獣は背中から黒い翼と紫の翼膜を広げ。

 今の変貌前にあった三本角が引っ込み、目の下にあった紫のラインが開き──四つ目から六つ目に増加。


「憎イ……何故俺ヲ認めナイ!?私を愛シテ、守ッて、救って!」


「イフリート・シャドウ……ッ、とでも言うべきでしょうか。何はともあれ、今はやるしかありません!!」


 獣の咆哮からカタコト言葉扱いになると翼を羽ばたかせ、増した勢いに任せて浮遊石へ加速。

 此方を押し込んだまま何度も浮遊する民家や石に激突しては方向を変え、また激突を繰り返す。

 奴の発言から絆は魔獣イフリート・シャドウと名付けエイド・マシン、フェニックスに発信を送り。

 招来したサポートメカが背中に装着されると、背面にあるブースター等の出力も全開にして踏ん張り。

 力比べと認識した奴が更に力を加えた直後。絆は敢えて抵抗や噴射を止め、押す勢いを利用して巴投げを決める。


「グオッ?!」


「っ……やっぱり、私の力じゃあの装甲を撃ち抜くのは難しいわね」


「一人で何でも出来ると言うのは傲慢です。出来る事を出来るだけ……それが大切なんですから」


「グルルルルルッ……許せん!!我の邪魔をする愚者共が!友にならぬ、愛してくれぬ両親が!!」


 見えた背中を狙撃銃で狙うサクヤだが……ダメージはあれど、奴の装甲には亀裂すら入らない。

 自身の力では難しいと語る彼女に対し。絆が意識の問題である事、そして──自分の信念を口にし。

 空中で姿勢を持ち直し、怒りと欲求を腹の底から吼え訴え。雷や炎、尖った石に水の刃を出鱈目に。

 言う事を聞かぬ駄々っ子が如くばら蒔くイフリート・シャドウへと視線を向ける。シャドウ──

 確かに今ならその意味が理解出来る。けれどコレは、一般人が使う影と言う意味のシャドウではない。



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