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ワールドロード  作者: オメガ
序章・our first step
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続く因縁と怒り・前編

「先ずは──」


 そう先ずは、ディーテの空中突進を左側へ大きく避ける。本当ならどちらに避けても同じだ。

 と言いたい所なんだが、そうもいかん。奴を回避する際は上か左側だ。突進が空振りしてか、地上に降り立つ。

 地上戦に切り替えたって訳か。シオリは既に負傷者の救助と下級魔族の相手に手が離せない。暫くは自力でやるしかない。


「下級魔族つっても、ゴブリンの群れじゃねぇか」


「忘れたのか? ゴブリンは平均でも子供程度の力と知恵を持つ。成長すれば厄介な相手だぞ」


「王、叱ルノハ其処マデダ。奴ノ動キヲ見逃スナ」


 下級魔族の正体はゴブリンの軍勢。大抵は子供と同程度の能力を持つが故に、見下され気味だが。

 それは大きな間違いであり、多分、今も見下し続けて返り討ちにされ易い下級魔族だろう。

 まだまだ愚痴りたい気持ちはあるが、今は目の前の相手に集中。スキャンをして、弱点を突く。


「スキャン完了。敵対対象をオメガゼロ・エックスと確認。データを統計、反映します」


「宿主様、昔戦ったチクタクマンを思い出せ。アイツは十中八九、同じ戦法を使ってくる!」


 此方もスキャンは終わった。データを見る限り、相変わらず胸や秘部は電力ラインで隠されてる事や、衣服を着ていない。

 エネルギー貯蓄炉と言った構造は、五千年前のままって事が判明した。流石に魔神王軍じゃ調律者達の技術力は無いらしい。

 それでも……無表情で感情を持たず命令された事だけを遂行する奴ってのは、また違った恐怖心が沸く事を歩いてくるディーテを見て思った。


「無駄。貴方の行動予測パターンは既に検出済みですので」


 胸・腹・顔を狙った拳や蹴りは、全て左腕と脚で防がれる。

 全く、電子頭脳とかを積んだ相手ってのはこれだから面倒臭い。下手に馬力もあるから尚の事だ。

 そんでもって、コイツの注意点は大きく二つある。その一つが──


「テメェが俺達の戦法を知ってるように、俺達も幾らか理解してんだよ」


「今だ!!」


「──!?」


 肩を掴みに来た瞬間、背にかかる位であろう黒茶色い髪が青白く発光したのを、俺達は見逃さない。

 素早く屈み、空振りした手とワンテンポ遅れて左眼から放たれる電磁弾を回避。そのまま繰り出した脚払いは成功。

 うつ伏せに倒れた所へ追い打ちを仕掛けるべく脚に全体重を乗せ、頭を地面に押さえ付け右腕を引き千切らんと引っ張る。


「クッソ。相変わらずの頑丈、さぁっ!?」


「腕ガ抜ケタダト?!」


「除去。背中の敵対対象を退かすのに成功。戦闘行為を続行します」


 右腕を力任せに引き千切ろうと踏ん張っていると、突然スッポリ抜けた。だけじゃなく、顔をぶん殴って来た。

 アニメとかで見たロケットパンチだが、有線式なのが大きく殴り飛ばされる中で、少しだが見えた。

 ワイヤーフィストか。スッポ抜けた向きと殴り掛かってきた方角から、ある程度操作が可能だと予想しつつ、起き上がる。敵は待ってはくれない。


「髪ガ発光シテイル。マタ撃ッテ来ルゾ、王」


「連携プレーで行く。準備は良いか?」


「任せとけ。俺は準備万端だ」


 奴は電磁系を撃つ際には、髪が青白く発光する特徴がある。眼から撃つ時も同様だ。

 但し奴は右眼が片方だけ伸びた前髪で隠れている。それだけは撃つ直前まで手や指先か、眼のどちらか読み辛い。

 だからこそ一気に畳み掛け、稼働時間に多少なりとも余裕を持ちたい一心から、奴へと駆け出す。


「予測。左右いずれか、もしくは跳躍からの回り込む行為と判断。対処する」


「なら、当ててみな!」


 両手の指先を此方へ向けている。これは十中八九、上への跳躍や左右への回り込み対策か。

 ならばお前の視界、反応の限界が何処まであるのか試してやる。

 今の俺は相手から見れば、駆け寄る姿が二人に分裂して見えている事だろうがな。


「識別不能。魔力スキャン……どりちらも本物と同等の魔力を検知。両方共狙う」


「っ、今少し耐えてくれ」


 やっちまった。逃げ遅れた重傷者を拾って攻撃チャンスを逃した挙げ句、ルシファーを大きな盾に変化させて足を止めてしまった。

 ゼロの方も此方に気付いたのか、崩壊した建物の物陰に隠れて様子をみている。

 スマン、耐えてくれルシファー。この重傷者は四肢の怪我が酷く、素人目でも下手に動かせん。


「クッソ。考えろ~考えろ~」


 口をパクパクさせ、喋っていた言葉を聴いた時、自然と怒りが沸き上がってきた。

 だが先ずは落ち着いて現状把握だ。重傷者は今、魔力譲渡で止血程度は完了済み。

 だが下手に動かせない事に変わりはない。俺とゼロが姿を隠したお陰か、奴は警戒して今のところ撃っては来ない。

 シオリの位置は……少し離れている。走って届けようとすると、振動で傷口が開く恐れもありそうだ。


「ルシファー、一つ聞きたい。なれる武具とは何処までの範囲だ?」


「一応、一通リハ変化出来ルガ、ソレガドウシタ」


 小声で会話し、多少無茶をすれば現状を打破出来るかも知れないと判明。

 考えた作戦を話すと行けるとの事。重傷者をルシファーに預け、手頃な瓦礫を拾って飛び出す。後は注意を此方に引き付ければ良い。


「愚行。貴方の行動には、理解に苦しむ」


「自我を持たない機械にゃあ、理解出来んだろうよ」


 拾った瓦礫を一つずつ投げつつ走る。ある狙いがあるからだ。一つは注意、もう一つは奴の武器。

 電磁砲(レールガン)は強力な反面、冷却は必須。人型にまでコンパクトなら、冷却時間は多い筈。


「看破。そんな見え透いた手には引っ掛からない」


「残念ながら乗って貰うんだな。コレが!」


 瓦礫は手で全部弾かれたか。だが、それで良い。お前は冷却時間のある武器は安易に連射出来ん。

 其処に付け入らせて貰う! 敢えて分の悪いインファイトを挑み、腕からの発射を至近距離で防ぐ。

 俺のスキルは常時発動系と緊急時発動系。つまりスキル宣言の隙は無い。敵の打撃は手痛いが、危険な眼と右腕に注意を向ける。


「困惑。距離が離せず、決め手に欠ける」


「だろうな。俺は単機突撃型。格闘戦こそが俺の最も得意とする射程だ!」


 奴の得意な距離は恐らく中距離、逃がしはせんよ。

 離れるならば自ら近付き、切り離しが出来ん左腕を掴んで寄せて殴る。魔力を込めた拳でも流石に複合装甲は抜けんか。


「発見。レーダーに離れて行く対象を発見」


「戦闘中に背を向けるってのおぉ、わぁ!!」


「驚愕。視界が──」


 古代の戦車チャリオットへ変化したルシファーに乗ったゼロ達の姿は捕捉されたが、後少し。

 同時に此方へ背を部防備に向けている。この隙に背中へ組み付き腰へ手を回し、ガッチリ掴む。

 此処から一気に真後ろへ弧を描き、後頭部と首を力一杯地面へ叩き付ける!


「テメェらはっ、本当に凄い奴らだよ」


「理解、不能。貴方の言葉は、理解し兼ねます」


「俺達が頑張って一人を救う間にっ!! お前らは何十人何百人と傷付けるんだからよ!」


 技を決めた姿勢から相手に向き直り、胴回りを再び掴み持ち上げ、再度地面へ叩き付けてやった。

 ジャーマンスープレックスとパワーボム、プロレス技の二連発。後、怒りに任せて思わず愚痴っちってしまったが。

 時間は十分稼げた。残り稼働時間は……二十三分。スキャンした結果、シオリ達は持ち直した様だ。


「確認……頭部外傷、軽微」


「チッ。その複合装甲、何で出来てんだかな」


「拒絶。その回答は機密情報です」


「だろうよ。寧ろ機密情報を迂闊に話す方が怖い位ってなもん──っ!?」


 難なく起き上がってくるか。内部ダメージは期待出来そうにないな、コレは。

 奴が飛び込んで来た瞬間、突然直感が警報を鳴らすから後ろへ下がった途端、目の前で何かが連続爆発しやがった。

 向こうがって訳じゃな……がぁぁっ?! 何だ、何が起きている。誰が俺を建物に擦り付けながら移動している?






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