復讐者
『前回のあらすじ』
三騎士・ミミツに苦戦するゼロとリバイバー。防御を貫通するお互いの攻撃に、出方を見合う。
そんな硬直状態を自ら破り、突き進むゼロ。機転を効かせた一撃を叩き込むもミミツには通じず。
バックルを使い召喚したsin・第三装甲とリバイバーの連携プレーにより漸く撃破に成功。
適性の無い、足りない二人は無理矢理sin・第三装甲を纏った反動を受け、暫し休憩を取るのであった。
黒い結晶体・内部でゼロとリバイバーの二人が三騎士・ミミツを撃破した頃。自分達は第二防衛戦──
青紫の結晶体・内部へ到着していた。第一防衛ラインを突破されるとは思ってもいなかったのか。
はたまた。ミミツが言っていた様に、別に通しても良いと言う判断なのかは分からんが……何はともあれ。
戦力ダウン無く此処へ到着。当然と言うべきか、目の前には三騎士・コトハが立ち塞がってはいるが。
「ぶっほ!!ミミツの奴、相手の出方を見過ぎて負けてやんの!」
「仲間が負けたって言うのに、随分な言い方ね。私達が相手でも余裕って事かしら?」
「仲……間ぁ?ふひひ……私達三騎士はチームとして括られては居ても、独断が許されてるんですぅ~!」
恐らく、魔神王のギフトで仲間の敗北を通知されたのだろう。俯き、両手で口を抑え──
堪え切れなくなった笑い、大爆笑が両手を払う様に吹き出すとミミツの敗北を嘲笑い、馬鹿にし始めた。
気分を害したのか。左腕から黄色い光が飛び出すと霊華の姿を形作り、胸元で腕を組みコトハへ問う。
仲間と言う単語に反応すると不気味な笑みを浮かべ、三騎士はチームと言う括りではありつつも。
ある種のワンマンアーミー発言に納得。何せ三騎士全員と対決した時の戦いは滅茶苦茶だった。
「成る程。確かに君達三人とご主人様が対峙した時の戦いは、仲間意識が皆無だったね」
「さて……カケハの無念を晴らす為にも。力尽くでもアンタ、──をシバき倒さないとね」
「……てめぇ」
龍神達が住まうフォー・シーズンズ、トリックが計画・実行した天空島での対決を思い出した恋曰く。
チームプレーや仲間意識が皆無発言。まあ各々自分勝手に動き、それが噛み合ったり合わずだったが……
されど恋の発言には無関心だったにも関わらず。霊華が口にした単語の『カケハ』と、コトハの本名。
『──』を聞いた途端、小さいながらもピクリと体が反応。これまでの経験上……地雷を踏んだっぽい。
少し間を空け低い声で呟くと、触れて欲しくないと言う意味と殺意を込め、目を細め霊華を睨むコトハ。
「呪術士の癖に、人を呪わば穴二つって言葉を知らなかったのかしら?貴女の罪、今こそ受けるべき時よ」
「……くひっ。罪ぃ?恨まれてる奴、憎まれてる奴を依頼通り呪殺して感謝されてるアタシに罪、ねぇ?」
「恨み、憎まれてるのは、お前も、一緒。その罪、償わせる」
「そうだね。静久とご主人様の分も、僕達が君に罰を与えるとしようか」
人類の歴史とは憎み憎まれ、負の螺旋を作り続ける。精神──魂の成長を促す為に、怨嗟の中で延々と。
呪術士。拝み屋とも言われ、報酬次第で誰かを呪う時もあれば、救う時もある。
その力で何を成すかは当人次第。されどコトハはどす黒い欲望を満たす為、誰かの命・人生を奪った。
その罪と罰を受ける時と霊華が言い、呪殺して感謝される自身に罪はないと、遠回しに言い返すコトハ。
被害者である詠土弥、そして恋は罪を償わせ、同時に罰を与える為に一歩前へ踏み出す。
「きひっ……罪と罰、ねぇ。それじゃあ、アンタらも罰を受けなきゃ駄目っしょ!特に──破壊者は数多くの夢と希望を打ち砕いて来たんだからさぁ!!」
二人の言葉に何か閃いたのか?俯いたまま一度軽く笑い、罪と罰を口にして少し間を空けた直後──
勢い良く顔を上げ、自分達に向けて罰を受けるのならお前達も受けなきゃ駄目だ!と声高に叫び。
ゆっくりと視線を此方に向け……逃れられない現実・事実を満面の笑みを浮かべながら突き付ける。
大半の仲間達は動揺を隠せず、お互いの顔を見合っては何も返す言葉が見付からない様子。
それを見て爆笑を必死に堪え、俯き両手で口を塞ぐコトハだが……自身へ近付く足音に気付き顔を上げる。
「当然でしょ?私達は数多の罪を犯し、数えられない程の夢と希望を打ち砕いて来た」
「あぁ。だからこそ、僕達は全てを終わらせた後に罰を受ける。勿論、ご主人様もそれは覚悟している」
彼女の前方には霊華と恋。偶然か必然か。服の形こそ違えど、巫女服を着る者と羽織る者が対面。
二人の顔に怯えや後悔等と言った表情は一切なく、罰を受けるのは当然の事であり覚悟済みと言い返す。
それはそうだ。誰かの幸せとは誰かの不幸。因果応報、悪事を行えばその報いは必ず当人へ帰って来る。
自分は自身の行いを悪事と理解した上で、魔神王の夢と希望を打ち砕く為なら死ぬ覚悟も抱えて進むさ。
「ふひ……あのお方もヤベーけど、アンタらの覚悟も相当ヤバいわね」
「さあ──どちらの悪事が上か。貴女に関わりと恨みのある私達だけで証明しましょうか」
「コトハ、私に静久、殺させた。屈辱と恨み、晴らす」
自分達の真剣な表情に絶対敵わないと心身で理解するコトハは、そんな相手に挑む覚悟を持ち。
実際行動にまで移している姿を見ているからこそ、別ベクトルでヤバいとニヤケながら呟く。
すると霊華は右手にお祓い棒改め御幣を召喚。その先端をコトハに向け、どちらの悪事が上か。
彼女に恨みと関わり──この場合は互いに敵意を持つ霊華と恋、詠土弥の三人で証明。もとい……
勝負をしようと持ち掛ける。詠土弥も利用された件を相当根に持っているらしく、殺る気満々。
「くひっ。数多の世界と命運、平和を賭けた勝負……その希望を叩き潰せるとか、最ッ高に面白いじゃん!」
されど、殺意・敵意を向けられてもこの戦いに込められた意味を理解するコトハは目を輝かせ。
最後の希望を叩き潰し、台無しにする事へ強い興味と興奮を覚えた途端──
彼女の足下から噴き出す、膨大な青紫色の魔力。いや……この場合は呪力、と言うべきだろうか?
それに釣られてか。影の様に足下から伸びる様に姿を現す呪神・珠沙華。しかし姿は真っ黒。
「……まだ完全には顕現出来ていないみたいだ。どうするんだい?二人共」
「穢す。静久を苦しめた事、後悔させる」
「神だろうと呪神だろうと──分からせるだけよ」
恋曰く、不完全な顕現らしいが……神は神。完全に顕現すれば、その実力は計り知れない。
どうするか二人に問い掛けると。詠土弥は神性を穢す──即ち、神の座から引きずり降ろすと言い。
霊華に至っては、握り拳を作る指の運動をしながら……誰が上かを物理的に分からせると発言。
聞いた恋も笑ったままだが……体から溢れ出す霊力は背筋を震わせ、心臓を掴まれた錯覚すら覚える程。
友を、子を、主を殺された復讐者達の報復が今──始まる。まあ、殺された当人達は生きてるがな。




