表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドロード  作者: オメガ
七章・ferita che non si chiude
354/384

試練 -stand up to the fight-

 『前回のあらすじ』

 遂に──冥刀・久泉を打ち破ったルシファー。シナナメは敗北を認め、勝者の決定権を受け入れると発言。

 更にはトドメを刺すなら刺せと言う。そんな彼女に勝者・ルシファーは悪魔の言葉を残し、その場を去る。

 突然の高熱に意識が朦朧となるエックス。そんな彼をゼロが背負い、残る二人が看護しつつ決戦の地へ赴く。

 其処で待ち構えていたのは……無月終焉と、ナイトメアゼノ・ホライゾンの本性を表したベーゼレブルだった。



 左腕を二人に向け、狼武装甲から黒い砲身を出せば──警告や何の前触れも無く即発射。

 紫色の砲弾は相手目掛けて真っ直ぐ飛ぶも。終焉は右手で右斜め下から、左斜め上に振り上げて弾く。

 遥か上空で轟音を鳴らし、爆発する砲弾。痺れ、小刻みに震える右手を見た終焉は此方へ視線を戻す。


「流石──と言うべきか。威力は申し分無い」


「お世辞は結構。時間が無いのはお互い様だろう?」


「フッ……古き友に一本取られたな。では、行くぞ!」


 微笑み此方を賞賛する兄貴分にお世辞(リップサービス)は不要で、双方時間が無いと指摘すれば。

 ホライゾンは軽く鼻で笑い、左腕を黒い大剣に変えて迫り来る。……コイツの鼻って何処だ?

 此方も右腕──龍武装甲から大剣の刀身を出し、迎え撃つべく飛び込み刃を交える。

 以前までの様に押し負ける事無く、渡り合えている辺り漸くと言う気持ちもある中。

 ドゥームらしくもない、力任せな腕の振り方に疑問を抱きつつも、冥刀の件もあり弾かず受け流す。


「まだだ!こんなモノでは俺が求める死に物狂いには、余りにも程遠いぞぉ!!」


「コイツ……ッ!!」


 突然剣捌きの動きと速度が良くなり、此方も動きを速めれば、何度も金属の擦り合う音が鳴り響き。

 受け流す度に周囲の建物や植木は衝撃波で切断され、宙を舞い、舗装された道路に無数の傷が付く。

 それに混じりホライゾンの怒号が飛ぶ中、奴の左腕が弓矢から此方に合わせた砲身に変更。

 依然速度が速まり続ける剣捌きの合間に、此方へと砲身を向け、無数のフェイトを交え肉矢を射つ。

 首を左に傾げ、紙一重で避けた背後からビルが倒壊する轟音が轟き、見ずとも威力の高さが知れる。


「おいおい。俺も混ぜてくれ……よっ!!」


『スペード・10!エリネ──ミラー』


「ぬおっ?!」


 高く跳躍し、頭上から重力落下の速度を乗せた飛び蹴りで背後から迫る終焉。

 この二人相手に下手な回避は自分の首を絞める。エリネのスキルを思い出す時、バックルが応え。

 刃を受け流した直後、彼女のスキルが発動。二人の前方を屈折させ、向こう側が見えない壁を生成。

 要するに。二人は此方は見えてもお互いの姿が見えない、逆マジックミラーと言う状態。

 だが当然……こんなモノじゃ、あの二人は騙し切れん。それは百も承知。狙いは別にある!


「その程度の狙い──」


「見破れないとでも思ったか!」


 狙い通り各々透明な壁を片や拳で、片や大剣を振るい透明な壁をぶち破る──と同時に。

 真下へ向け氷弾を五連射。白煙と黒煙が混ざり合い、周囲に広がる。其処に吼えて飛び込む二人。

 逆に此方は煙の中で屈み、狼武装甲を地面に向け冷気弾を発射。その出力で自身を真上に吹っ飛ばす。


「クッソ!?体が!」


「凍り付く……だと?!」


 先ずは狙い通り、第一段階成功。氷属性煙幕の生成。敢えて煙の中へ誘い込み、追加で氷爆を散布。

 更に砲撃の反動と衝撃で離脱。此方の先を眺め、足を止めれば全身へ容易に纏わり付く氷結結晶。

 機動力を奪い、可能な限り少しでも勝率を上げる為、今度は真下の煙幕に六発撃ち込む。

 直後、一足飛びで飛び上がってくる終焉。その体に纏わり付く氷結を、黒炎で溶かしながら。


(さっきも言った筈だぞ。その程度の狙い、俺達には見破れると)


「ッ……!!」


(俺達は他の雑魚共と違い、お前を弱者と侮らねぇ。何度も戦闘記録から研究を重ね、対策は取った!)


 両腕の武装甲を解除。粒子変換後、トリスティス大陸攻略後に得た籠手型(オーダーメイド)武装を右腕に再構築。

 私へ伸ばす右拳を即座に左手で右側へ払い除け、反撃の右拳を顔面ストレート──では無く。

 終焉の頭上。跳躍の上昇先を見越し、首狙いで右腕を振り切る。オマケで保険に左脚も動かす。

 が……狙い通りの位置へ上昇した直後。首を切る刃は虚無・アインにより触れた部分を抹消され。

 保険で繰り出した腹部狙いの左膝蹴りも、逆に左手で受け止められ、反撃に上段右回し蹴りが迫る。


「危ッ──ねぇ!!」


(避けた?!今のは完全な不意打ちだった筈……うおっ!?)


 咄嗟に大きく仰け反る中、眼前を過る右足。回避行動と同時に、サマーソルトキックを繰り出す。

 数秒にも満たない出来事とは言え。回避・攻撃を同時に行う思考加速は、想像以上に集中力を使う。

 数多くの強敵達と戦った経験が無きゃ、今のは避け切れなかった。と言うかだな……

 顎直撃コースの反撃サマソまで見切り、身を捻り避けられるのは普通にショック。自信を失くすわ。


「もっとだ!もっともっともっと!!それこそ命懸けで挑み、泥に汚れ命からがら勝利を掴む気で来い!」


「野郎……っ!」


「忘れるなよ。お前の相手は──俺達だ」


 背中のマント越しに鋭い棘を複数受け、浮力を失い真っ逆さまに墜落する中。

 ホライゾンへ視線を向ければ、此方へ飛び込んで来る二人……終焉の使者と悪夢の地平線。

 ビル郡のコンクリ地面へ激突する寸前まで、後五秒。迫り来るまでの時間も残り四秒……

 三秒、余りにも早い。二秒、引き付けろ。一秒──今使えるモノは全て使い尽くせ、後悔は後だ!


wild(ワイルド) card(カード)──シャドウ・ダイブ』


「地面に溶け込んだ?!」


「落ち着け、終焉。這い寄る混沌が使う、影を利用した移動手段の一つだ」


「……成る程。故にJOKE、ワイルドカードって訳か。しゃらくせぇ」


 バックルが此方の意図を理解し、スキルを発動。地面に激突する瞬間、自らの影に溶け込み消える。

 影の世界は白黒世界で、表世界と比較すれば色が反転しており。白は黒く、黒は白い。

 つまり……色相も反転している為、内側マントの赤は青く外側の白は黒。装甲も白黒反転済み。

 都合が良い事に、表側の声まで聞こえる。逆に考えれば、此方(裏側)の音も向こうへ伝わると。

 感情的になる終焉に反し、ホライゾンは冷静沈着。逆に私へ挑んでる時はその反対。面白い対比だ。


「なら注意を払うには……影か。影にさえ気を付けていれば、奇襲は最低限防げるな!」


「その通り。逆に言えば、奴は影からしか現れん。影を絞れば、此方が狙い討てるチャンスでもある」


 流石は対策やら研究をしている終焉と、対戦回数がダントツに多いホライゾン。と言うべきか。

 一分未満で既に対抗策まで見付け、実行に移すとは。終焉は黒炎を辺りにばら蒔き、光源を増やす。

 建造物や瓦礫すらも焼き尽くし、出口となる影を瞬く間に無くして行く。残る影は二つだが……

 正確には一つ。二人が互いの影を重ねる様に立ち、此方が出て来るのを狙い待ち構えているからだ。

 …………やれる事を、やれるだけ……か。そうだな。それが私のやり方、命からがらの勝負法。


「影に波紋……来たか。随分と焦らしてくれるじゃねぇかよ」


「いや待て。奴がそう素直に出て来ると思うか?」


「言われてみれば……確かに。アイツは時間さえ与えれば、色々と手を変え品を変える。ならば」


「あぁ。初撃は勿論──」


 重なりあった影から第一陣が飛び出す。二人は決して上を見ず、ただ足下で波紋を広げる影を見る。

 第二陣、第三陣が飛び出す瞬間を狙い──二人は私が作った複数の分身を纏めて殴り、射ち貫く。

 顔・首・左胸部・鳩尾の四ヶ所を的確に狙う辺り、殺意は高い。穿たれた分身は弾けたが……

 静久のスキルで作った水分身はアレで全部。次に出て行けば、確実に屠られる。……次がアレばな。


「守護せし光の壁よ。荒々しく燃え盛る猛火を纏い、我らが敵を囲え──奇跡・火焔牢陣!」


「しまった。本体は第一陣に飛び上がった一体目か!」


 此方の声に気付くや否や。最初に素通して逃した私が居る上空へと一斉に視線を向ける二人。

 彼らの周囲を囲い回るは、半球状に展開した無数の護符。この技は霊華がMALICE MIZERにて──

 常識外れの悪夢、ナイトメアゼノ・アンビバレンスに使った護符と奇跡の火焔結界。その強化版。

 このまま継続させて、超高熱と火焔で体力・酸素を奪い尽くす!!あわよくば、酸欠勝利を狙う!


「良い判断だ。だが──常識に縛られた雑魚共に対しては……な」


「左様。我々にこの星の常識が通用すると思ったのか?我が唯一無二の親友(とも)よ」


「当然の反応、ありがとう。これで終わると思える程、楽観的思考はしていないので……ね!」


 火焔に包まれる中、上空に居る此方へ届く声量で返答する終焉。それに同感の意を示すホライゾン。

 普通なら、火事場での酸素ボンベや防災装備も無い中行う会話なんて自殺行為にも等しい。

 が……奴らに常識なんてモノは通用しない事実は既に、ナイトメアゼノ達や三騎士相手で実証済み。

 対する此方も返答を返し、左手を火焔結界を構成する護符に向けマナを注ぐ。すると──

 火焔を生成し、段々で各々左右に回る護符は青い火焔球を四方八方から二人目掛けて撃ち放つ。


「当然……この程度で倒せる訳がない。故に──しまっ!?」


「貴紀。お前も先行イメージで、自ら視野を狭めていたみたいだな」


 これで倒せるとは思っていない。この技、コンボはあくまでも時間稼ぎ。本命はS・D・N(スカデモノヴァ)

 右手にマナを集中させ、緋色の爆炎球を作る最中──大空を自由自在に泳ぎ、主に付き従う存在。

 及びその脅威度が頭から抜け落ち、気付いた時は既に漆黒の長い尾で弾き飛ばされた後。

 半壊したビルや数々の店を貫き、コンクリの地面を削りながら電気の点かない信号立ち尽くす車道へ。

 そうだ……終焉にはコイツが居た。蛇の様に細長く、強靭で柔軟な体を持つ黒龍が。


「まだ絶望するなよ?世界の命運を背負った勝負は──始まったばっかりなんだからよぉ!!」


「燃え滾るか、若き終焉よ。だが……それで良い。我々に勝てぬ程度であれば、世界に未来等無い!」


 素手で火焔結界を払い破り、声が届いているかも分からないまま呟けば。此方へ向かって飛び出す。

 その勢いは先程より強く、熱い。まるで風前の灯火の蝋燭や、生き急いでいるかにも思える程。

 ホライゾンもカーテンを払い除ける様、右手で結界を破り、意味深な言葉を誰に向けてか話すや否や。

 終焉の後を追い、飛び出す。幸い、ジェネシス・オーラの常時効果(パッシブスキル)でダメージは無い。

 仰向けの状態から起き上がり、右腕の武装甲を粒子に戻し、今度は左腕に狐武装甲を纏う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ