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ワールドロード  作者: オメガ
七章・ferita che non si chiude
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制御 -Every time, I'll be here right beside you-

 『前回のあらすじ』

 生身で挑む紅心のスピード、パワーに全く対応出来ないどころか、直感にすら干渉され押されるエックス達。

 マジックまで参戦し、手土産に投げ渡される……師匠・恩人・義姉・将来の約束を交わした神無月水葉の死体。

 沸き上がる様々な感情と力。嘘・偽りだと認めたくない気持ち、相反する感謝が解け合い、覚悟を決める。

 オメガゼロとして一割の本気を出した実力は二人にダメージを与え、本気を出させお互い本気の戦いに……



 改めて私の体を見る。普段着のロングコートは両肩の左右非対称・紅と青の王冠型鎧に付く黒マントへ。

 右腕は黒く、肘から先が紅龍の頭部型手甲。手の感覚は無い為、絆と混ざっているのか。

 よく見れば紫色でひし形の角が、手甲の根本から頭へ模様がある。其処に居るのか、ルシファー。

 頭部の口から出る両刃剣の出し入れ、手甲の召喚・送還も任意で可能。これで素手も使えるな。

 その他外見上変化は無し。だが──覚えた。成る程、破王に宿った夢現の固有能力も使える訳か。


「宿主様。現状余裕を持って後十分、ギリギリでも十二分が限界だ」


「それ以上は我々だけではなく、マイマスターも耐え切れません」


「マア、イツモノ癖デ言ッテハイルガ……オ互イ繋ガッテイルンダ。言ワズトモ、ダロウ?」


 右腕から聞こえるゼロの声が、この状態での戦闘可能時間を教えてくれて。

 龍の手甲より発する絆の声は制限時間限界へ近付くとどうなるか?の情報を伝え。

 同じく手甲からルシファーが、自身らは現状常に以心伝心状態ではあるものの……と付け足す。

 確認を終え、四天王の二人へ視線を向ける。どうやら……私の動きを警戒しつつ手を打っているらしい。


「それじゃあ後二十秒、時間稼ぎお願いね」


「貸し一つだぞ」


 残り二十秒を稼ぐべく。此方へ飛び込み、大きく振りかぶり右拳で殴り掛かるブレイブ。

 体を左側へ捻り、横を向く様に左足を動かせば──空を切る相手の拳。自ら隙を晒すとは。

 顔面に右肘を打ち込もうと繰り出すも……合体した機械の体を分離させ、逆に此方の懐をすり抜ける。

 漆黒の戦闘機と紅の機械龍が頭上を、二台のオートバイが正面と背後。白銀の人型ロボは空高く跳び。

 追従するメカ達と空中変形合体。もしや……人類代表でハチュウ人類と戦ったりしたか?


「光を呑み込みし闇よ。希望を喰らい、絶望の果てに世界を塗り潰せ。()は始まりと終焉に位置するモノなり。暗く深く冷徹に、黒く全ての命を等しく凍え、枯れさせて──禁忌・終焉の地」


 視界が上空のブレイブに向いている最中。突如聴こえる、何処か厨二病感を匂わす呪文の詠唱。

 それに応える様に、青々とした空は灰色の暗雲に覆われて陽の光を遮り、夜間の様な薄暗さへ。

 周囲の地形も砂地からムンクの叫びにも似た灰色の岩と山。悪い意味で、見慣れた光景。

 それに……身体中に纏わり付く、無念の死を迎えた者達の無数にある白い手が、鉛の鎧と思う程に重い。


「コレハ……完全詠唱版・終焉ノ地?!」


「完全詠唱版終焉の地の効果で、俺達闇の勢力は多大な祝福(強化)を受ける。メテオストーム!」


「例え詠唱を破棄しても、魔法や技の威力は元の──軽く三倍よ。降り注げ……メテオォ!!」


 授業で先生が教える様に。わざわざ解説しながら実践までしてくれる、ブレイブとマジック。

 暗雲の雲を突き抜けて斜め下に降り注ぐは、隕石の雨。だが……当てる気がないのか、全く当たらない。

 ただ、その理由も分かる。幾ら前座が当たらずとも、フィールドを埋め尽くす大本命(超巨大隕石)があるからだ。

 ちょっと面倒臭いが……右腕の手甲を送還。暗雲突き破る隕石に向け、そっと右手を伸ばす。


「天の雷よ、熱く轟く刃で敵を撃て。稲妻の矢(ライトニングアロー)!」


「背後がガラ空きだぞ──ッ!?」


 その隙を狙うマジックの、遠距離から等身大の稲妻を纏った刃状の矢尻が正面から左胸へと迫り。

 背後からはブレイブの左膝蹴りが後頭部目掛け、迫っている。まあ、避ける必要性はない。

 左手を矢尻に向ければ、水を吸い込む様に左腕が吸収。後頭部に左膝が命中する寸前、自ら即離れる。


「な……なんだ?!今の悪寒は」


「反動無しで装填とはね。恐れ入るわ」


「緋想、スカーレット・デーモンズ・ノヴァ。完成度七十パーセント、行けます。マスター」


「制御ハ俺達ニ任セロ。少ナクトモ、コノ惑星(ホシ)ノ消失マデハ継続サセン」


 流石はブレイブ。見えないジェネシス・オーラの変化を直感的に気付き、触れる前に離れたか。

 反動無しに関しては、本気を出してない『有機生命体』ならば、想像を絶する痛みもあっただろう。

 絆から右手の平に溜めた完成度七十パーセント程で、野球ボール位の爆炎球が出来たと言われ。

 制御は自身らに任せ、撃てとルシファーに背中を押されて放つ。ソレが隕石に命中した途端──


「掴まれ、マジック!!」


「助かったわ。我掴むは不動の位置!」


「ルシファーに絆!アレの制御もそうだが……俺達も踏ん張るんだぞ!?」


 焼け石に水とばかりに爆炎球は弾け、超巨大隕石は内部から大爆発を引き起こし、砕け散るも。

 外側へ放出されるエネルギーは止まり、捻れ・歪み、渦を描きながら爆発の中心へ吸い込まれて行く。

 緋想スカーレット・デーモンズ・ノヴァは単なる爆炎球を放つ技。なんて弱火レベルの部類ではない。

 砕け散る隕石の破片を引き寄せた上、全てを吸い尽くす超重力(ブラックホール)が地上の岩をも吸う。

 体が浮いたマジックの右手を機械の左手が掴み、引き寄せると懐かしき魔法で吸引から耐える二人。


消失(ロスト)。フム。ヤハリ、完成形ニハ程遠イ威力ト精度ダ。コレナラ惑星上デモ使エヨウ」


「あの……本気で完成形を撃つと、惑星上に限らず銀河系が丸々一つは消し飛ぶんですが?」


「そりゃあ、デーモンズ(悪魔達の)・ノヴァ(超新星爆発)だからなぁ。超重力(BH)程度で収まるかよ」


 伸ばし開いた右手を握り締め、疑似BHを握り潰し破壊する。これが本気を出したくない理由の一つ。

 強大な力は利用者こそ集めど、真なる弱者は絶対に近付かない。私が救いたい者こそ、真の弱者。

 故に私は獅子ではなくカバとなり、手を差し伸べられない姿たる、真の弱者達に道と可能性を示す。

 その為にはオメガゼロではなく、人間として戦う姿と努力を見せる必要があるのだ。


二重魔法(ツイン・マジック)。天より舞い降り地を裁く白き聖光よ、天へ舞う渦巻く檻へと集い纏まり降り注げ」


「おいおい!これって宿主様の記憶が戻る前、水葉がマジック達を追い払う際に唱えた魔法じゃねぇか!!」


「詠唱ハ知レド、呪文ト効果ノ知ラヌ魔法……コノ手ガ一番厄介ダナ」


 暗雲が晴れるも薄暗い空から降り注ぐ六本の光。ソレが二重に六芒星を描いた途端。

 地面から天に向けて渦巻きながら舞い昇る、六芒星と言う光の檻。何が起こるのかと見上げれば……

 水葉先輩。マジック達が撤退しなかったら本気でコレを使う気立ったんですか?と聞きたくなる程。

 魔法や奇跡にしても余りに異質かつ残虐。確かにマジック、ディーテ、ジャッジ相手に効果抜群だわ。


モーニングスター(明けの明星)!!」


「いやいや……モーニングスターってお前。こんなモン、全面剣山の鉄球じゃねぇか!!」


 鎖に付いた鉄球の名を冠した魔法がまさか、物理と刺突特化の処刑魔法とは誰が想像出来ようか。

 二重魔法による六芒星の檻。確か六芒星は地域別で意味が異なるが、真の知恵を授けるや。

 賢者の石の象徴。自然界の秩序に適した形で最も安定した力を発揮する……と先輩から教わったな。

 周囲は二重の檻、頭上から巨大な鉄球。力の使い過ぎも後々が問題だ。さてはて、どう突破するか。

 受け止め──串刺し確定故却下。檻を破る?その間に潰される。いや……丁度良いモノがあるな。


「成る程!確かにソレがあったな。そんじゃあ……使わせて貰うぜ?『解放』!!」


「マジックの放った稲妻の矢を?!」


「へぇ~、その程度の知恵はあるのね。残念だわ。ソレ程度じゃあ、一瞬しか止まらないもの」


 左腕を見上げる頭上に突き出し、ゼロの言葉を引き金に装填した魔法を打ち出す。

 咄嗟の判断に驚くブレイブに反して、マジックは冷静沈着。それどころか、冷たい事実を言い放つ。

 確かに稲妻の矢は鉄球に直撃するも。少し止めた程度で砕け散り、落ちてくる結果は変わらない。

 いや──これで構わない。先輩やナイア姉達から教わった技術を活かすは今!


「そうでしたね。装填とは太陰太極図(たいいんたいきょくず)や心の持ち方そのもの。ならば」


「マジックの使う魔法は陰の気。その二重六芒星と同格な陽の気を持てば、不可能も超えられる!」


 マジックが此方を視る中。私は左手で左側の檻を鷲掴み──腕に装填し、そのまま左腕で頭を守る。

 同時に規模を亀の甲羅(半円形)型に絞った上、やや斜め下に構え受け流しつつ、右手で針を掴み装填。

 装填──即ち、受け入れると言う行為。指摘や指導、過ちを受け入れ次に活かす。成功や失敗、限界も。

 そうして漸く限界と言う壁を超え、新たな世界へ飛び立つ自身に成れる。それが水葉先輩の教え。


「コレガ!」


「俺達の──いや」


「私達が歩み、学び、受け入れた人生と言う名の結晶!!」


 一歩、二人の居る三十メートル先まで右足で跳び。二歩、左足で間に踏み込つつ身を捻る。

 左足を軸に加速を右回転へ流し、右拳で正面から見て左側に居るブレイブの腹を鋭く突き。

 右側に居るマジックの胸元へ魔法を装填し、刺突属性を得た右肘を打ち込み。

 双方を各々の後方へと吹っ飛ばす。背中から倒れたのを確認後、両腕の装填を解除し手甲を再度召喚。

 龍の口から物理法則を無視した砲身を展開。二人に向けて銃口を向け次の行動を待つ。


「やれやれ……私のタイム・ストップやモーニングスターまで破られちゃあ、もう降参しかないわね」


「同じく。彼女よりも弱い俺が、物理攻撃を封じられては文字通り手も足も出せん」


 待ったのだが……各々手を頭の上に挙げ、降参の意思表示と共に、理由まで述べられた。

 ブレイブは右手で腹部を押さえ、対するマジックは受けたダメージや出血、傷口さえも回復中。

 本気かどうかも怪しい。もし仮に虚を突く作戦であれば、時間経過が一番厄介な上、手痛い行動。

 信じるか否か。本気か嘘か。それを確かめ、かつ長年の謎を一つ解き明かす為思い付いたのは……


「マジック。目隠しの仮面を自ら取れ。早急にだ」


「……えぇ、勿論構わないわ。だって、あの時の『約束』だものね」


 そう、彼女の素顔を知る事。されど近付いたら奇襲ってのは避けたい為、自ら仮面を取らせる。

 此方の指示に何やら納得した様子で、意味深に『約束』だから──と言う。約束とは、何だ?

 彼女は自らを偽る仮面を躊躇う事無く右手で取り、真っ直ぐ此方に視線を向けた……んだが。

 ……ちょっと待てよ。なんでさ?!なんで、選りにも選ってアナタが──融合四天王・マジックなんだよ!!

 心の中で泣き叫び戸惑う私に、彼女は近付き「Every time, I'll be here right beside you」と言った。



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