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ワールドロード  作者: オメガ
七章・ferita che non si chiude
332/384

白兎 -keep it real-

 『前回のあらすじ』

 遂に最後の試練となる、崩壊した現代へ到着したエックス。しかし、ゼロ達以外の仲間達が見当たらない。

 約束を果たさんとばかりに現れ、襲い掛かるシナナメ。ルシファーと交代し、決着の約束を果たそうとするも。

 マキナと水葉の協力で戦闘を回避。大型スーパーへ逃げ込み、桔梗達一部の仲間と合流に成功。

 屋上に一人で居るとゆかりが現れ、自身が白兎だと正体を明かし双方は変身。嵐の前触れとなる握手を交わす。



 女に手を上げる男は最低だ!と吠える馬鹿丸出しな感情論の阿呆は無数にいる。が、条件による。

 お互いに空いてる左手で握り拳を作り、右頬へ強烈な一撃を叩き込み──火花と共に爆発音が鳴り響く。

 その衝撃・打撃力は想像以上に大きく、双方大きく仰け反る。が……そこは意地と意地のぶつかり合い。

 衝撃を受けても離れまいと互いに力強く踏ん張り、繋いだ手に力を込めて引っ張り合い急接近。

 直後、全く同じタイミングで頭突きを繰り出し──激突。一瞬意識を失い、手を離し三歩後退。


「いっ……今のは、効いたぁ……」


「石頭とは知ってた……けど。これは、予想外過ぎっ!?」


 それはゆかりも同じらしく。空いた右手で頭を押さえ、眩暈が治まるのを待っている。

 これは攻め込むチャンス。駆け出そうと一歩踏み出した途端眩暈に襲われ、その場に踏み止まり硬直状態。

 三秒。平和な時は短く、戦時中は長い硬直時間を終えた刹那──二人揃って屋上の出入り口を向く。

 足音が複数。それも駆け足で階段を登ってくる。桔梗達が先程の戦闘音を聞き付けて来たのだろう。


「──っ!」


 再びお互いの顔を見合って頷き、転落防止用の網を跳び越え約三十メートル先にある地面へ着地。

 仲間達の介入とゆかりの正体バレを考え、大型スーパーから離れる様に狭い裏路地へと駆け込む。

 自ら墓穴を掘り、危険な行為を犯しているのも承知済み。それでも、二人との決着は一人だけでつけたい。


『バイオレンス──チェーンソーハンド』


「何ッ?!」


 前を向いて壁伝いに跳び続ける最中。背後から聞こえる男性寄りの電子音声が、恐ろしい台詞を吐く。

 彼女が使用するカードケース型バックルの電子音声は低音ボイスで、ネットリとへばりつく様な感じ。

 振り向いた矢先、ゆかりが振り上げた右手は機械のアームパーツが付いている……までは別に良い。

 機械の指全てがチェーンソーで、そんなモノを此方に向けて振り下ろす寸前。直感も直撃は死と訴える。


「これで!」


(ヤバいヤバいヤバい!!流石にこれは頭おかしい装備だし、どう見てもおかしな状況だぜ?!)


(フム……ナイトメアゼノヲ相手ニスルノデアレバ、確カニコレ位ハ要ルダロウ)


(これは仮に防いでも、そのまま地面に叩き付けられて死ぬまでミンチよ?)


 敢えて大型武装を使えない様に……と細い裏路地を選んだが、そんなの関係無いとばかりに使用。

 すると左右のビル郡は五指のチェーンソーを避けるが如く広がり、逆に此方は細く狭く変化する中。

 振り下ろされる。霊華曰く防御は駄目、移動速度がほぼ同じ事から恐らく距離を空けての回避も無理。

 ならば迎撃?ゆかりとの距離は約二メートル……技が届く前に殺られる。明確な死を前に思考が加速中。


「ヴァリアブル・エアダァァッシュ!!」


「え──っ!?」


 死に物狂いで思い付いた、数ある起死回生の一手。それが──ヴァリアブル・エアダッシュ。

 初期も初期。シオリと向かった遺跡で貰い、使い道に困っていた縦横無尽に空中を駆ける機能。

 前方の進路は寄り合ったビルに塞がれ、残る道はゆかりへの突撃。突然の行動と驚きの余り二秒、止まる。


「ポーン・ブロック、前進」


(来るわよ!)


「最悪の予想八番か。なら虚無・アイン──ッ!?」


 起死回生の一手を遮る様に、微かに消えた声に従い右側のビルが迫り、挟まれる直前。

 両手を左右に広げ、虚無・アインを発動。サンドイッチの具と成るのを避けた後。

 三秒遅れてチェーンソーの動作音と、ビルの外側から此方に向かって一気に掘り進む掘削音が襲い来る。

 挟まれて分かった。ビルと表現したが、それは外見だけで実際は似せて作った長方形の塊。

 四方八方壁で逃げ道がない。音が迫る方角の逆へアインを発動。トンネルを作り、抜けた先は……


「逃がさない。ナイト・ウォール、二枚追加」


(宿主様!もう直ぐ其処まで来てんぞ!!)


「なら……迎撃するまで!」


「追い詰め──!?」


 何処へも逃がさんと、恐らく五十メートルはあろう高い壁が隙間の無いハの字に立ち塞がっており。

 背後から聴こえる音も徐々に大きく、近くなる。出口から力強く右側の壁目掛け跳び出せば。

 右足で壁を踏み、左側へ跳躍。その時点で丁度ゆかりが追い付き、今度は身を捻って左の壁を両足で踏み。

 膝を曲げ、ゆかりへ照準を合わせバネの如く跳躍し繰り出すは……男の子の憧れをリスペクトした技。


「エックス──デルタ」


「しまっ……ルーク・シールド!ルーク・アーム!」


「反転キィィック!」


 右足による跳び蹴りを繰り出せど、突然ゆかりの左腕に白いレンガ模様の盾が現れ、防がれた。

 が……これも予想内。防がれた後、後ろへ跳び空中反転。空中ダッシュで宙を蹴り、加速を加え。

 先程蹴った箇所へ更にもう一発キックを叩き込み、盾を蹴り砕き左腕にも命中。穴の奥へ押し飛ばし着地。


(三角形を描き助走を付け、強烈な跳び蹴り。防がれても反転し、同じ箇所へ……やるじゃない!)


(問題ハ、此方ノ妨害ヲスル存在ノ撃破ダナ)


 空洞の奥へ押し返し距離を空けたが……少しも直撃は与えれていない。盾を砕いた後。

 一瞬だけ見えた、盾と同じ強度の籠手に防がれ、想定通りのダメージすら無かった。

 褒めてくれる霊華にむず痒さを覚えつつも、ルシファーが警戒する通り、そちらも対処が必要。

 とは言え……そちらはゆかりを戦闘不能かギブアップさせないと、現状手が付けられない。


「何ッ!?」


(おいおいおい!!流石にこれは……俺でも対抗するにゃあ、ちょいと時間が足りねぇぞ!?)


 そう思う事すら、読んでいたのだろう。突然空から人間の手が此方目掛けて伸びてくる。

 例えるならばそう。完成されたジオラマに、更なる完成度を加えようと手を伸ばす行為。

 流石に掴まる訳にも行かず、文字通り手の届かない空洞の奥へ駆け込む。その時、足が止まり考える。

 この奥はゆかりを吹き飛ばした先で、チーター顔負けの速度で此方へ戻って来ている。逃げ場がない!


『バイオレンス──タイラント』


「来た……ッ!!」


(おっほ!チェーンソーハンド相手にアインで挑むか!)


 穴の奥から響く音声が聞こえた直後。白く光る眼が赤色に変わり、此方へ恐るべき跳躍力で迫るゆかり。

 五指を前方一点へ絞るチェーンソーハンドが視界に飛び込む中、左手を向け虚無・アインを盾として発動。

 機械の右手は押し込む程に消滅し、刃としての部分を無くして尚迫る。触れれば消滅すると言うのに……

 視ると彼女の眼に恐れは無く、狂化状態。手が触れる前にアインを解除。続けて右腕へ左手を伸ばす。


「スカーレット・シュート!」


「──ッ!?」


(コレハ……牽制技ダッタハンドショットヲ、格闘ニ組ミ合ワセテ進化サセタノカ)


 根源の力……マナを両手に纏い緋色に光る状態で右腕を掴み、引っ張り左膝を腹部へ叩き込み怯ませ。

 即座に両腕を引き絞り、ゆかりの胸部へ両手を突き出し緋色光弾を二発纏めて放ち、五歩後退させる。

 一々隙を見付けて技の動作をしてたら、必ずその弱点を突かれる。ならばどうすれば良い?

 解──接近戦の格闘に混ぜれば良い。逆に隙と見せ、誘き寄せて撃ち込むのも出来る。

 一連の動作を一回見ただけで見抜くとは……つくづくルシファーが敵でなくて良かったと思うよ。


「ラビット・キック!」


「な──!?」


 確かに怯ませ、後退させた。その最後の一歩で力強く踏ん張り、兎の跳躍力で此方へ跳ぶ。

 追い打ちが出来ると想定していた為、予想外の行動過ぎて胸部にドロップキックの直撃を受け。

 穴の外へと追い出された。それを見計らってか、空から此方目掛けて巨大な右手が降り注ぎ……

 自分を捉えたまま地面へ押し付け──工事中の雑音さえ霞む轟音、風圧と言う津波が街を襲う。


「マキナちゃん……やっぱり私、本気で体を動かせるのが好きみたい」


keep(キープ) it(イット) real(リアル)。自分自身であれ、自分に対して正直であれ……だよ」


「……そうだね。大人になるにつれ、私達は仮面を被って自分の心を押し殺したりしちゃうもんね」


「私もデトラから言われたんだけどね……って、居ない?!」


 マキナからの直撃を貰い、仰向け状態で押し返すもアスファルトへ叩き付けられる寸前。

 両肘のエボル・ブレードに備わっている高周波を起動し、追加で刀身を保護するバリアも展開。

 押し込まれる中、コンクリやその下の固い地面すら砂状に分解してくれたお陰で被害は最小限。

 とまあ……砂と化した地中で助かった理由を再確認しつつ、此処からどう切り返すか考えてる訳だが。


(先ズハ脱出ダ。今ノ俺達ニハ地中ヲ掘リ進ム術ガマダ無イ)


(まだって言う当たり、今後獲得しそうなのが怖いわよねぇ~)


(早く動こうぜ?酸素残量もそうだが、今の俺達は隠れてても袋の鼠状態だしよ)


 ルシファーが言う通り、今回はマキナの攻撃を利用して地中に無理矢理潜った為、先ずは脱出が先決。

 手で土を掘るにしても、時間が掛かる上に酸素残量が少ない。現状は言わば、試験管の底に居る状態。

 ゼロの危惧、霊華の今後獲得する可能性も含め、両手を足下の土に着けたまま、衝撃波を放つ。

 すると行き場を失くした衝撃波は自分と砂を上へ噴き上げ、大量の砂に紛れて脱出成功。


「やっぱり、そう来るって分かってた」


「ゆかり!?」


 と思いきや、ゆかりがすれ違い様にそう呟き背後のビルを模造した塊へ飛び込んで行く。

 それを視た瞬間、次の一手が読めた。だからこそ、此方もヴァリアブル・エアダッシュを使い。

 ゆかりとは反対方向に在る模造ビルの側面へ跳び、両足を着け──ずり落ちる前に脚へマナを込める。


「タイラント・ラビットォ──」


「エックス──」


「「キィィック!!」」


 此方へ滑り落ちる様に飛び出すゆかり、迎撃で跳び上がる自分。体感的に接触するまで……約五秒。

 お互い足が前へなる様姿勢を変え、必殺技の名前を叫び、タイミングを見計らい。

 右足を突き出した跳び蹴りを繰り出す。此方は緋色に輝くマナを纏い、ゆかりは青白い霊力を纏った蹴り。

 双方の右足が激突。ぶつかり合う靴裏から逃げ場を失ったエネルギーが溢れ、周囲へ飛び散る。

 模造ビルを貫いて倒壊させ、地面や雲を次々穿つ。逃げ切れなかった余剰分が靴裏で膨張し──爆発を起こす。



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